攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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アドラメレクと藤近功

 もはや委員会についてアドラメレクに尋ねるべきことは、俺のほうからは特に何も無い。

 ヴァールにしても詳しい話は後日、織田が本体の身柄を確保した上で腰を据えて行う方針に切り替えたようなので、実質的にこのモノへの取り調べはこのあたりで終わりを迎えることとなった。

 

 いろいろ、新事実が判明した時間だったな……他の精霊知能達も同様に思っているのか、若干疲れが滲んだ感じで息を吐いている。

 委員会という、これまで謎に包まれていた組織の実態と現状。それらがある程度でも判明して、間違いなく物事が大きく前進したんだものな。精神的に疲れても無理はないか。

 

「アドラメレク。お前については今後も現世での法の裁きを受け、またその罰を執行されている間に時間を取っていろいろと聞かせてもらう。誓いも立てた以上、これは確定事項だ」

「分かってるねえ。いやはや、こちらとしても君らの正体に大きく切り込めたわけで、そう考えるとこの半世紀ほどのあれこれは決して無駄じゃなかったと言えるねえ。まあ、巻き込む形になった人間達には悪い気もするけど、ねえ」

 

 やはり飄々とした笑みでヴァールの指示に従うアドラメレク。

 もはや誓いも立てて織田に次ぐパイプ役への道筋も付きつつある今、こいつはこいつなりに努めて誠実に贖いを果たしてくれるだろう。

 

 と、そこでミュトスが挙手して質問を投げかけた。主に俺とヴァールが主体となっていた質疑応答だったけど、ここに来て彼女も気になることがあったらしい。

 いつもと変わらない態度で、けれど真面目な空気をまとって……彼女はそして、尋ねた。

 

「あのー、アドラメレク? 今、最後に巻き込んだ人間達って言いましたけど……アレクサンドラ・ハイネンや藤近功、あと火野源一とかには何かしら思うところあったりします?」

「うん? ……まあ、そりゃ多少はあるねえ。特に直接契約していた功くんや、個人的に結構応援していたアレクサンドラくんなんかには、あまり役に立てなかったなあって申しわけなさがあるねえ」

「申しわけなさ……ですか」

 

 この悪魔が今回、力を貸していたサークル幹事長の藤近やダンジョン聖教過激派のアレクサンドラ。前者には直接契約を結んでいたし、後者にウーロゴスを融通したのも実質、目の前のこいつだ。

 であるからには、多少なりとも共謀し共闘した者達への思い入れとかあるんじゃないか? そういうミュトスの疑問なわけだね。

 

 それに対してアドラメレクは、苦笑いを浮かべつつも割合、本気で悪びれた様子で頭を掻いた。

 こいつなりに、自身の役目を成せなかった感覚があるのだろう。今や言ってももう遅いけど、と告げてからさらに、続ける。

 

「そもそもなぜサークルを見出したのかってのが、ねえ。最初は偶然だったんだよ、利用できそうなグループを適当にいくらか見繕って、しばらく観察してねえ。そのうちの一つが彼らであり功くんだったんだけど、なんだかオジサン、彼を応援したくなっちゃってねえ」

「応援……?」

「立派な大器を持ちながらそれを腐らせて、イエスマンと甘えた子供、騒ぎたがりばかりを集めて。それが原因ですべてから弾き出されてもなお前向きに生きようとしていた……彼自身も尖った思想を持っていたけどね、そんな程度だけでは彼はあそこまで追い詰められることはなかったんだねえ、社会的にねえ」

「…………それは」

 

 アドラメレクから見た藤近の姿。こいつ自身の色眼鏡がかかっているのを承知するにしても、それは海方や瀬川を始めとする取り巻きによって堕落させられた、本来ならば大成していたかもしれない器の持ち主というものだ。

 先ほどの幹部三人、それこそ藤近本人さえも互いに互いを認め合い、尊重し合ってはいたんだけど。外部協力者として客観的に見たアドラメレクには、周囲すべてが藤近を腐らせていたように思えていたんだな。

 

 彼自身も思想的にはかなり尖鋭的なものを持っていた。だからこそカレチャからもパージされたんだと本人は言っていたけど、そこにも海方のような過激な信者の存在が影響してなかったわけでもないだろう。ずっと一緒だったみたいだしね。

 そこから農園を始めた時も排斥されたと言っていた──しかし、その原因は本当に周囲の無理解や悪意によるものだったのか?

 

 真実を知る機会はたぶん、ないのだろうけど。

 アドラメレクはそれを、サークル自身の性質による自業自得だとしているようだった。

 

「カレチャから排斥されたのも農園が孤立させられたのも、彼自身ではなく彼の周りの連中の質が悪すぎたんだねえ。まあ、功くん自身はそんなこと思ってもいないんだけどねえ」

「サークル自身に、周囲から孤立するだけの要因があったということか」

「ところ構わず身内ノリでどんちゃん騒ぎしてたらねえ? とはいえ功くんはそれでも、そういう馬鹿な連中を率いて新天地に理想を拓こうともがいていたんだよ──ああいう若者にオジサン弱くてさ。どんな形であれ少しくらいはチャンスがあっても良いじゃないのって、そう思って協力したんだねえ」

 

 目を細めて、懐かしむように語るアドラメレク。

 こいつは……こいつもまた、藤近のカリスマに魅了されたのか。どうにもならない連中を抱えて世間を渡る、あの男の力になりたいと思わされた一人でもあったんだな。




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