攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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関口久志と山形公平─あの日の光、あの日の姿を覚えているから─

 勇者関口とその仲間達と、魔王ゼータ・サーマの決戦。それに合わせて俺ちゃんの照明機材を操る手も蠢くぜ、何しろ台本での指示には本当にこうするように書いてあるからな。

 色とりどりのライトで舞台上を照らしていけば、関口を中心に梨沙さん、中野くんが攻撃していく。

 

「行くぞ魔王ッ!! 《剣術》、ブレイブブレイバー・ラピドリーショック!!」

「《風魔法》! 嵐の槍、向き貫くは魔の王なり──ウインドランサー!!」

「うおおお《格闘術》! ゴールデンデリシャスキーック!!」

 

 関口くんは自前のガチ剣術、勇者剣のさらなる技を披露。梨沙さんと中野くんはもちろんオペレータではないので台詞としてスキルと技名を叫ぶ。

 技名なんてのは基本その人のアドリブ任せなんだが、ゴールデンデリシャスってなんだか美味しそうだぞ中野くん。もしかして心はもうメイド喫茶とかに行ってないか中野くん!

 

 特に梨沙さんの《風魔導》は照明による演出あってのものだ、濃い緑のライトを台詞に合わせて動かし、さながら風の槍のように魔王ゼータ・サーマへと向ける。

 地味にこれ、俺の手も忙しいんだよね! こっちは下手なアドリブなんて噛ませる立場でも余裕でもないので、必死に台本通りにカチャカチャと機材を動かす。

 

 そんななか、魔王が動いた。

 手にした剣で関口くんの聖剣オネスティキャリバーと中野くんの蹴りをなんなく受け止め──関口くんお見事! 実に見事な寸止めだ──不敵に、過剰なまでに演技がかった高笑いを見せたのである。

 

「ふふふふははははははァァァッ!! 温いわァァァ、勇者ァァァ!!」

「くっ、効いてないのか!?」

「私の身体はァァァ貴様の聖剣、オネスティキャリバーの攻撃など効かぬのだァァァ! 力の通じぬ聖剣など単なるナマクラァァァ!! 貴様もこれで、終わりだァァァ!!」

「うおおおっ!?」

「きゃああっ!?」

「うわああああ!」

 

 鍔迫り合い、に見せかけた状態から魔王が剣を振るえば関口くんのみならず、梨沙さんや中野くんまで吹き飛ばされる素振りで舞台に転がる。

 聖剣オネスティキャリバー通じず! まあ、ラスボスとしてこれくらいはしてもらわないと困るよねー的な見せ場だよね。藤堂さんのやたら力の入った怪演もあり、なんなら今この演劇で一番存在感を放っている気さえするよ。

 

 このまま勇者関口くんはぽっと出の魔王に空気を支配されたままで終わるのか!? 観客もそれなりに魅入っているようで反応も薄い、次の展開を待ち望んでいる様子だ。

 ま、これで終わりなんてそんなわけもない。俺は照明を一旦落とし、次に関口くんにのみスポットライトを当てた。

 ここからクライマックスで、しばらく彼の独擅場だ。

 

「聖剣が、オネスティキャリバーが通じない……っ!? これじゃ、俺達に勝ち目は……いや、違う!!」

 

 オネスティキャリバーを見つめ力なくつぶやく。それは己の相棒たる聖剣が、強大な敵、討ち果たさなければならない魔王を前に効果が薄いことへの絶望と無力感。

 ──けれど関口くんは観客のほうを向き、力強く叫んだ。俺もまた、舞台裏から彼の姿を見る。

 

「聖剣が通じないとか、敵が強いとか、勝ち目がないとか……!! そんなことが今、立ち向かわない理由にはならない!! どんなに苦しくても、どんなに辛くても! 人々を苦しめるモンスターに立ち向かう、それこそが探査者なんだッ!!」

 

 このあたりの台詞は、何を隠そう関口くん自身の考案した言葉だ。強大な敵を前に心折れそうな時、探査者はどういうふうになるのか?

 そればかりは藤堂さんにも他の誰にもわからない、探査者たる関口くんの言葉にこそ魂が宿ると判断されたからね。

 

 さすがの関口くんも面食らいつつ、それでもずいぶん真剣に考えていたみたいだった。俺にもアドバイスを求める素振りを一瞬見せてきたりもしたけど、彼はそれさえすんでのところで留まった。

 "これは、俺自身が自分で見つけなきゃいけないものだと思う"と言って。その言葉は、関口くんが立派な探査者であることを示しているように俺には思えたよ。

 

「ダンジョンに苦しめられる社会がある! モンスターに苦しめられる人々がいる! そしてそれらに対抗できる、探査者がいる! それだけで良いッ!! 聖剣なんてあろうがなかろうが、今! この場に探査者がいるなら関係なく魔王に立ち向かう。それが探査者だ! ────俺が憧れる、あの救世主の背中だッ!!」

「…………んんっ!? 関口くん!?」

「あらぁ? アドリブですねえ〜」

 

 事前に練習していた台詞の最後に、何やら不穏な一言が追加されている。あれ? とさやかちゃん先生と顔を見合わせて関口くんを見る。

 彼は、どこまでもまっすぐにどこかを見ていた。体育館じゃない、遥か向こうの"誰か"の背中を。

 

 想い高ぶっているのか? 俺には演技のことなんかわからんけど、たまに感情移入するタイプの演技をする役者さんもいるとは聞いたことがある。

 関口くんの気迫が膨れ上がり、観客もそれに魅了されたのか静まり返っている。ここに来て、彼自身の持つカリスマが放たれたのか。

 

 この場の誰もを魅入らせる彼は、まるで心底から希うように世界に向けて叫んでいた。

 

「力がなくても、アイツのような心で……! アイツみたいに、俺も、いつか……誰かの救いになれるなら!! 聖剣なんて関係ない! 俺自身の力で魔王を倒せると信じるッ!! 俺に、勇者の資格があるならば!!」

「ゆ、勇者関口!?」

「《勇者》発動────!! いつの日か、きっといつの日か。俺も誰かに手を差し伸べられる、あの日のアイツのようになるために! 今こそ応えろ、《精霊剣》ッ!」

 

 おもむろにスキルを、フリじゃなく本気で発動する。《勇者》の力、パーティメンバーを強化する効果、光の粒子が彼の周囲をほのかに照らす。

 それに合わせて俺は舞台の照明をつけた。予定にないアドリブゆえか魔王ゼータ・サーマってか藤堂さんもにわかに困惑しつつ、それでも役者魂として魔王ムーヴを止めないところへ関口くんが、オネスティキャリバーを構えた。

 

 必殺技の構えだ。

 しかし、これもアドリブか!? っていうか、今《精霊剣》とか言ったか!?

 《剣術》の上位スキル──進化スキルの一つだぞ!?

 

「ブレイブブレイバー・ワイルドカード──イミテーションシャイニング!!」

 

 腰を深く落として剣を顔の横まで掲げ、突き出す。狙いは魔王よりかなりズレた、けれど観客から見れば彼女を狙っているかのような位置取り。

 距離はある。普通に突き出しただけでは当然、届かない距離だ。しかし。

 

 しかし──段ボールの聖剣から迸る剣閃がほとばしり、まっすぐに切っ先から放たれた!

 威力のない、かすかな熱だけを込めた光線、ビームだ!

 関口くん、ビームを放っちゃったよ!?




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