攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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認めていきたいものだな、若さゆえの情熱というものは

 そうしてハミバのみなさんは去っていき、大会議室は少しの間、静寂に支配された。

 嵐のような熱量のアイドル達だったがゆえの反動だ……見る者すべてを魅了してみせる、巻き込んでみせると言わんばかりのエネルギーは、今はまだ駆け出しだけどそのうち彼女達全員が大成するんじゃないかという予感を抱かせるものだったのだ。

 

 ハミングバード・サーチャーズ。

 そう遠くないうちにハチドリ達はその自由な情熱でもってメディアに旋風を巻き起こし、そして探査者としてアイドルとしてさらなる進化を遂げてくれることだろう。

 そう、あんまりアイドルとかに興味を持たない俺にさえそう思わせたのである。

 もちろん、仲間のみなさんにもだ。

 

「若いとは良いものですねえ。情熱だけですべてがやり遂げられるわけでは決してないものの、それを承知でなお情熱を手に突き進もうとする意志。中年にはなかなか、刺激的な姿ではあります」

「まったく同感。思えばガキの頃の俺も、方向性は違ってもあんな感じだった気がするなあ……無鉄砲で向こう見ずで、先のことはなんにも考えてなくて。それでも、こうと決めた目標に向かってただ、駆け抜けて」

「かつての我が身を省みて、若い世代の素晴らしさを感じ入ることが多いな、最近は。自らの道を自ら拓く、誰もがそうしながらもしかし、あそこまでの情熱はやはり若さゆえの強さと言えるだろう。成熟とともにどうしても、失われていくものかもしれないが」

 

 ベナウィさん、ロナルドさん、サウダーデさんの御三方がそれぞれ、何やらしみじみと語っていらっしゃる。

 四十代の二人と六十代の一人がそう話す姿は、なんというか老成して熟成した雰囲気に満ちているね。

 

 まさしく酸いも甘いも噛み分けた姿というべきか……自分達もかつては先程の彼女達のように、大志を抱いて遮二無二駆け抜けたことがあって、だからこそ感慨にふけっているのかもしれない。

 S級探査者だものなあ、人一倍どころでなく頑張ってこられたんだろうし、思うところとないわけないよな。

 

「ファファファ、年寄りくさいねえ? ま、思えばガキンチョもいいとこだったベナウィやロナ坊ももう四十路、クリストフに至っちゃ還暦だ。やれやれ、そりゃ私も齢83さね」

「ハッハッハー、マリーがそういうこと言い出すのがエリスさん的には一番、時の流れを実感するかなー? 出会った頃は花にも噛みつく狂気の18歳だったのが、今じゃすっかり楽隠居の83歳だもんねー」

「それはまちがいなくそうねえ、エリスちゃん……今でも時折、マリーちゃんに若い頃の姿が重なって見える時があるもの。アレがどうしたらこうなるのかしらって、私が言うのもなんだけれど時間というものに哲学的な想いを馳せずにはいられなかったわね」

「……………………ファファファ〜」

「怖ぁ……」

 

 なんということでしょう、そんな三人をからかうように話に入ったマリーさんが、さらなる大御所たるエリスさん、ソフィアさんにみごとなカウンターを食らったっぽくて目を逸らして笑い始めている!

 怖ぁ……83歳の彼女をして論破されざるを得ない説得力のお二人もさることながら、そもそもそんなふうに言われてしまうような若い頃だったマリーさんも大概だ。

 

 もうなんていうか、方々で同じような話を聞くあたり本当の本当にマジのガチでマリーさんの若い頃はやばかったんだろうな。

 なんなら本人でさえ認めてるところが一部あるし。若い頃の姿が瓜二つだという孫のアンジェさんについて語った時、言ってたものなあのくらいの年の頃の自分は増長してたとかなんとか。

 

 そんな方が今や、誰より温かくて優しくて、でもお孫さんにだけはちょっぴり厳しいお婆ちゃんなんだ。

 昔を知っているなら知っているほど、ソフィアさんみたいな感傷を抱いちゃうのも仕方ないのかもなあ。

 

「わ、私のことはどうでもいいじゃないかえ! それより昼飯も食って腹も膨れたし、さあさどうするかねここからは、ねえ公平ちゃん!」

「お、俺ですか俺ですよね! ……ええと、まあ午後からも模擬店とか展示とかやってますし、そういうのを見回ったりしても良いのかなとは思ってます。それこそ先程のハミバのみなさんのライブを見たり、その後のソフィアさんの講演を観たりとかもアリですね」

「うふふ、なんだかちょっと緊張しますね。こうした学校でのスピーチというのはあまり経験もないのに、さらにみなさんが来るかもしれないというのは」

 

 照れ隠しと言うか誤魔化しに俺へと話を振ってくるマリーさんへと応える。実際午後からどうする問題については、そろそろ話し合ってもいい頃合いではあるからね。

 当然、まだまだ回ってない模擬店やら展示やらはいくらでもある。理科室でモンスターじゃないほうのスライムを作る実験とかやってたりするし、美術室では夏休みの宿題としてあった自由研究のなかでも、教師陣が選んだものが展示されてたりするし。

 

 なんならその自由研究のなかに俺のもあるそうで、正味なところ反応が気になってるのも事実だ。

 そういうのからハミバのライブ、ソフィアさんのスピーチまで含めて──どう動くかってのが、午後からの考えごとなわけだね。




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