攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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大事なのはやっぱり"好きこそものの上手なれ"

 さておき、仲間達とは暫し分かれて関口くんや梨沙さん達とともに体育館へ。ここからはいよいよ演劇に向けての最終調整だ、自然と二人の表情も引き締まっている。

 さすがの美男美女、才人二人であっても演劇なんて未経験だったもんだからね。夏休み終わりから約2ヶ月ほど、文化祭で披露するにあたって本当に努力してきたのを俺は、裏方作業しながら見ていたからよく知っている。

 

「いよいよか……長かったようで短かったな、練習時間」

「あー、緊張してきた……大勢の人の前で舞台なんて、役者さんって本当にすごいよねマジで。ちょっぴりでも練習してきたなかでもそう思うもん」

「それな! いやドラマとか見ててもすげーって思うぜ、演劇って底知れない奥深さがあるんだろうなあ……」

 

 もう一人のメインキャスト、中野くんまで含めて三人、ずいぶんと緊張している様子だ。無理もない。

 とはいえ、俺の目からすると三人とも素晴らしい上達ぶりで大した演技派だと思えるほどのものを、練習でコンスタントに見せてくれていたから大丈夫だと思うんだけどね。

 

 そこはそれとしてやっぱりこれから、大勢の観客の前で演技するとなると身構えるのも分かる。

 正直、裏方側の俺からはなんとも言えない雰囲気だ。体育館に入り、舞台裏まで行く。さやかちゃん先生がすでに機材をセッティングしてくれてるのを視認しながらも、俺はせめて少しでもと思い、彼らにエールを送った。

 

「その、三人とも、きっと大丈夫。この日のために積み重ねてきた努力は、必ず報われる」

「公平くん」

「肩の力も入るだろうし、リラックスなんてとてもじゃないけど無理だと思う。それでも……最終的にはなるようにしかならないからさ。大丈夫、なんとかなる。なんて気休めにもならないよね、ごめん」

「……いや、助かるよ山形。そうだよな。どんなに緊張していようが不安だろうが、やるしかないなら野となれ山となれ、だ」

 

 演劇の緊張なんて俺には分からない。だけど、世界の命運を懸けて戦ったことはあるのでその時の経験から思ったことを話す。

 アドミニストレータ計画……春先から3ヶ月ほどに亘って展開された対邪悪なる思念討伐プロジェクトは、まさしくこの世界すべての行く末を決める運命の決戦だった。

 

 何しろ事実上、俺が負けたら世界全部喰われておしまいって状況だったからね。ワールドプロセッサにはサブプランもあったけど、乾坤一擲たるこの計画に比べると遥かに成功率の低いものでしかなかったし。

 そんな戦いのメインに据えられた俺だからこそ、当時の心境を踏まえて言うのだ。背負ったものの重みを苦にしても、それでもやるしかないんだからやるだけだ、と。

 

 それに──そこにあるのは決して、苦しみだけでもなかった。

 絆や友情、そして仲間。重みに比例するような使命感と責任感、そして何より俺自身のなかから生まれ出たもの、"世界を救いたい"という気持ち。

 それがあったからこそ俺は、最後の最期まで至ることができたのだ。翻ってそれに似た心境はきっと、今の三人にもあるんじゃないかなと口を開いてみる。

 

「あの、ええとさ。演技の練習はただ苦しいだけのものじゃなかったと俺は信じてる。そこにはたしかにやり甲斐とか、楽しさとか、面白さも感じていたと見ていて思ったよ」

「それはもちろん! 初めてのことだから、余計に新鮮で楽しかった」

「あ、ああ。まあな、俺もこういうのは興味あったから。中野もだよな?」

「おう! なんならこれが終わった後でも演技の勉強とかしたいくらいだぜ」

「良かった……だったら本当に心配いらない。ただ苦しいだけの行いならともかく、そこにやりたい理由があったのなら、それこそが三人を支える自信になってるよ。分野は違っても、俺も最近そういう経験をしたからそこは保証する。大丈夫、きっとやれる。自信持って!」

 

 好きこそものの上手なれ、とは本当によく言ったもんだ。結局俺達はどこまでいったって現金なもんだから、ただ義務感や使命感だけだとなかなかモチベーションは保ちづらい。

 そこにやり甲斐とか、楽しみとか、あるいはもっと即物的な報酬があってこそ長続きするし上達もするのだ。

 俺ちゃんだってぶっちゃけ、探査者になりたての頃は金と名声に釣られたところはあったからね。

 

 無論、そうした欲望に引きずられすぎても良くはない。結局のところバランスが大事って話でしかないという話だ。

 だからこそ俺は三人に太鼓判を押した。演劇の練習に取り組んでいる時の彼らにはたしかに、義務感とか責任感だけでなく楽しさや面白さを覚えていたんだから。

 

 大丈夫。彼らは不安をも乗り越えてきっと、文化祭を楽しんでいける。

 そう確信しての言葉に、関口くんも梨沙さんも中野くんも強くうなずいて、自信を取り戻した笑みを浮かべてくれた。

 

「山形……! お前も最近いろいろあったんだろうから、やけに実感籠もってるなあ。そんなお前にそこまで言われちゃ、ビビってもいられないよな、こっちも」

「だね! 公平くん、ありがとう! おかげで勇気、いっぱいもらえたよ!」

「山形……お前、そんなふうに長いこと喋れるんだなあ。結構シャイで言葉少ないイメージがあったからなんか意外だったけど、なんだか元気出たぜ! サンキューな!」

「え。あっ、はい……なんかその、はい」

 

 怖ぁ……中野くんに他意はないだろうけど、言われてみれば陰キャがべらべら喋ってるプークスクス的な反応をされても仕方ないことを言ってしまった。

 イキリ山形くん爆誕かこれ。うわわ、黒歴史だコレ!?




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