攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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かつて偉大だった者から、これから偉大になる者へ

『それでは! お喚びくださりありがとうございました山形様! また何かありましたらいつでもお呼びくださいませ!』

「ああ、ありがとうティートレ」

『どういたしまして! んんんんゲーム・セェェェット!!』

「独特なノリの方ですね……あっ、消えた」

 

 なんか叫んで消えていく、爽やかというか若干暑苦しいタイプのスポーツマンだった精霊知能ティートレくん。

 サムズアップと笑顔はすごく良いんだけども、あまりの個性的なノリに思わずシャルロットさんが反応してしまうほどなのはある意味すごいよね。

 

 どうあれきっちりと仕事してくれたことには当然感謝だし、彼となんかキャッチボールしてるらしいヌツェンもいつもお疲れ様って感じなのは間違いないけども。

 なんだか余韻も残って微妙に静かな空気になるなか、アレクサンドラが呆れと皮肉を前面に押し出して、俺に話しかけてきた。

 

「つくづくなんでもありですね、シャイニング山形。せめてあなたがいなければ、私の夢もきっと叶っていたのだと確信できますよ、ハッキリとね」

「……そうはいかないと思うけど。俺がいなくとも、必ずあなたの野望は途中で挫かれていたさ。あなたの夢は、つまるところそういう類のものでしかなかったんだから」

「相変わらずしたり顔で知ったような口を利く……まあ良いでしょう、もはや言葉を交わすにも値しませんでしょうし、お互いに。取り調べはこのへんで良いですかね、もう疲れたんですが」

「あ、ああ……いや、最後に委員会についての情報を聞きたい。他の構成員や組織図、何より首魁について知るところを話してもらおう」

 

 この女からしてみれば、俺というイレギュラーさえいなければ万事うまく行ったとの見方をしているみたいだがそんなこと、あるわけがない。

 俺がいなくとも探査者達はきっと動くし、彼女の野望も頓挫させていたことだろう。さしづめ俺はその期間を少しばかり、短くしてみせたに過ぎない。

 

 何より、不老不死を望みすべてを踏み躙り、生きたまま神になろうとする試みなんてのはやはり無茶だったんだよ。

 もう、そのへん細かく説明したところで仕方ないけどね。アレクサンドラの夢は潰えたし、俺の言葉にも耳を傾ける気はないようだし。

 疲れ切った様子で取り調べの終わりをおまわりさんに尋ねれば、向かいの人が慌てたように最後の質問をした。

 

 ざっくり、委員会についてだ。仮にもこの女もメンバーだったんなら、何かしら知っていてもおかしくはないという思惑からの質問だね。

 ──しかしアレクサンドラは薄く笑い、首を横に振った。力ない、それでいてこちらを憐れみ蔑むような嘲笑だった。

 

「知りませんよ、そんなもの。火野源一でも知らないものを、私が知るわけないじゃないですか馬鹿馬鹿しい」

「……何? だがお前は委員会のメンバーで、火野源一以上に組織の深い部分に関わっていたのではないのか」

「元より母が収まっていた席にスライドしただけの、実質外様ですよ私は。しかもその母のポジションとてしょせんは末端の工作員、だから私も単身でダンジョン聖教に潜り込んで破壊工作めいたことに精を出すよう指示を受けていたんですから。もっと核心に食い込めるような立場だったら、適当に誰かを使って潜らせますよ」

「幹部だったら現場で数十年と活動するはずもない、か。それはたしかに、理屈に沿うが……」

 

 あっけらかんとした否定。しかも相応に言われてみればそりゃそうだと思えるような、理屈の通った反論だ。

 もしもアレクサンドラが委員会の内情に詳しいレベルでの立ち位置だったとしたなら、そりゃたしかにそんなのを単身でダンジョン聖教に送り込み、あまつさえ数十年とかけて工作活動をさせるというのは考えにくい。

 

 火野老人も大概な下っ端というか、こき使われる立場だったみたいだけれど。娘のアレクサンドラも考えてみれば、一つの任務に相当長期間の従事を命じられる程度の位置だったと言えるんだよな。

 少なくとも委員会とのつながりを完全に断っていたという聖女時代の20年間ほどがある時点で、そういう振る舞いをしても問題ないと委員会側も理解しているのだろう。

 つまりは重要な情報は一切握っていない、とかね。

 

 うーむ。嘘を吐いている可能性もあるけど、しかし説得力もある話だ。

 自ら、組織内での扱いの低さを暴露した形になるアレクサンドラは肩をすくめ、最後に教え諭すような口調で続けるのだった。

 

「この後、アドラメレクに話を聞くのでしょう? 彼こそ本当の意味で委員会の一員ですから、聞くのであれば彼から聞くのがよろしい。アレもどこまで核心を把握してるのかはともかく、私や火野源一よりかは知っているでしょうし」

「アレクサンドラ、あなたは……」

「先生、神谷先生。名残惜しいですがそろそろこのへんで失礼できたらと思います。少し疲れました……また、そのうちどこかでお会いしましょう? シャイニング山形とは二度と会いたくありませんけど、先生は寄り添ってくださるんでしょう?」

「……あなたの更生と贖罪には、です。無条件で味方してもらえる立場でないと理解なさい。しかし、今はたしかに疲労しているようですから休みなさい」

 

 今のアレクサンドラからの取り調べを終えた後、控えている最後の幹部。サークルに与した委員会の悪魔、アドラメレク。

 やはりかの大悪魔にこそ、委員会を解明する鍵はあるようだ。組織の真相に迫るためには、次こそが本番ってわけだな。

 

 本当に疲れたのか、アレクサンドラがぐったりと顔を青白くさせている。そろそろ体力の限界みたいだな。

 今や自由のきかない身体だ、無理はさせられない。おまわりさんも分かっており、神谷さんの言葉とともに撤収の準備を始める。車椅子を引いて、アレクサンドラを退室させるのだ。

 

「……最後に一つだけ、シャルロット。精々、手にした称号に恥じぬよう努めなさい。これより先に偉大となるかもしれない、七代目」

「言われるまでもありません、アレクサンドラ。かつては偉大だった、六代目」

 

 部屋を出る間際に、振り向くことなく声だけでシャルロットさんに一言、伝える。アレクサンドラとしてでなく六代目聖女アンドヴァリとしての、最期の言葉だろう。

 それを短く切って捨てて、七代目聖女シャルロットさんはじっと、去りゆく背中をただ見つめていた。




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