攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
クラスメイトにして今回の演劇の一切を取り締まってきた藤堂真央さん。
今まで俺ちゃん同様の日陰に咲くタイプの学生さんだと思っていたのだけれど、高校デビューならぬ文化祭デビュー同然に秋に入って彼女は弾けた。
なんか元々、ネットで小説とか書いているそうでそれを活かしてまずは脚本に就任。
翌日には台本のプロトタイプを仕上げてきたかと思えば、このホンを活かせるのは自分しかいないと咆哮。瞬く間に監督の座まで射止めてしまった。
まあ、ぶっちゃけ誰も監督役をやりたがらなかったがゆえの兼任なんだけどね。
それでも監督にもなった藤堂さんは、即座に配役と役割分担を決めてテキパキと段取りを組むようになったのだから、呆気にとられていたクラスメイト達も次第に彼女を信頼するようになっていったのである。
「よくここまで来たなァァァ勇者よォォォッ!! この魔王ゼータ・サーマは、貴様らの到着を一日千秋の想いで待ち焦がれていたぞォォォッ!!」
「魔王、ゼータ・サーマ!」
「我が血と肉の喜びのためェェェ! 哀しみと憎しみと苦しみを捧げよォォォ!!」
迫真通り越して凄絶なまでの演技。魔王役についてはさすがに藤堂さんも最初はやる気なかったものの、誰もマジで一人として立候補しなかったもんだから仕方なく彼女がやることになったという経緯がある。
だって普通にやりたくないもんね、イケメン探査者勇者くんの踏み台の役とか。別にハリボテ組んで声充てるとかでええやん? 的な意見もチラホラ出たものの、それは何やらこだわりのある藤堂監督が拒否してついに自ら名乗り出ていたのだ。
『もう良いです私がやりますッ!! ──関口くんを完全無欠のヒーローとして演出するためには、とってつけたようなモンスターもどきではなく人間の形をした魔王こそが必要不可欠ッ!! 同じヒトガタを相手にし、まさか相手にも何か事情があるのではと完璧ぶったイケメンを後々までじっくりねっとり苦しめ悩ませるそれが文化の真髄ならッ、こんなところで日和るわけにはいかんとですたいッ!!』
『藤堂さんは演劇を通して俺をどうしたいんだ!?』
『ヒーローは彼我の相違相克に苦しんでなんぼですから! その点山形くんはやっぱりヒーローとは言えませんね、だって明らかになんの迷いなく当たり前に救世主やってそうだし! 正直人間的な苦悩とかあんまりなさそうですし!』
『いやあるにはあると自分では思ってるけどそもそもここで引き合いに出すの俺を!?』
などと、関口くんともども理解に苦しむ理論を展開されてしまったのも懐かしい話だ。これが天才かあ? 怖ぁ……
何やらヒーローってものに強いこだわりがあるらしいのは分かったけど、なんでそこで無関係ゾーンにいた俺まで言及したのか分からなかったよ。
ちなみにそのやり取りのあと、藤堂さんは勢いに任せて口にしたことを自覚したのか関口くんと俺のところにまで来ておもむろに土下座してきたもんだからそこでもまた困る羽目になった。
うーむ、このコミュニケーションの慣れてなさはまさしく陰キャの鑑ですね……と、どこかシンパシーさえ感じつつ二人して宥めすかしたもんだよ。
まあ、その場にいた梨沙さんや松田くんは"さすがにもうちょっと言葉を考えなよ、人にもの頼むんならなおのこと"と藤堂さんに苦言を呈していたんだけどね。
あそこまで暴走したなら言われても仕方ないところではあるかもだ。
ともあれそんな経緯を経て、今や藤堂監督は魔王ゼータ・サーマとして舞台上に君臨しているわけだった。
今まで多少の脚色はあれど、概ね一般的なダンジョン探査の風景を描いていたところに突然現れた人語を話す謎のモンスター魔王ゼータ・サーマ。
そのインパクトには、どうやらうちの仲間達もびっくらこいてるみたいだね。
「はっはっはー! ここに来て急にフィクションのギアを上げてきましたねー。葵さん的にはこういうの好きですよー創作者の個性を感じて!」
「思えば人の言葉を喋るモンスターなんてものはさすがにいませんね……都市伝説的に語られるモノはいますが、それも普通に眉唾物ですし」
「ああ、"エンドレス伝説"だね。懐かしい話さね、私がガキの頃からある都市伝説じゃないかえ。人の言葉を操り、人の姿をして世界を巡るモンスター、その名はエンドレス……なんて。たしかそれ言い出したの、エリス先輩の仲間だって聞きましたけど」
「あー、妹尾教授だねー。弟子のトマスさんも何やら意味深だったけど、実際のところどうなんだか。少なくともエリスさんは見たこともないよそんなの。あの二人とも、第二次以後はめったに会わなくなったしねえ」
何やら魔王というモンスターに、都市伝説らしい逸話との相似性を見出したみたいだ。香苗さんやマリーさん、エリスさんを中心に何やら盛り上がっていて楽しそう。
エンドレスねえ……人の姿をして、人の言葉を操り世界を巡るならそれはもはや人間なんじゃないかな? と思うけど概念存在の可能性もあるか。
はたまた本当にモンスターが突然変異とかバグを起こしたとかあったりしてね。
ある意味、これも大ダンジョン時代の産んだロマン話の一つかもしれない。どことなく感心しつつも俺は、関口くん達がいよいよ魔王とことを構えるのに合わせて照明を調節した。
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