攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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レッツゴーの次はでっかいようかあ……

「モンスターめ、覚悟しろ! スキル《勇者》発動! ──俺は勇気ある者、みんなに勇気を与える者!!」

 

 舞台上、全身タイツのモンスター役と勇者パーティの戦闘が始まった。先んじて関口くんがスキル《勇者》を使用する──という体の素振りを見せたので、ここでも俺ちゃんポチッとな。

 本当にスキルを使うわけには行かない以上、演出はこちらの照明機材でどうにかする必要があるからね。

 

 一旦照明を暗くしてー、関口くんの位置取りの前にあるスポットライトだけを照らしてー。こうすればどことなく、関口くんがオーラを放っているようにも見えなくもない。

 まあ、どこまでいっても学生レベルの演出でしかないけどね。一応演劇にあたって彼が見せてくれた《勇者》発動時のエフェクトを参考にしたんだ、どことなく輪郭程度は模せている気がした。

 

「おっ……さすがにスキルは使ってないけどアレ、《勇者》発動時の光を彷彿とさせますよ。太平洋にいる勇者もあんな感じですし」

「いるんですねえ、意外と《勇者》保持者。太平洋のほうは私も知っていますよ、たしかB級の若手さんでしたか」

「そうそう! クラン"太平洋はでっかいよう"のメンバーで、生まれも育ちも根っから太平洋客船都市の太平洋っ子さ」

「た、太平洋はでっかいよう? なにやら、ユニークなクランですね……ネーミングから察するに、日本人が絡むクランなのでしょうが」

 

 耳に入ってくる仲間達の反応も上々。特にロナルドさんがすでに《勇者》をご存知なのが大きかったな、実体験からこの演出のリアリティを認めてくれるのはありがたい。

 にしても、太平洋の探査者はもしかしてノリが相当軽いのかな? 太平洋はでっかいようって……日本語でしか通じないダジャレじゃん。

 

 間違いなく日本人か、それにゆかりある方が絡んでいるクランだわ。香苗さんの推測にうなずきつつ、俺は照明をすぐに戻す。

 舞台上で関口くんが剣を構えて敵役へと踊りかかった。剣型に切り取った段ボールに銀紙を巻き付けた簡単極まる小道具を手に、外連味たっぷりの殺陣を演じ始めたのだ。

 そしてその間にも、サウダーデさんがロナルドさんに引き続き貴重な話をされるのを耳にする。

 

「ここ数年で組み上げられた、最新のクランだな。俺もいくらかやり取りはあるが、新世代というべき斬新かつ新鮮な若者達ばかりだった。ちなみに香苗殿の仰るとおり、かのクランの代表は日系太平洋人だな。サチコ・コールスターズ・シンドウ──あのクランは客船都市生まれの者のみで構成されている」

「太平洋客船都市ももう、半世紀はある土地ですからそういうクランもできるものなのですか……ところで関口くん、結構キレの良い動きをしますね」

「演出重視みたいでかなり遊んでますけど、それでも探査者らしく実戦ぽさもありますね、はっはっはー! 見るからに近接戦闘型って感じですけど、割とミドルレンジ気味ですかね? あっ、でもちょくちょく踏み込みすぎてる。クロスレンジの間合いです」

「かつては最前線に並ぶ典型的な前衛でしたが、最近は仲間の補助をするべく中距離にスタイルを切り替え中とのことなのでそれゆえでしょう。実戦だと間合いが甘いという感じですが、演劇ならばこれも見栄えはするでしょうね」

 

 人が作った人口の土地、無数の豪華客船をつなげて形成した新たな共同経済圏──太平洋客船都市。

 すでにそれが構築されてから半世紀近くにもなるなら、当然なかにはそこで生まれそこで育ち、なんならそこで死んでいく人もいるだろう。

 

 件の"太平洋はでっかいよう"とやらも、そうした太平洋人とでも言うべき人達によるクランらしい。

 正直、より詳しい話を聞きたいという好奇心も頭をもたげてくるものの今は演劇にも目を向け、集中しなくちゃいけない。

 関口くんの動きに宥さんはじめ、葵さんや香苗さんも反応しているし、一旦太平洋の話はそこで終わりみたいだった。

 

 改めて舞台の上では、関口くんだけでなく梨沙さんや中野くんも動き出していた。

 魔道士役の梨沙さんが杖を天高くに掲げ、武道家役の中野くんもモンスターの一体、わかめのほうに殴りかかる素振りを見せる。

 当然、ここも照明の使いどころだ。赤や青、黄色や緑と色とりどりの光を切り替えて舞台を彩っていく。無論、キャストそっちのけにならないようにほんのりとした塩梅でね。

 

「《風魔法》! 風よ、聖なる息吹で我が敵を切り裂け──ウインド!!」

「あぴゃぴゃぴゃぴゃー!?」

「助かる!! ──これでトドメだ、《剣術》、ブレイブブレイバー・ハードブレイクッ!」

「にょっぴょっぴぎーっ!」

 

 梨沙さんの《風魔法》。探査者からしたらそれなりに違和感があるだろう詠唱という要素にも俺ちゃん、緑の光で演出を加える。

 さながら風の刃が敵めがけて飛ぶように、鋭さをイメージして彼女から敵へと光の一部を移動させたのだ。

 

 同時に関口くんの段ボールブレードが走った。これまた殺陣ながら、技を放ってモンスター二体を薙ぐ、ようなアクションを披露したのだ。

 えー、こちらはガチで関口くんの探査者としての技だね。なんなら今では彼の弟子、おかし三人娘のチョコさんにも受け継がれているブレイブブレイバーの一種である。

 

 観客にも、今の一撃だけはガチで探査者としての関口くんの姿だってのは分かったんだろう。どよめきと拍手が巻き起こる。

 明らかに空気が変わったもんなあ……演劇でも技を放つからには探査者として、という関口くんの真面目さがみんなにも伝わったみたいだよ。




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