攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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時を停めるっていうか世界ごと停めるっていうかぁ……

 一瞬とてかけず変わる俺の服装。それに隣のさやかちゃん先生が反応する間すら与えず、俺は俺にできる最善を行っていた。

 さっき言っていた俺の奥義、コマンドプロンプトの因果操作における究極の一手──世界停止を敢行したのだ。

 

「《コマンドプロンプトによる因果改変をもって、世界のすべては停止する》──世界よ、停まれ」

 

 俺がつぶやく、その時点ですでに世界停止は成立していた。この世のすべてが静止している、完全なる"停まった世界"。

 今この瞬間、この世界はたしかに俺だけのものだ。現世からシステム領域までのすべてに、コマンドプロンプトによる仮想領域を割り込み発動したのである。

 

 そう、厳密にはこれは元来からある世界そのものを停めているわけではない。

 世界そのものを一つの時間連続体として仮定した上で、その一瞬一瞬の合間に無理矢理、俺が創り出した世界のコピーたる仮想領域を代入しているのだ。

 

 コピーとはいえ世界そのものなので、割り込み差し込んでもすぐにつながり、その仮想領域は元からあった世界の一部として扱われる。差し込み中の仮想領域内で起きたことも、辻褄合わせをした上で元の世界に適用される。

 そういう因果に仕組んである──だからこそ俺だけがこうしてこの仮想領域にて自由に動けるのだ。この身体では神魔終焉結界のサポートありきでも30秒程度、だがそれだけあれば十分だ。

 

 転落する間際のクラスメイト達を速やかに助け、かつ運搬中の背景用発泡スチロールを定位置にセッティングする。よいしょ、よいしょ。

 軽いけど結構大きいくて形がギザギザしてるから、足元が微妙に見えにくいなあ……暗転中だからこれはこけるわ、無理もない。急がないといけない焦りもあったろうしな。うんとこしょ、どっこいしょ。

 

 でもこれで大丈夫だ。ついでにほかの小道具もセッティングして、その上で裏方さん達をみんな舞台裏に戻らせる。わっせ、わっせ。

 普通の人間なら30秒でそんなことまでできるわけないんだが、こちとら四桁超えレベルの超人ですからね。常人のゆうに50倍以上の馬鹿げた身体能力でもって、そそくさと一連の流れを達成する。えっほ、えっほ。

 

 そして自身も照明機材に戻れば、ちょうど限界時間が訪れた。こうなると因果は勝手に戻るだろうが、一応手動でも解除しておこうか。

 神魔終焉結界も解除しとかないと、突然コスプレ始めた山形くんになっちゃうしね。

 

「さすがに負荷がちょっと怖いな……ま、とにかく演劇が変なことにならずに済みそうで良かったよ。《我が領域は世界に馴染み、そして停止は解除される》、と。神魔終焉結界も解除イテテテ!」

「!? どうしましたか、山形くん!?」

「いえいえちょっと突然照明機材の使いすぎで筋肉痛がアデデデ」

「照明機材で!?」

 

 世界停止と神魔終焉結界を解いた瞬間、全身に駆け巡る筋肉痛。山形公平の身体であっても負担が大きい技を使ったもんだから、こりゃさすがに仕方ないリスクではあったな。

 突然隣で呻き出した俺に、さやかちゃん先生がギョッとしてツッコんだ。うん、照明機材弄ってて全身筋肉痛はいくらなんでもないなこれ。

 適当に笑って誤魔化す。耐えられない痛みじゃないから助かるよ。

 

「良かったー、無事にセットできたー」

「あの壇、大きすぎるし体育館が暗すぎるぜー。コケなかったのが奇跡なくらいだぞあんなん」

「もしこけて、舞台から万一落ちでもしてたらゾッとするね……関口くんの晴れ舞台を台無しにするとか、さすがに学園生活終わるよ」

「だなあ。そうならんで良かったぜマジで。ま、あとは久志や佐山さん、あとアホの中野にお任せだな!」

 

 舞台を挟んで向かい側の裏方、さっきセッティングしてたクラスメイト達が安堵の吐息を漏らすのを耳にする。良かった、何より怪我人が出なくて本当に良かった。

 演劇の成否も大事ながら、やはり優先されるべきは安全だからね。演出の関係で暗がりにしていたけど、せめて足下の照明くらいは軽くつけておくべきだったかもしれない。

 

 そこは俺の反省点で、だからこそ自分で落とし前をつけたって話でもあるかな、これは。

 とにかく無事に第二幕と言うべきか、勇者関口パーティがラスボスたる"魔王"なるモンスターと戦う場面から演劇は再開した。

 

「ここが間違いなく最後の敵、魔王の居場所だ! いくぞみんな、覚悟は良いな!!」

「もちろん!」

「必ず勝つぜ、このダンジョンを踏破するために!!」

「よし! なら行くぞ、みんなーッ!!」

 

 関口くんの檄が飛び、梨沙さん中野くんもうなずく。三人ともよく練習してきただけあって、非常に気合の入った良い演技だ。

 そしてセットされた壇の前まで行けば、いよいよ最後のモンスター、魔王が現れた──黒子の裏方さん二人がスモークを焚いて、靄がかったなかから現れたのだ。

 

 女子生徒だ。ローブ姿に上から段ボール製の鎧を着て、大きな剣を携えている。こっちは発泡スチロール製だね。

 壇の上に立ち堂々とした居住まいの彼女は、あるいは関口くん以上の存在感を放っている。普通に自信満々の様子で、不敵な笑みさえ浮かべている。

 

 さもありなんや。そりゃー誰より自信あるだろうさ。

 何しろこの魔王こそ、この演劇の脚本から監督までを務めてくれた立役者のクラスメイトなんだから。

 

「フッハハハハハハ……! よく来たな勇者よ! 我こそがこのダンジョンの支配者、モンスターを統べるもの! 魔王ゼータ・サーマである!!」

「出たな、魔王!!」

 

 監督、脚本および魔王役。一人三役の荒業をこなしたその名は魔王……じゃなかった、藤堂真央さん。

 うちのクラスにあっては陰キャ寄りのグループに属していたけど、今回の文化祭の準備のなかで一気に存在感を示した女傑だった。




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