攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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関口も地味に成長してるよなあーってお話

 つつがなく登校を果たし、1年13組の教室に入るとすでに結構なクラスメイトがそこにいて、演劇のための最終準備をあれやこれやと整えているのが見えた。

 いつも通りの時間なのに、やはりみんな気合が入っているということなんだろう。

 

 もちろん演劇の主役、勇者関口役の関口くんとその仲間である魔法使い佐山役の梨沙さん、格闘家中野役の中野くんもすでにリハーサル中だ。

 衣装もきっちりとファンタジー寄りの鎧姿だったりローブ姿だ。ローブはともかく鎧はアレ、探査者のなかでもタンク役が着込んだりするやつだよアレ。日常だとさすがにガシャガシャ音を立てすぎるから、普段使いの人でもダンジョンに潜る直前までは装着しないやつ。本物じゃーん。

 

 別にタンクでないはずの関口くんがなんでそんなものを? と首を傾げていると、当の本人とあと梨沙さんがこちらに気付いて手を挙げて挨拶してきた。

 さしあたっては俺もだね。荷物を机に置きつつ二人に挨拶する。

 

「おはよう二人とも。さすがメインの三人さんは準備が早いね、すごいや」

「おはよう、まあ一応な。仮にも主役だ、恥を晒すわけにもいかないし」

「公平くん、おはよ! せっかくここまで練習してきたからね、最後の追い込みまできっちりして、本番を完璧にしたいってのはあるかも! えへへ」

 

 クラス以前に学校でも有名な美男美女二人が並ぶと壮観だ……しかも揃ってファンタジーコスプレしてたらなおのこと。

 にしても真面目だよね、なんだかんだで両方とも今日に至るまでずーっと真剣に演劇に取り組んでいたし。裏方として作業する傍ら、中野くんも含めた三人の頑張りを見てきたから俺としては何やら感慨深い姿だ。

 

 そして今も最後のリハに取り組んでいる。こんなに頑張ってるんだからきっと、演劇も大成功するだろう。もちろん、うまくいかないところがあっても俺も誰も笑うことはないはずだ。

 何か一つのことに取り組む、それそのものにかけがえのない価値が宿るんだからね。彼と彼女の姿が眩しくて、俺は目を細めた。

 

「ところでそのアーマー、本物だよね関口くん? 自前で用意したの?」

「ん? ああいや、これは仲間のだよ。うちのパーティでタンクやってるやつのお古を借りてきた。結構年季入ってるんだぜ。衣装で用意してもらったローブの上に着ても、まあ違和感はないし」

「……ホントだ。よく見ると補修の跡があちらこちらにちらほらと」

「情けない話、俺が不貞腐れて探査業をサボりがちだったこの数年間、それでも見捨てないでいてくれた気の良い連中の一人なんだ」

 

 抱いた疑問に答える関口くんが、淡く笑う。そこには多分な誇らしさと、また同量にも思える恥ずかしさ……あるいは後悔が見える。

 俺とのアレコレがあって、真人類優生思想から立ち直るまでの数年間。関口くんはせっかくの才能やポテンシャルを持て余して最低限度の活動しかしないでいた時期があるのは、これまでのやり取りから俺も知っていることだ。

 

 あるいはサボり、怠慢とさえ言えた時期かもしれない。そんな期間にあってなお、彼の仲間は彼とのパーティを解散したりはしなかったみたいだ。

 関口くんを仲間として、見限らずに見守っていたんだね。そのことへの深い敬意と感謝の宿る手つきで、彼は借り受けた古びたアーマーをなぞり続けた。

 

「お前のお陰で立ち直れた今だから余計に分かる……仲間のありがたみってやつがさ。俺は、こんなことも分からずに一人で勝手なことをしてたんだなーって最近になって恥ずかしくなってるよ」

「関口くん……」

「今日と明日、文化祭のゲストで来るハミバのメンバー・海北アキラもそんな大切な仲間の一人だ。そしてこないだの件でお前にも大きな恩を感じている。たぶんどこかのタイミングで改めて礼を言いに来ると思うから、その時は悪いけど頼みたい、少しばかり時間をもらえないか? アイツだけじゃなくてハミバのみんな、相当感謝してるって話だからさ」

 

 自省し、過去を顧み、そして未来を前向きに捉える関口くんがひどく大人びて見える。

 春先から夏にかけていろいろあったけど、彼もまた、大きく成長した人の一人なんだろう。その姿に俺は感銘を覚えるよ。人は何度でもやり直せるんだって、彼こそが体現してくれているんだ。

 

 ハミバの人達の感謝についても、そもそも俺は俺の仕事を果たしただけだから気にしないでもらえるのが一番なんだけど……他ならぬ関口くんがそこまで言うなら、むしろ断るのも失礼な話なんだろう。

 一つうなずき、微笑み答える。今や友人の一人である彼の、誇るべきパーティメンバーとその仲間達の御厚意に報いるために。

 

「俺は、俺にできる当たり前のことをしただけだよ。だけどそのことでお礼をいただけるって言うなら、それはありがたく頂戴する。それがハミバの人達にとっても一つ、区切りになるだろうからね」

「ふっ……お前、本当に同い年かよ? 俺なんかよりずっと大人びて見えちまうぜ、まったく。実力面ではともかく、精神面ではあんまり高みにいるなよな? 追いつくのも一苦労だぜ、ライバル」

「いやいや、そんなそんなえへへへへ。せ、関口くんもすごく大人だと思うよ。ね、梨沙さん」

「んふふ、そうだねえ……春先に比べるとホント、いい顔になったと思うよ関口くん」

 

 からかうような口調で、しかして眼差しは真摯に誠実に。外見だけでなく内面もイケメンと言うにふさわしい関口くんの姿は、以前から彼には辛辣だった梨沙さんをして評価に値するものみたい。

 言外に春先はちょっとアレだったね? と含む物言いもあれど、それさえ関口くんは申しわけなさげに苦笑いして頭を掻く。

 その姿に俺と梨沙さんは、顔を見合わせて柔らかく笑い合うのだった。




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