攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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さすがに何も無いのに突然光りだす男子学生はちょっと……

 俺ちゃんのも含めた、夏休みの自由研究が展示されている美術室へと向かう。その道すがら、通りがかる模擬店であれやこれやをつまみながらの道のりだ。

 俺はともかく香苗さん、宥さん、そしてミュトスが並んで廊下を歩くってのはまあ、予想していたけどすさまじく目立っている。度を超えた美女が三人だものね、仕方ないよね。

 

「学校の廊下、というのも何やら懐かしいですね……いえ、まだ数年しか経っていないですが」

「うふふ、まさか公平様の母校をこうして公平様や伝道師香苗、それにミュトスさんと並んで歩くことになるなんて。とても素敵な体験です」

「学び舎は私の故郷にもありましたねえ。ただ、さすがにここまで高度な施設でもありませんでしたし、誰でも学べるようなところでもありませんでした。っていうかドラマであるようなスポ根的なアレは見られますかね? 夕日に向かって走れ! 走り終わったら俺はお前らを泣きながら一発ずつ殴る!! みたいな」

「さすがに古いし怖いかな、それは……」

 

 伝道師ムーヴさえなければクールビューティーの香苗さん。使徒ムーヴさえなければほんわかおっとりお姉さんの宥さん。そして昭和ムーヴさえなければ陽気な楽天家気質のミュトス。

 それぞれタイプが異なれど、共通するのは見る者すべてを虜にしかねないほどの美しさだろう。

 

 実際、通りがかる学校の生徒やら先生やら、はたまた他の来校者の方々もみんな揃って彼女らを見ずにはいられないでいる。

 なんならそこに混じっている一人パンピーでそもそも野郎な俺ちゃんには、そこはかとない好奇と嫉妬の視線が突き刺さっているほどだよ怖ぁ……

 

「うおっすげー美人。アレってアレだよな、御堂香苗さんに望月宥さん。それにとんでもねー美人もいるぜ」

「た、たまんねえ……声かけたいけど無理だろうな、さすがに相手にもされないのは分かるわ」

「っていうかいるじゃねえかハーレム救世主が。無理だよその時点でそもそも、どうせ狂気のカルト勧誘食らって終わりだ、最悪帰依させられるまであるぞ」

「逆にあの男の子、よくあの三人と並んで歩けるよな。俺だったら気後れして無理だわ、やっぱ探査者だからか肝の据わり方が違うなあ」

「それなー。うらやまー」

 

 主に男達からの声。別に俺も気後れしてないわけじゃないんだよ、ただなんていうか、慣れって怖いんだよ。

 さすがにこのレベルの美女美少女に囲まれ続けると、半年も経つと嫌でも慣れたり馴染んだりするんだよね。それはこの三人に限らず梨沙さんとか、リーベやらヴァールやらシャーリヒッタやらもそうだし、リンちゃんやアンジェさんランレイさんも同じことが言える。

 

 人間、どうしても適応して目が肥えちゃうってことなのかもしれないけど……それはそれとしてハーレム救世主呼ばわりについては断固抗議していきたいところだ。

 そんな決意でキリッとした顔を浮かべつつ、三人の美女に連れられて模擬店を巡る。わーいたこ焼きだ焼きそばだチョコバナナだー。

 すぐにフニャッとなっちゃったよ、俺の顔。

 

「学校内でこういうものを体験するってめったにないことですよね。中学の文化祭でもこんな感じでしたけど、祭りのハレ感が特に感じられる瞬間ですよ──すみませんたこ焼き四人前くださーい」

「はいよーって、あっ! 噂の救世主! 今日はシャイニングしねえのかい!?」

「しません……なんかすいません、さすがに何もないのにおもむろに光りだすのはちょっと」

「そっかー」

 

 二年生のある教室、たこ焼きを売っている模擬店にて四人分のたこ焼きパックを買うよ。

 べらんめえな感じのお兄さん先輩にシャイニング山形と気づかれるも、今日は光らないというか光る理由もないのでやんわり応対する。

 

 仕方ないこととは言え、たまに学内でも見知らぬ人に声をかけられたりするんだよね。あっシャイニングくん今日は光らないの? とか。

 正直自分でも、突然輝き出しかねないわけの分からん男子学生なんてのに出くわしたら、話しかけるかはともかくそのくらいの感想は抱くだろう。

 

 なのでコミュ障なりに、曖昧な笑みを浮かべて会釈くらいはしている俺ちゃん。最近だとこれも慣れてきて、多少軽い受け流しくらいはできるようになってきた気がする。

 見知らぬ先輩も軽い雑談くらいの感覚だもんで、すぐにたこ焼きの準備に取り掛かって会話はそこで終わったんだけど……何やら後ろで香苗さんや宥さんがニコニコしている。

 なんぞや?

 

「ふふ……見てください使徒宥、我らが救世主様が学生として過ごしておられます。なんて尊み深くそして美しく愛らしい。見ているだけで胸が高鳴ります」

「そうですね、伝道師香苗。時折見る学生服も、学校という場所には当然馴染んでいつもとはまた別の趣深さを感じさせてくれますね。この光景を見ることができた、それだけで今日という一日は値千金の値打ちがありましょう」

「どひぇー……さすが伝道師さんと先輩使徒さんは目のつけどころが違いますねえ。言われてみればたしかに、他の学生さんに混じって見る山形様は得も言われぬエモみがある気がしますね。なんかこう、普段の探査者としての姿とのギャップと言いますか」

「えぇ……?」

 

 ミュトスまで混じって、俺ちゃんの学生生活の姿に何やら尊みを感じたりエモがっていたりする。そんなにか? そんなに俺の学生服姿は珍しいか?

 ……まあ珍しいか。夏までは学生服の上にプロテクターつけて探査したりしてたけど、今やすっかり神魔終焉結界での姿がデフォルトだもんね。

 

 探査者だったりアドミニストレータだったり、果てはコマンドプロンプトだったりする俺ちゃんだけど。実はこうしてちゃーんと学生さんだったりもするのです。

 それを再認識したがゆえの感覚なのかもしれない。俺の姿を凝視してくる美女三人に、それこそ気後れ感を覚えつつも俺は、出来上がった四人分のたこ焼きを先輩さんから受け取るのだった。




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