攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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回り道、迷い道、行き止まり。そういうのだって人生でいいじゃん

「せ、関口くんかっこいい……!」

「あの動きガチじゃね? 探査者の動きまんまじゃね!?」

「あ、あれが探査者としての久志かよ。すげえ……」

 

 モンスター役を斬り倒す──もちろん素振りとしてだけど、その過程にて本物の技を披露した関口くんに、観客席からどよめきと感動の黄色い声が上がるのを俺は耳にしていた。

 

 普段からイケメン探査者として認知され、そのイケメンさとコミュ力からやたら目立っている関口くんだけど、さすがに探査者としての側面を見られることはなかなかなかったんだろう。

 人気者イケメンの本気。それを目の当たりにしたんだからこの反応もうなずけるよね。

 

「ほう……? 結構やるじゃないか、あの関口っての。動きと立ち振る舞いにムラがあるけど、そこそこ動くもんじゃないかえ」

「見るからに錆落としをしている段階だねえ、あれは。察するにデビュー当初こそ頑張ってたけど、その後に数年ほどブランクを空けていた時期があると見たよエリスさんは。ハッハッハー、そういうのも人生だねー」

 

 そして聞こえてくる仲間のマリーさん、エリスさんによる御評価。

 探査者という括りにおいては間違いなく最強格であるお二人はさすが、当然のように今の技一つで関口くんのバックボーンを概ね見抜ききっていらっしゃるよ。

 

 実際、関口くんはデビューしてすぐに青樹さんに影響される形で真人類優生思想に染まり、以後数年に亘ってあまり探査者としての活動に取り組んではこなかった時期がある。

 今はそうでもなく、やる気を取り戻して再び活動を開始しているけれど……さすがに数年間ほとんど磨いてこなかった技や体捌きにはブランクが色濃く見えるんだろうね。

 

 デビューしたての関口くんに、しばらくの間だけど指導していたという香苗さんの声が続けて聞こえてくる。

 世界屈指の探査者二人のレビューがあんまり的確だったもんで、彼女としてもコメントしないではいられないんだろうね。

 

「さすがの慧眼ですね、マリーさんもエリスさんも。仰るとおりで彼はこの数年ほど、ゆえあってブランクがあります。我らが救世主山形公平様の御威光もあり今は多少奮起しつつありますが、やはり一朝一夕でカンを取り戻せているわけでもないのが現状でしょう」

「なるほど。しかし、素質は光るものを感じられますよ。アレならば今後には十分期待できると思います。《勇者》スキルを保持しているのならばなおのことね」

「エリスさんのいうように、そういうのも人生ってことなんだろうね。探査者としては積み重ねてこなかったかもしれないけど、その分ほかのことに費やしてきてるんだったらそれもきっと、将来的には彼の力になってくれるさ。考え方次第でしかないからね、こればかりは」

 

 ベナウィさんやロナルドさんも、香苗さんの説明を受けて楽しそうに語る。短いながらも紆余曲折を経て今、ここにいる関口くんの境遇には思うところがあるのかもしれない。

 そういうのも人生、俺もそう思うよ。別に探査者だからって、何が何でも人生のすべてをモンスター討伐に捧げなきゃいけないわけでもないし。

 

 もちろん、オペレータの力はそのためにあるものだ。でも個々人の幸福を追求することだって大切なことだからね。

 かつての関口くんは、さすがに思想面のこともあって俺としてはうなずけない部分もいろいろあったけど……だからといって、探査者活動よりも自身の幸福を見つけようとしたその道程すべてを否定するなんて絶対にしない。

 

 それに、関口くんは現にイケメン探査者インフルエンサーとして幅広い人脈を有しているし、芸能界にさえ片足突っ込んでるようなリア充ぶりだしね。

 間違いなく彼が、彼自身の力で積み重ねてきた結果だ。陰キャ的には眩しいほどのその在り方こそが、探査者としてだけでない関口久志の数年間が、方向性は違えど値打ちあるものだと示していると思うよ。

 

「よしっ! やったぞ、みんな! さあ行こう、魔王はもうすぐ目の前だ!!」

「うんっ! 私達は探査者だもの! 人々を脅かすモンスターをきっと、倒してみせるわ!!」

 

 モンスター役が退場し、関口くんと梨沙さんの声が体育館中に響く。素人ながら演劇を意識した、腹の底からの発声には張りと力強さがある。

 特にさすがは主役の関口くんは、普段から人前で目立つことにも慣れているからだろう、堂々とした振る舞いで本当に舞台役者みたいだ。

 

 これもまた、彼が培ってきた人生がもたらしたものの一つだろう。探査者だからって何も、スキルやレベル、称号だけがその人の持つ魅力じゃないってことだね。

 さておき台本だとここで一旦の場面転換だ、照明を切る。暗転して薄暗闇のなか、裏方の小道具さん達が背景を別なものに変えていく。

 

 これまた時間勝負だ、当たり前ながらそう数分と時間もかけていられないからね。

 いそいそと黒子を着たクラスメイトの裏方さん達が舞台上のセットを変えていく。一応これも事前に練習してきているけど、さてどうなるかな────!?

 

「あっ」

「! 危ない!!」

 

 様子を見ていた俺とさやかちゃん先生が同時に声を上げた。大掛かりな背景のセット──発泡スチロールで作った大きな壇を四人がかりで持っていたクラスメイト達が、足をもつれさせて体勢を崩したのだ。

 これは、転倒するかもしれない。しかも観客のほうに向けてだ、下手すると怪我人が出る!

 

 迷う瞬間など少しもない。

 俺はその時点ですでに、神魔終焉結界を発動していた。




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