攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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マスクデータが多すぎるのもどうなん?って話

 それなりに楽しく一人暮らしをしているらしいミュトスの生活について、話をしつつも粉モンを順当に食べ尽くした。

 当たり前だけどソースが濃くて大体美味しい。たまにあるような粉がダマになってたりとか、ベチャッと水っぽかったりもなくて作った学生さんの腕前が良かったのもあって概ね満足な昼食だったよ。

 

 さてそんなわけでいよいよ自由研究を拝みに美術室まで行くよ。正直俺としては別に、他にも見るところとか行くところとかあるんじゃないの? という感じではあるんだけれど。

 伝道師さんと使徒さんがね……俺ちゃんがサクッと作った自由研究、スキルについてのエトセトラを見たくて見たくて仕方ないとしきりに目を信仰に煌めかせて嘯いていらっしゃるので、ああこれは見ていただかなくては鎮まりませぬなと判断して案内しているのだ。

 

「スキルの進化、派生、あるいは統合……そうした現象は予てより確認されていましたし研究も行われていますが、具体的な結論やある種の定義づけ、区分わけについては国ごと、あるいは研究グループごとに意見が分かれがちなのが従来でした。しかし」

「世界を照らす一筋の光明こと公平様が、そうした状況にも手を差し伸べてくださいました。御方の深淵極まる叡智より一雫、我々に知ることを許されるだけの範囲であっても真実の一端を示してくださったのです……健気にも、そして謙虚にも自由研究という形でひっそりと、密やかな形で」

「我らが救世主山形公平様としては大事にしたくない、という意識ですらなく、そもそもそんなに話題にするようなことでもないという認識でいらっしゃるのはすでにヒアリング済みです。さすがの視座の高さですが、しかしだからこそ御方は誤解なさっているのです。御方のお示しなされた知識智慧こそは、未だ全貌見えぬ大ダンジョン時代を生きる我々にとってはまさしく天啓にも似た答えなのだと」

「えぇ……?」

「探査者としての見地を宗教家として語っているから、なんだかめちゃくちゃなノリになってますねえ」

 

 怖ぁ……廊下を歩いていると後ろから聞こえてくる狂信のやり取り。俺の自由研究の価値だ値打ちだ言ってるようだけど、あんなもんのそれがなんだという話なんですけどね実際。

 隣を歩くミュトスも感心するやらふにゃふにゃ笑うやらだけど、道行く人達がギョッと香苗さんと宥さんから目を逸らすのが恐ろしい。

 なんすか、目を合わせたら伝道されるっていうんすか。たぶん合ってるよそれはそう。

 

 ただ、香苗さんの言うような俺の誤解って箇所についてはちょっと気付かされることもある。

 今になって思えばたしかに、今回の研究のテーマそのものが結構、コマンドプロンプト的な視座の高さだった気がすると思わされるのだ。

 

 いくら探査者ったって一学生、研究者でもない俺なんかがしたり顔であれこれ推測の形で書いた、ってことでそんなに注目などされないでしょ! と高を括っていたんだけれど。

 見る人が見たら、変な興味と関心を抱かれない程度には真実を織り込んでいるのも事実なのだから、変な具体性とか真実味を帯びてしまっているところは、俺自身無意識ながらあるのかもしれない。

 ミュトスに、半ば相談するように話しかける。

 

「んん……あくまで学生探査者からの一つの意見というか妄想って体でいろいろ、たとえばまだ発現条件が明らかになってないスキルについてとかまとめたんだけどどうかな。もちろん真実だからってだからどうした程度の範疇でしかないけども」

「そうですねえ。私のなかにいらっしゃる"御三方"は、まあ別に良いんじゃない? みたいな反応してますよ。これまでを踏まえて、山形様と対になるあの方があまりに秘密主義すぎるのもありますから、山形様のほうが多少分かりづらい形でも詳らかにしたほうが良いかもしれないね、とか」

「マジか。ていうか彼らから見ても"ウチの"は秘密主義なんだな」

「経緯を考えれば仕方ないけど、とは仰ってますねえ。ただ、そこについてはあなた様の潜伏ぶりも大概だったよとは仰ってます」

 

 うーん、ぐうの音も出ない。ミュトスが言う"御三方"──彼女に宿り彼女の力となっているかつての三つのワールドプロセッサ達の言葉に俺は苦笑いを浮かべた。

 すなわち魔天、断獄、災海の三体だ。ミュトスを精霊知能として成立させているかのモノ達は、いわば俺にとっては同胞も同じ存在だ。

 そんな彼らから言われては、なるほどとうなずくしかないものね。

 

 しかして自由研究の内容自体には特に異論がないみたいでそこは助かるよ。いやちょっと待って? とか言われても今さらどうしようもないからね。

 うちの世界のワールドプロセッサが秘密主義なのは言わずもがななんだけど、そこの部分に対してバランスを取るという意味でも俺は多少、オープンにしても良いかもしれないってことなんだろう。

 そのへんの匙加減は自分で判断するとして、アドバイスをもらったことはとても勇気づけられるよ。

 

「はてさてもうじき美術室です。正味、期待に応えられるような大層なことを書いてはいませんがそこは勘弁してもらって──」

「おおっ! 来たわねシャイニング山形くん!!」

「なんぞ!?」

 

 そろそろ美術室だし、展示物を前にいっちょハードル下げてみるかーと予防線を張り始めようとした俺ちゃんを、まさかの誰かが呼びつけた。

 まさしくその美術室からの声だ。なんぞやなんぞや?




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