攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

1829 / 2050
おお、カオスカオス

 いきなり俺の名前を呼んでくる、その声の主は女性だった。

 白衣を身に纏った、保健室にいそうな出で立ちの女教師だ。丸眼鏡をかけて凛とした顔つきの大人の女性ながら、浮かべる笑みは不敵を超えて無邪気というか、やんちゃでわんぱくな子供を思わせる。

 

 それでいて黒髪ロングで前髪を切りそろえた、大和撫子って感じの髪型なのでいろいろギャップのある姿だよ。

 知っている顔だった。なんせうちの学校の先生で、しかも保健じゃなくて世界史の先生な方だからね。

 

 美術室は聞いていた通り夏休みの自由研究展示場として、壁や机に展示物が掲示されていて人もそれなりにいる。

 そんななかでもお構い無しに勢いよく声を張り上げた彼女に、俺はおずおずとその名を呼びかけて応えた。

 

「えーっと、丹波先生? あの、大声で僕の名前を呼ぶのはちょっと勘弁願えたらと……」

「あ、ごめんなさい。でも仕方ないのよ、あなたの自由研究内容があまりにも素晴らしかったものだから私の探査者を愛する心が燃え上がっちゃって! 素晴らしいわ実に素晴らしいのよシャイニング山形くん、さすがは大ダンジョン時代始まって以来の天才だわそして後ろの方々もまたとてつもないビッグネームね! もう、どれだけ私を虜にしたら気が済むの救世主くん!!」

「怖ぁ……」

 

 謎のポーズさえ決めながら、止めろって言ってるのになおも大声で昂る末期的探査者マニアが一人。

 世界史教師、丹波霞先生。その見目の麗しさとスタイルの良さでやたら男子人気が高いと言われている先生の一人だ。さやかちゃん先生とは同期だそうで、ちょくちょく行動をともにしては漫才みたいなやり取りを繰り広げている姿が目撃されている。

 

 そんな彼女だけど以前にも少し触れたと思うが、実のところとんでもない探査者フリークだったりする。

 特定個人の探査者とかでなく、そもそも探査者界隈とか業界そのもの、ひいては大ダンジョン時代特有の現象に対して極度に知的好奇心と情熱を抱き注いでいるマニアさんなのだ。

 

 何しろ未だ東クォーツ高校にはない探査者同好会を設立すべく現在奔走中で、その一環として俺や関口くんまで勢い込んでスカウトしに来たほどだからね。

 そんな丹波先生は俺と一緒に来た、香苗さんや宥さんやミュトスにも当然目をつけているみたいだ。

 顔を上気させ、恍惚とした表情で両手を頬に当てつつうっとりしているよ。

 

「ああ、なんてこと……最新にして国内11人目のS級探査者たる御堂香苗さんと国内大手インフルエンサー探査者である望月宥さんが一緒に歩いているなんて……! それにそちらの方は……」

「え? あ、えーとはろはろにゃちわ、ミュトスですー。有名じゃないですし新人ほやほやF級探査者ですけど、よろしくお願いしますー」

「そう……ミュトスさんと仰るのね素晴らしいわっ! また一人、無限の可能性を秘めた探査者がこの世に現れたということなのだから! 探査者一人一人の切磋琢磨、その積み重ねこそが大ダンジョン時代っ!! であれば、私は探査者マニアとして今からミュトスさんのファンですサインくださいっ!!」

「あいあいがってんさー! こんなこともあろーかと、調子に乗ってサインの練習していた甲斐がさっそくありました!」

「えぇ……?」

 

 何してんのミュトスちゃん。さすがにそのムーヴはお調子者すぎてあとから恥ずかしくなるやつだぞそれ!

 丹波先生の勢いは留まることを知らず、香苗さんや宥さんでさえ目を丸くしてきょとんとしている。狂信スイッチオンしてない時のこの人達、割と自分達のことは棚に上げてエキセントリックな他人に対して無垢な反応するよね……それは置いといて。

 

 かくかくしかじからんらんるー。ということで三人に丹波先生を軽く紹介する。探査者マニアで同好会まで作りたがっている、というところで得心したのか、香苗さんと宥さんはなるほどとうなずいているのがどこか印象深い。

 まさか先生の今しがたの言動、探査者マニアだったらありがちなのかな。そういうことならとお二人が、口々に丹波先生も交えてお話をされる。

 

「唐突な勢いに多少驚かされましたが、情熱のなせるものであればそういうこともあるでしょう。どうやら我らが救世主山形公平様にも注目しているようでマニアとしての目もたしかなようですね。はじめまして救世の光の伝道師、御堂香苗です」

「それこそカレチャのなかにもこのくらいの熱量の方はいますからね。よくキャンパス内で叫んでいたりしますし。同じくはじめまして、救世の光にて至高の救世主山形公平様を崇める使徒、望月宥です」

「さらさらさらりーまんっと! はいサインとか書いちゃいました、改めましてミュトスでーす! 一応私も救世の光の使徒やってまーすよろしくお願いします!」

「ご丁寧に痛み入ります御三方。改めて私は丹波霞、この東クォーツ高等学校において探査者を愛する一人のマニアです」

「怖ぁ……」

 

 お互いに社会的立場を弁えない自己紹介すぎるだろ。伝道師とか使徒の前に探査者なんだし、マニアの前に教師だろ!

 と、ツッコむ気力も正直持てない。明らかに目の前の四人、波長が合うのか仲良しオーラをすでに放ってるもの。

 

 これは……カオスじゃな?

 一人まともな俺ちゃんだけは、その姿を遠巻きに見つつも周囲の奇異の視線から必死に目を逸らすのだった。




【お知らせ】
「大ダンジョン時代クロニクル」
https://syosetu.org/novel/362785/
第二部・第二次モンスターハザード前編─北欧戦線1957─
完結しました!後編開始は2026/1/1の0時から!
よろしくお願いしますー

「大ダンジョン時代ヒストリア」100年史編完結!
https://syosetu.org/novel/333780/
よろしくお願いいたしますー

【お知らせ】
「攻略! 大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」コミカライズ発売中!
ぜひともみなさまお求めよろしくお願いしますー!

コミカライズ版スキルがポエミーも好評配信中!
下記URLからご覧いただけますのでよろしくお願いします!
 pash-up!様
 ( https://comicpash.jp/series/d2669e2447a32 )
 はじめ、pixivコミック様、ニコニコ漫画様にて閲覧いただけますー!
 
 加えて書籍版1巻、2巻も好評発売中です!
 ( https://pashbooks.jp/tax_series/poemy/ )
 よろしくお願いしますー!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。