攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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コマンドプロンプトからは逃げられない!

 いざとなったら本体に戻って安全地帯に逃げればいいや──そんな安易な考えが透けて見えるアドラメレクの、飄々とした態度がそこで初めて翳った。

 本体を織田に差し押さえてもらって、かつここにいるアバター体、新目玲玖。彼に"俺達サイド"、すなわちシステム領域なり現世体制側のほうでこき使ってやろうという俺からの提案を受けて、そこでこれまでにない表情の変化を見せたのだ。

 

「────」

「概念領域におけるこいつの行動は、実際のところ法や秩序で罰せられる類のものじゃない。だけど、ここまでのことを引き起こした基点を作っておいてノールールだから問題なし、で済ませることはおかしな前例を作ってしまうことになる。それはよろしくない」

「模倣犯が出てくるかもしれんからな……概念領域で準備を整えてしまえば、それをもって現世に対して干渉しても大まかな部分ではリスクがないなどと、馬鹿なことを考える輩が出てきてもおかしくはないか」

「ああ、だから織田に動いてもらう。彼もまた概念存在で、俺達と彼らとのパイプ役として活動してくれているからこそ……こちら側からの要請に応え、概念領域の承認を受けた上でアドラメレクを向こう側においても裁くことができるはずだ。そもそも、彼らの側からも白眼視されているのがこいつだからな。早々反対意見なども出ないだろうさ」

 

 唖然とするアドラメレクが沈黙する。何を言っているのかというよりは、即座にこちらの意図を察して絶句している様子だ。

 やっぱり頭の回転は良いんだよな、この悪魔。だからこそ自身のやらかしの大半が概念領域で収まる程度に調節していて、現世でのことはほぼ火野や藤近、アレクサンドラに投げていたんだろう。

 こうなった時、自身への被害を最小限に留めるために。

 

 だがそれを、はいそうですか頭いいですねまる、で終わらせるつもりは俺には毛頭ないんだよ。

 サークルだけならいざ知らず、倶楽部や過激派や悪魔や妖怪、彼岸此岸問わず今回の件のほぼすべての土壌を作ったのは紛れもなくこいつなんだから。

 

 それを、概念領域でやったことだから現世は無関係だなんて理屈で済ますわけにはいかない。これを認めたらヴァールの言うように、後々にも大きな禍根を残すことになるからだ。

 ゆえに織田に頼むのだ。今やシステム領域と概念領域の間をつなぐ交渉役、パイプ役であるかの大神に。

 

 そうした立場の彼であるならばこちらの要望を織り込んだ上で概念存在達にも交渉し、アドラメレクを誰からの文句もなく捕縛することができるだろう。

 さすがにシステム領域が直接、向こう側に手を出すのも憚られるしね。織田の役目はこういう時を想定してのものでもあるわけだし。

 

 現世の罪さえある程度──それもこいつの自己判断の範疇で──濯げば、あとは概念領域の本体に戻って悠々自適に高みの見物を決め込むつもりだったんだろう。

 目論見が外れそうなのを察したアドラメレクが、目を細めてこちらをじっと見てきている。

 

 こうなるとこいつが次、何をやるのかなんて演算するまでもなく分かるな。

 口を開く気配を察知して、俺は即座にそれを潰した。

 

「いやーちょっとオジサン用事を思い出したから、本体に戻」

「《アドラメレクは本体に戻るための行動が一切取れないから、新目玲玖は現世に留まり続ける》」

「るッ────ぐっ!? これはっ因果操作!?」

「逃がすと思うか、逃げられると思うか? そんなわけがないだろう。ここまであからさまにお前にプランを聞かせたのは、すでに逃げ道などどこにもないからだよ、アドラメレク」

 

 因果操作。対象は当然アドラメレク、内容ももちろん、本体に戻るためのあらゆる行動を封じ込めるもの。

 つまり今、こいつはまさに自らの舌を噛み切ろうとしていたのだ。アバター体の現世活動を終了させ、宿る魂だけを即座に本体に戻し逃げようとしていた。

 

 そこまで分かっていて、因果律を操作できる俺が何もしないわけがない。そもそも俺が相対した時点でこいつはもう、生殺与奪の一切を握られているんだ。

 自身の行動を封印されたことを察したアドラメレクが、今度こそ本性を剥き出しにした。憤怒の表情で鋭くこちらを睨みつけ、しかし手段を潰され為す術をなくしたことを悟って弱々しく呻いたのだ。

 

「ぐ、うううっ!? 馬鹿な、こ、ここまで容易く、これほどまでに強力な因果操作を……!! 創造神でもここまでやれるか分からんぞ、君は!?」

「ついに素を出したなァ、オッサン──格の違いってやつだよ。公平サンがいる時代の現世にちょっかい出したのが運の尽きだったなァ、オイ」

「現世で罪を償うまで、あなたは新目玲玖として生き続けるのです。そして悪魔アドラメレクとしては、我々のために力を尽くすのです──ですよね先輩方、山形様!」

「こ、こんなことが……! まさかそのような、よもや本当に、君は、君達の正体は……っ!?」

 

 シャーリヒッタとミュトスの言葉に、聡明な悪魔ゆえとうとう勘付いたか。少なくとも俺達が、概念存在をも越える領域にいるモノだということに。

 だがもう遅い。アドラメレク、お前の身柄は完全に確保した。現世のみならず概念領域においても、お前はもう委員会側でもなければ自由の身でもない。

 

 

 ──我々システム領域側の手の内だ。

 

 




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