攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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1000年後にも残ってたら大概のものが歴史的遺産になるよね

 それぞれ方向性は異なるながらも、よく似た性質の情熱を持つ者同士のようでよく息が合っている。というのが香苗さんと宥さん、そして丹波先生のやり取りから浮かんだ感想だ。

 それぞれ救世主がどうのこうの、探査者がどうのこうのとこだわりの強さを発揮しているんだけれど。そのへんが変に結びついちゃってるもんでおかしなシナジーを生み出しかねない相性の良さを感じるのだ。

 

「シャイニング山形くんの自由研究、これは実に素晴らしい! スキルについての極めて独特な、それでいて斬新かつどこか確信的な自信をも孕む内容はまさしくセンセーショナルというべきものでしょう! 伝道師や使徒である御堂さん達ももちろん、それが目当てでここまで来られたのでしょう?」

「ええもちろんですとも丹波先生話が早くて助かります仰るとおり我々は我々を救うために天空より舞い降りた神話伝説こと救世主山形公平様の書き記された聖典を拝見しに来たのです」

「御方がこの大ダンジョン時代のために書き記されたスキルについての思想と知識その哲学それこそが我々救世の光の求めるものですつきましてはよろしければぜひとも件の自由研究については展示終了後に当組織にて言い値で買い取らせていただければと思うのですが」

「あ、いえごめんなさい。それは私の一存ではさすがに……展示物については、文化祭終了後に製作者である山形くんにお返しする形になりますので、そういった交渉はやはり著作権所有者たる、山形くん本人とやり取りしていただければと思います」

「えぇ……?」

「いきなり先生モードになりましたねえ」

 

 挨拶がてらだぜ! と言わんばかりに句読点を投げつけた伝道師さんと使徒さんだけど、まさかのガチ対応を食らってしまっている。

 さすがに学生の提出物たる自由研究を、彼女の一存で買うだ売るだはできないだろうしね。至極もっともな言い分なんだけど、直前まで血圧高めのはしゃぎ方をしてたのがいきなりスンッ……てなるやん。

 

 ミュトスがほのぼのとした顔をしながらぼそっとつぶやくのに、俺も微妙な顔をしてうなずく。

 丹波先生、教職としては律儀で誠実でまっとうなんだな。探査者が絡むとテンションが振り切れるだけで。そういうところ、さやかちゃん先生と仲良しさんな理由も分かるよ。

 

 蓋し正論に押されて、香苗さんも宥さんも反論の余地なくすんなりとそれに応じる。

 まあ、こちらもこちらで潔いというか分の悪い主張はしないからね。そのへん、やはりこの人達も真面目なのだ。

 

「そうでしょうね。名残惜しくはありますが今日のところは拝見するだけにしておきましょう、使徒宥」

「ですね、伝道師香苗。それでは気持ちを切り替えて、さっそく救世主様直筆の自由研究を拝見いたしましょう!」

「ぜひともご覧ください、こちらになります!」

 

 デデン! と、別に自作でもないのに俺より盛り上げにかかってる丹波先生はそして、俺達にその展示物を見せた。

 見覚えしかない資料だ。方眼紙数枚にわたり描いた、スキルについての簡単な説明と進化、派生、統合についての紹介と推察──見る人が見れば分かる、真実の断片そのものについての記述。

 

 はい。これが俺ちゃんが夏休み終盤頃、首都圏行く前に作らなきゃとえっほえっほ言いながら友達と一緒に図書館行って書き上げたものになります。

 時間を開けてから見るとこう、我ながらそれなりのものができたって気になるなあ。正直間に合わせというか、セミの抜け殻適当に並べるよりかはマシだろくらいの気持ちで作ったんだけどなかなか、なかなか。

 

 案内されたそれを視界に入れるなり、香苗さんと宥さんはすぐさま動いた。おおっ! と感嘆の声をあげつつも近寄り、血眼も同然でそこに書かれた文章を食い入るように読み始めたのだ。

 怖ぁ……ガチの反応すぎて怖いよ! 隣りに立つミュトスに、苦笑いして話しかける。

 

「は、はは……えーとミュトス、見に行く? あの二人に並んで」

「いえいえ、不肖ミュトスは後から見させていただきますとも。しかしすごい勢いですねえ、さすがは伝道師さんと第一使徒さん。迫力が違います」

「迫力」

 

 ミュトスをして怯ませるほどの迫力を放つのか……改めて宗教の力ってすごいね! って感じだ。

 丹波先生も一歩下がって腕組みして何やらうなずいているのが不気味だ。道は違えど宿す情熱は同じ、みたいな分かりみを示しているのかな? 申しわけないけど僕には分かんないや。

 

 一応、校内は防犯の観点もありカメラによる撮影は原則禁止なんだけど、それがなければ今頃俺ちゃんの自由研究撮影大会まで開かれていたかもしれない。

 ほとんど聖遺物みたいな扱いしてるものね、あの二人。

 

「ああっ……! なんということ、文章一つ文字一つとっても救世主様の尊き御心を感じ取れます! 御方の知識哲学思想理念を今、我々は読み取っている……!!」

「信仰者としてももちろん、探査者としてもこれは、大いに値打ちのある資料ですね……! 自由研究としてこの文化祭での展示で終わりとさせては断じていけません! この資料こそは、後の1000年にまで伝えていかねばならない未来への遺産となり得ます!!」

「怖ぁ……」

 

 興奮に何やら叫ぶ極まったお二人が普通に怖い。そんなもん千年後も残ってたらさすがに嫌だよ、そして別に俺の理念とか思想とか哲学なんて込めてないよ。

 さっさと終わらせてみんなと遊ばなきゃえっほえっほくらいしか情念込めてなかったよ。

 

 ミュトスも隣でたはは……と頬を掻く異様な光景。しかして丹波先生だけは変に温かな眼差しで彼女らを見守っている。やはり腕組みしてだ。

 おう変なシンパシー感じるのやめてもろて。ツッコもうにもツッコむ気にもならない光景は、そうして暫しの間続くのだった。




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