攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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校長よ、なぜにあなたの話はそんなに長いのか!

 そんなこんなで今日ばかりは整列とか抜きに、好き放題体育館にて屯する東クォーツ高校の全校生徒のみなさん。

 なんなら結構な数が座り込んでリラックスしたりしてるし、普段から生徒に対して気さく気味な対応をしている先生方も同様にしている。

 

 年に一度のハレの日ってなもんで、この時ばかりはある種の無礼講なのかもしれないね。

 そんな空間の真ん中を陣取る俺達も座り込んでしばらく待てば、うちの学校の生徒会の人だろう女子生徒がマイクを片手に壇上へ上がるのが見えた。

 始まるかー。

 

『えー、えー、マイクテスト。あー、あー……それではただいまより、東クォーツ高校文化祭の開会式を行います』

「いよいよだね、公平くん」

「だねえ」

 

 館内に声が響けば、それまで各々雑談していたゆえに騒然としていた空間がピタリと静まって収まる。

 よその学校がどうかは分からないけどこの学校の場合、さっさと済ませたいって人が多いのか割合みんな大人しく静粛にするきらいがあるんだよね。

 

 そんななか、俺と梨沙さんは小声で軽くやり取りする。二人ならんで、床に座っている構図だ。関口くんは当然たくさんの男女に囲まれているし梨沙さんも本来ならそうなんじゃないの? って感じなんだけど、俺のぼっち化を案じてそうしてくれているみたい。

 やはり天使か……!

 

『それではまず、国歌斉唱と校歌斉唱から行います。みなさま、ご起立ください』

 

 アナウンスに沿って俺達みんな立ち上がる。まあこの手の会はまず国歌と校歌の斉唱から始まるよね。のんびり立ち上がってそのまま、メロディが流れてくるので斉唱する。

 俺ちゃん音痴だもんで、こういう時に張り切って歌うと周囲の音程を乱すので小声というか囁くくらいの声量だ。

 

 生徒のなかにはクラスのお調子者なんかがわざと外して歌ったりするのもいたりするけど、すごいなあ僕にはとてもできそうにないや、ウケどころか顰蹙買うだけだもの陰キャがやっても。

 そんなわけでサクッとこのへん終わらせたら、また着席を促されたので腰を下ろす。続いては校長先生による開会宣言と、生徒会長による注意事項のアナウンスだ。

 

『えー、季節も11月に入り、厳しかった夏ももはや遠い日のことのように思えている今日このごろ──』

「長いんだよなーいつも、校長先生のお話って」

「うん……涼しいだけマシだけどね。一学期の終業式なんてすごかったよね」

 

 東クォーツ高校の校長先生、恰幅のいいスーツ姿の中年男性が、据え置きマイクの置かれた演台に立って話し始めたのを受けて、俺と梨沙さんのみならず館内のあちこちから何やら諦めの吐息が漏れた。

 入りの挨拶からもうお分かりかもだけど、長いんだよこの人の演説。マジで長すぎて、時には教頭先生が止めに入ることさえあるほどだ。

 

 具体的には今年の夏、一学期の終業式とかね。

 あの頃、邪悪なる思念を倒しきった直後に訪れた長期休みってこともあり、明らかにテンション高く浮かれていた俺ちゃんを一気に疲弊させてくれたのは終業式での校長先生の演説だった。

 何しろ炎天下の体育館にて、今みたいに座って聞いているだけでしんどい長話だもの。体力的に問題なくとも精神的に大変疲れてしまったわけ。

 

 なんなら二学期の始業式も大概長くて白目剥きそうだったので、アレをまた繰り返されるのか……とうんざりするのもいたし方ないことだろう。

 まあ、内容はありがちだけど羽目を外しすぎないようにとか、外部からの来客に失礼がないようにとか大事なことなので文句を言うつもりもないけどさ。いやでも長さには文句言いたいかもだ、さすがに。

 

『────で、あるからして。秋という季節にあっては、文化を重視し尊重する我が校がそれに殉ずる祭りを行うというのは、これは非常に価値のあることなのだとみなさまには自覚を持っていただきたい。そして、当然ながら学生としての本分をわきまえ、かつ自立した姿勢と克己心を養うべく常に学びの精神を持って……』

「あの、校長先生。そろそろお時間のほうが」

『…………あと30分くらい伸ばせませんか』

「3分でも辛いですね」

『むう』

 

 で、案の定喋り始めて10分くらいアレコレ多岐に話題を広げて文化祭の意義と東クォーツ高校の学生としての振る舞いみたいなものを語られていくわけなんだけど。

 さすがに今回も長すぎると判断されたのか、これまた教頭先生──痩せぎすのスーツ姿、こちらも中年男性だ──が止めに入った。小声でやり取りしてるのがマイクで拾えてしまい、その内容に学生も教師も関係なく絶句する。

 

 止められなければあと30分やるつもりだったのかよ。いい加減にしてくれさすがに無理だよそれは!

 何がむうだ! と言いたくなるほどに渋々感あふれる様子の校長先生。ていうか30分もこれ以上、何を喋るつもりしてるんだこの人? 分からないよ、人前で演説する機会なんてもちろんない俺にはいささか理解しがたい境地である。

 

『えー……それでは、話も名残も尽きませんが、今日のところはこのくらいにしておきたいと思います。最後に繰り返しになりますが、学生として弁え、その本分を果たせるだけの文化祭を過ごすよう心がけてください。以上』

 

 教頭先生の決死の訴えもあり、今までのダラダラした話はなんだったのかと言いたくなるくらい簡潔にシメた校長先生が降壇する。

 それに伴い拍手が響くんだけど、この拍手は校長先生を止めた教頭先生へと向けられたものであるように思えてならないよ、俺には。




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