攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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やっぱり若いツバメじゃないか!

 WSO統括理事、ソフィア・チェーホワのスピーチ──シークレットゲストの正体については校内全体にアナウンスされたのだろう。

 10分休憩の間に、ハミバのライブにも増して大勢の人がやって来るのが見えた。しかも学生さんよりかは来校者、大人が特に多い印象だ。

 

 学生的にはいくら有名人たって完全に政治方面の人だからね、ソフィアさん。

 真面目な話になることが確定しているスピーチなんてのに、楽しい文化祭でわざわざ出向くこともないってなものなんだろう。

 実際、ライブ終わりとともに退室した学生さんとかもちらほらいるしね。客層が入れ替わってる感じかな。

 

「まあ、校長先生の挨拶みたいなのをイメージすると……なんで文化祭でそんなもん聞かなきゃならんのかって思うのも正直理解できるなあ、俺としては。もちろん、ソフィアさんのお話を直接聞ける機会なんて滅多にないことなんだけどね」

「そうですねえ、不肖わたくしミュトスめといたしましても、楽しい盛り上がりの後に意義はあれど堅苦しいお話を聞くっていうのは何やらこう、一気に現実に引き戻されちゃいそうな気がするのはありますね」

「スピーチの内容が何によるかですけどー、どうしたって大ダンジョン時代がどうのこうのな話でしょうからねー。彼女自身の魅力でその場の人々の意識を傾けられはしても、そもそも興味ないなら今こうして退室しますよねー」

「ぶっちゃけハミバのライブで結構満足したぜェ」

 

 うちの精霊知能達と雑談がてら、年齢層がやけに高くなっていっている観客の構成を眺める。

 ソフィアさんもアイドル的な人気を誇っているのはたしかだけど、さすがに歌い踊るわけでなく真面目な話をされるとなるとこうもなるか。

 

 なんならどこから聞きつけたんだか、テレビ局なのか大仰なカメラまで入ってきてるのが見える。バッチリ放映する気だこれ、ローカルチャンネルだこれ。

 全国ネットの放送局らしい人達は見受けられないことから、まさか独占なのか? 地元だからと誰かが垂れ込んだか、たまたま別の用事で取材に来ていたのがこの場面に出くわしたか──まあどっちでも良いか。

 どうあれそんなローカル局の人達も何やらてんてこ舞で準備しているのが見えたのだった。

 

 そんなこんなしてるのを見ていると、いよいよ時間がやって来た。たぶん文化祭一日目における最後のプログラム、WSO統括理事その人によるスピーチだ。

 やはりアナウンスによる紹介が入り、そして彼女が登壇してくる。

 

『それでは、時間になりました。ただいまより本文化祭にお越しいただきましたシークレットゲスト、WSO統括理事ソフィア・チェーホワ氏によるスペシャルスピーチ──"大ダンジョン時代100年を迎えて"と題しましてお届けいただきます』

「………本物だ……! そっくりさんじゃ、ない」

「マジの、マジモンのソフィア・チェーホワだ……永遠の、探査者少女……」

「す、すごい存在感。み、見てるだけなのに鳥肌が」

 

 舞台裏からやって来るその姿を、見るだけで体育館内に静かな衝撃と半ば恍惚とした吐息が幾重にも重なる。本物特有というべきか、その美しさと存在感、カリスマ性がいきなり見る人々を圧倒したのだ。

 それは彼女が、政治家として世界を相手に戦うなかで培ってきたものでもあるし、元より持っていた素質が開花した結果でもあるのだろう。

 少なくともアドミニストレータ時代の彼女には、その片鱗こそあれどここまでの統率力などなかったからね。

 

 100年を費やし、今ある世界の形を創り上げた時代の象徴。いやさもはや彼女こそが大ダンジョン時代と言っても過言ではない、まさしく永遠の探査者少女。

 ──ソフィア・チェーホワ。穏やかな微笑みを浮かべる可憐なゴシックロリィタドレスの少女が、ウェーブがかった金髪を靡かせ、マイクの前でお辞儀をした。愛らしくもカッコいい、慣れた所作だった。

 

『──みなさま、はじめまして。ただいまご紹介に預かりました、WSO統括理事ソフィア・チェーホワです。この度はここ、東クォーツ高等学校文化祭のシークレットゲストとしてお招きいただき、まことにありがとうございます』

 

 温かくも凛とした声。少女の声帯にも成熟した大人の色を乗せたその音は、マイクによって拡大されて人々の耳朶を心地よく打つ。

 何より丁寧で柔らかなのに、込められた芯の強さたるや! 力ある言葉、力ある声とはこうなのだと言わんばかりのよく通っている。

 

 これには人々も、戸惑いや困惑、感激、感動あるいは驚愕といった乱れの感情を一旦、落ち着かせざるを得ない。

 世界的カリスマの力か、これが……名乗りと挨拶の第一声でさっそく、自身の声に耳を傾けさせることに成功したぞ。心地よい静けさが場を包むなか、彼女はさらに続けて言った。

 

『この東クォーツ高校には、私の友人たる探査者の少年が在籍しています。その縁もあり、元より来訪させていただくつもりではいましたが……学校からスピーチの打診が来まして、そういうことであればと私のほうもぜひとお願いしました』

「探査者の少年……やはり……」

「シャイニング山形、よね、やっぱり……」

『前途洋々たる若い方々やその親類縁者のみなさまに向け、拙いながらも想いを直に伝える機会をいただけたこと、学校関係者の方々と友人探査者・山形公平様に深く感謝いたします。ありがとうございます』

「えぇ……?」

 

 にわかにヒソヒソとしたやり取りが起きる。そうだね、友人たる探査者少年についてだね。

 なんなら近くにいる人達はチラチラ俺を見てくるよ、わぁ針の筵。

 

 しかもソフィアさんも思い切り名前出してくれてるし、何してんの?

 ニッコリ笑ってこっちに視線をよこして、チラッとだけおちゃめに舌を出して笑ってるけど誤魔化されないぞー、俺は!




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