攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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※メタルワカメは実際にいるモンスターです

 体育館全体の照明が消え、薄暗闇のなか幕が開く。ナレーター役の、今回の演劇の監督役も務めたクラスメイトの女の子自らによる迫真のアナウンスだ。

 

『大ダンジョン時代──モンスター犇めくダンジョンを、踏破せんとする探査者達による戦いの時代。三人の若者達もまた、人の世を救うべく未踏の地へと赴いていた』

「よーしよし、ここで壇上の明かりをつける。ポチッとな」

 

 台本のト書きの通りに、タイミングを合わせて照明をオンに。舞台の上、土塊の床と壁を意識した背景とともに三人の役者が登壇する。

 関口くん、梨沙さん、中野くんだ。特に関口くんの姿に観客はさっそく盛り上がり、すでに拍手が巻き起こっている。

 

 すごい人気だ怖ぁ……まあ校内ばかりかもはや県内でも有名だものな、彼。芸能界入りも秒読みのイケメンすぎる勇者探査者インフルエンサーなんて現代のモテ要素を爆盛したような存在だし。

 こうなると俺ちゃんとしてはプレッシャーだなあ、もし何かしらトチリでもしたら即、関口くんのファンからブーイングだって飛びかねない。

 しっかりしなきゃ。改めて俺は、集中して照明機材に向き直った。

 

「この、A級ダンジョンもいよいよ大詰めだみんな! 50階層250部屋の果てにいるとされる伝説のモンスター、魔王の姿ももうすぐなんだッ!!」

「私達、やれるかしら……! 《勇者》の称号を持つ最強のA級探査者である関口くんに、《武闘家》の中野くん。そして《魔道士》の私、佐山の三人だけで! あの、強大な力を持つとされる魔王に打ち勝てるのかな……!!」

「なーに心配いらないぜ佐山! なんったってこっちには《勇者》がいるんだ! パーティの仲間を一定時間、超強化するスーパーウルトラレアスキル!! それに当人の実力も超一級なんだ、負けるわけがねえ!!」

 

 舞台というだけあって声を張り、力強い演技で台詞を言い合う三人。尺の都合もあり、基本的に台詞は概ね説明口調だ。

 なんかあの、よくわからん魔王とかいうモンスターをこの三人が力を合わせてやっつける──"勇者関口物語"のストーリーはぶっちゃけこれだけの話で、あとの中身はすべて関口くんのイケメン力で補うというものになっていた。

 

 最初は複雑怪奇な設定の入り混じった、人間ドラマも多分に含んだものにしようと躍起になってた監督なんだけどね。

 さすがに持ち時間40分、スタッフも役者も正直ド素人しかいないなかでそんなことできるわけないだろと早々にツッコミが入り今くらいのシンプルさに落ち着いた形だ。

 これについては監督は最後まで悔しがっていたけど、まあ仕方ないよね。

 

 代わりに設定面では本物の探査者な関口くんと、あと俺ちゃんもアドバイザーめいて口出ししてるので多少のリアリティ調節はできてると思う。

 関口くんは物語の都合でS級に匹敵する英雄的A級トップランカーってことになったけど。あとモンスターもよくわからない謎の"魔王"とやらになったけど。

 

「ぴぎぎー!! ぴぎぎぎー!!」

「! 出たなモンスター、A級のグレイトフルスライムか!」

「わっしゃわっしゃ、わしゃしゃしゃしゃ!」

「メタルわかめもいるわ!! どっちも防御力が高いから気を付けて!」

「よっしゃあ! 打倒魔王に向けての前哨戦と行くかぁ!!」

 

 ────と、舞台上に新たなキャラ出現。モンスターだ。

 こちらは実在するA級モンスターの名を借り、姿もそれっぽく小道具で盛り立てたクラスメイトの人達だ。ベースが緑のタイツで身を包んだ二足歩行の人間だもんで、得も言われぬユニークさというかシュールさに若干の笑いが漏れている。

 

 この演出というか、出で立ちも一応ながら監督と関口くんによるアイデアだ。

 どうせやるなら笑い要素もある劇にしたいということで、見るからに変なのがモンスターごっこしてきている感をだしてしまおうということになったのである。

 

 話の本筋はシンプルかつシリアスなわけなので、絵面をシュールにして緩和しちゃおうってことだね。特に関口くんのプッシュがすごかった。

 話を聞くに"ただでさえ俺個人を持ち上げる劇になってる以上、そういうところでコメディらしくしてバランスを取らないとさすがに居た堪れない"とのこと。

 

 こういうところ、なんだかんだと本当に真面目だなあって感心するよ。根本的に彼も根っこのところが全力で真面目だから、いろいろ考えて良い方にも悪い方にも行きがちなのかもね。

 ま、今回は大成功だと思うけど。結構真剣なやり取りから突然全身タイツが出現したことで、緊張の糸が切れて体育館内に笑いが巻き起こっているし。

 

「んふふっ……! モンスター、面白い! ウケる!」

「グレイトフルスライムもメタルワカメも実在するA級モンスターで、当然人型じゃない。それをああいう形で表現するのか、ハッハッハー。ユニークだねえ」

「ていうか案外コメディに寄ったねえ。ファファファ、まあこのくらいのが気楽に拝めてありがたいか」

「たしかあちらの関口くんが本当に探査者で、しかも《勇者》スキルも保持しているらしい。たしか太平洋にも一人、いたなロナルドくん」

「ええ。なんで結構楽しみなんですよ。演劇でスキルを本当に使うのかはさておき、関口って彼の動きとか、どういうのかなって。山形くんの友人でもありますしね」

 

 舞台裏からでも聞こえてくる仲間達の声。探査者として強化された聴覚はこういう時、観衆の声も聞き取りやすいから便利だね。

 リンちゃんはじめみなさん概ね好意的で良かった。関口くん個人に興味津々なサウダーデさんやロナルドさんもいらっしゃるけど、さすがに実際にスキルを使うことはないので悪しからず。

 あといるのか、太平洋にも《勇者》保持者……




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