攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
個性豊かな五人組、しかもそのうち一人はなんと退魔師のお家の方というとんでもないファンタジーアイドルグループなことさえ判明したハミングバード・サーチャーズ略してハミバ。
俺への名乗りやら感謝の気持やらを伝えて少しばかりやり取りしてから、そんな彼女達はけれどやはり忙しいようですぐに俺達みんなに頭を下げて、あらためて言ってきていた。
「すみません! 名残惜しいんですけどこの後、こちらの学校さんの体育館でステージに立ちますのでそろそろ私達はこのへんで失礼します!」
「あ、なんか文化祭プログラムにも載ってましたね。たしかソフィアさんもその後、登壇して講演されるとか」
「そうなんです。"永遠の探査者少女"、私達よりずっとアイドルな統括理事の前座なんて、あまりにも荷が勝ちすぎてますけど……だからこそ、燃えてきます」
「場を冷やさないように頑張らなくちゃっ! ファーイト、オー!」
近江さん、群馬さん、青森さんが立て続けに気炎を吐く。開会式のタイミングで生徒達には配布され、来校者には入口の段階で手渡される文化祭のプログラムにはたしかに午後からハミバのライブとシークレットゲストによるイベントと記載されている。
このシークレットゲストってのが言わずと知れたソフィアさんであり、ハミバはその直前に場を盛り上げる役をこなすみたいなのだ。
もちろん、前座扱いとかって話じゃないだろう。そもアイドルのイベントと政治家の講演じゃ性質も方向性も違いすぎる。
それ以前にシークレットゲストの正体も公的にアナウンスされないので、割とすでにソフィアさんが好きに動いている時点でアレだけど一応不明ってことにはなってるし。
けれどハミバのみなさんが意気込んでいるのは、やはりそのソフィアさん自身がとてつもない美貌を誇り、かつ年を取ることなく永遠にあり続けるシンボル、永遠の探査者少女であるがゆえだろう。
マジでこの100年間のなかでもほぼずーっと、世界的アイドルと言って差し支えないレベルの人気だし。ブロマイドとかサインの写しとかがもはや定番とばかりに土産物屋で売られてる政治家なんてそうそういないと思うんだよね。
ちなみにソフィアさん自身は一切外見が変わらないものの、周囲は当然年代を追うごとに変わっていく。
だもんで、彼女のブロマイド写真とかは毎年それなりの数撮られているみたいなんだけど、収集家のなかでは特定の年代のものがプレミア扱いだったりするみたいだ。こないだネットで見たもの。
えーざっくり90年くらい前の写真が30億円で落札されたとかなんとか。表舞台に出たばかりってことで、そんなに撮られてなかった頃ゆえに値段も跳ね上がったんだとか。
これにはさしものソフィアさんも仲間内のグルチャで呆れを隠さずに愚痴をこぼしていたな……その手の情熱を否定はしないけどものには限度があるでしょうって。
俺もそう思う。古びたブロマイド一枚に30億って無茶苦茶だよ! パンピー山形くんからすると、なかなか理解に及ばない世界の話である。
ともあれ、そんな世界的人気者のソフィアさんの前に舞台に立つのだ。他ならぬ当人達もアイドルであるからして、前座を任されたと思うのも仕方ないのかもしれない。
ただ、そこについては当のソフィアさん本人が五人に向けてメッセージを発していた。そこまでは楽しそうに見ていたものの、少し眉をひそめ、やんわりと諭すように彼女らへと言ったのだ。
「差し出がましいですがハミングバード・サーチャーズのみなさま、どうか前座などと仰らないでくださいませ。私はあくまで講演者、別段あなた達のように舞台で歌い踊るわけではないのですから。こうした楽しい文化祭において、堅物ぶった私などよりあなた方こそがメインであるべきでしょう」
自らを前座と断言する姿に、彼女としては居た堪れないところがあるんだろう。社会的立ち位置や重要性もあって仕方ないこととは言え、ソフィアさんとハミバで明らかに学校側の扱い方が違うからね。
良くも悪くも謙虚というか、意外と自己評価の低い彼女からしてみれば若い子達を差し置いて特別扱いされる自分というものに、理解はしつつも納得のいかないものはあるのかもしれない。
だけど、ハミバの五人もやはりプロフェッショナルだ。
きょとんとした顔をした後、慌ててそれを良くないと感じたか顔を引き締めて慌てつつ、ソフィアさんの言葉に答えたのだ。
今回の仕事、そこで果たすべき自分達の役割についての意気込みを。
「えっ……いえあの、むしろ前座を任せていただいたことにうおーっ! やるぞーってなってるんですけども! どうかお気になさらず、こんな機会、一生に一度あるかって話ですし! ねっ、みんな!」
「そ、そうです統括理事……お気にしてくださることは大変畏れ入りますが、私達のような駆け出しアイドルにとってはこうした役割はむしろチャンスなんです。言い方は良くないかもですけど、箔が付くと言いますか」
「なんせ"永遠の探査者少女"の前座ですからねえ。うちの事務所の広報もマネさんも社長も総出で張り切ってますよ、一世一代の大舞台や言うて。もちろん、私らも感謝してます。このチャンス、絶対モノにしますよって!」
意気軒昂に顔を見合わせる五人。そこには迷いも揺るぎもない、巡ってきたチャンスを逃がすまいとする輝きがある。
前座とか、バックダンサーとか、そういうオープニングアウトの役割はメインを引き立てるためのものではあるんだけど。同時にそこで自らの存在をメインのファン層に対して強く主張し、宣伝するのに効果的な場であるとも聞いたことがある。
そういう意味で、永遠の探査者少女ほどファン層が広い人もそうそういまい。ハミバは絶好のアピールチャンスを得たとも言えるのだ。
良い意味での貪欲さを発露するハミバに、ソフィアさんも目を丸くしつつそれでも納得したように、どこか安堵したように微笑むのが見えた。
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