攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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塵も積もれば山となる。縁も紡げば世界となる

 さっそくかましてきたソフィアさんのお陰で、俺に多少の注目が集まってしまっている。

 世に100年とその名轟くWSO統括理事の友人、それが俺ちゃんこと山形公平くん16歳だと大々的に言っちゃったのだ。

 

 おお、なんてこと。ラノベを読んでいたりするとこういうの美味しい展開だよなーと思うことしきりだったんだけど、いざ自分の身に降りかかるともはや緊張と不安と羞恥しか湧き上がらない。

 すまなかった数多のラノベヒーロー達、俺はあなた方がなんかやっちゃいました感出すのを無邪気に面白がっていたけどとんでもない話だったわこれ、怖ぁ……

 

「週刊誌とかでさんざん載ってたから有名な話だったけど、あのシャイニングってマジでチェーホワ統括理事の友達なのか……」

「人脈おかしいだろあいつだけ……何があるんだ? 同じ探査者でも、久志に比べたらまるで普通のツラなのに」

「やっぱハーレム救世主ってんだから、ソフィアさんともキャッキャウフフムーチョムーチョしてるんだろうか……はうう、僕が先に好きだったのにぃ」

「ふーん、羞恥に震える姿が小動物みたいで愛らしいじゃん」

 

 衆目とともに口さがないあれやこれやまで聞こえてくる始末。ハーレム救世主ネタと織り交ぜてソフィアさんとのいかがわしい妄想に耽った挙げ句脳破壊されるの止めろや!! いや、実在する人物でそういうの本当良くないよ?

 あと関口くんと比較しないで、彼のルックス持ち出されたら俺なんてほんとに月とすっぽんでしかないから。それはルール違反だから。

 

 にわかにざわめく聴衆。しかしてやはり、すぐに落ち着いてソフィアさんのほうに視線を戻すのは、世界一の人が何を言い出すのかという期待の表れとカリスマに惹かれてのものか。

 やはりたおやかに微笑む彼女は、そうして続けてスピーチを始めた。

 

『ともあれ、そのような縁もあり本日、みなさまの前でスピーチをさせていただくことになりました。何を話すのか、につきましては、ざっくり言うならばやはりこうなるでしょう──大ダンジョン時代100年を迎えて、これまでの総括とこれからの期待についてと。不肖ながらここに至るまで常に先陣を切った身として、これについては昨今、話す機会が多い事柄です』

「何年か前あたりから、この手の話をする機会はたしかに多いねえ、あの人。まあ100年まるごと最前線にいたのがあの人なんだから、そればっかりは世間も余人にゃ聞けんからねえ」

「ハッハッハー、エリスさんでも無理だねー。レベッカさんが生きてればワンチャンあったろうけど、もう10年以上も前にねー」

「あの婆様なら、100で死ぬどころか1000年生きてもまだ死なねえかと若い頃は思ってたんですけどね。ファファファ、寄る年波にゃ勝てません」

 

 ソフィアさんの言葉が響く体育館のなか、小声でエリスさんとマリーさんが会話する。これまでとこれから──大ダンジョン時代も100周年を迎えた今、どうしても世間が彼女に聞きたいのはそこの部分らしい。

 何やらレベッカさんという方の、共通の知人だったらしい方についてお話されているね。これは以前に何度かお聞きした、マリーさんの先代の特別理事だったというレベッカ・ウェインさんのことだろう。

 

 なんでも若い頃には北欧最強とまで言われた凄腕の探査者で、ソフィアさんとヴァールさんを最初期から支えてくれた盟友なんだとか。

 その上、第一次モンスターハザードではリンちゃんの始祖であるシェン・カーンさんと共闘し、第二次モンスターハザードでもエリスさんやロナルドさんのお婆さん、シモーネ・エミールさんと肩を並べたという歴戦の探査者だったそうだよ。

 

 そんな華々しい活躍の後、引退されてからはWSOの特別理事として政治方面でも精力的だったけど、まだ俺が小さい頃に100歳で亡くなられたのか。

 どこかしみじみと、しかし楽しげに故人を語るお二人の眼差しは優しい。素敵な、お人だったんだろうね。

 

『──100年。言葉にすれば短いですが、この年月のなかで起きたことは数知れず、得たものも多ければ失われたものも多い月日でした。今まさにその最先端にあるこの世が、いくつかの騒乱を経つつもなお壮健に維持されているのは、端的に言って、ここに至るまでに生まれ育ち生きてきた、ありとあらゆる生命の営為の賜物であると信じています』

 

 呼応したわけでもないだろうけど、ソフィアさんもまたどこか、遠いところを見つめてスピーチをしている。浮かぶ情景はこれまでの100年の断片か。

 決して彼女一人や、あるいは彼女の周辺人物だけで続けられる年月ではなく、構築できる社会ではない。あらゆる場所、あらゆる時に生きたあらゆる人々の、生きるための行い──その積み重ねこそが大ダンジョン時代の100年だ。

 

『様々なことがありました。世界的な事件も、局地的な事件も。あるいは個人個人にも大小問わず様々なことが起きましたし、今もそれは変わりません。大仰に言うところの時代であったり社会であったりは、そうしたものの集合体というのが本質なのかもしれません。良いことも悪いことも、それらすべてが寄り集まってできるひとまとまり。それを我々は、"世界"と呼ぶのではないかと最近では考えております』

 

 良いことも悪いことも、そのすべてが結果として今につながっていた。そう語るソフィアさんの眼差しは強く、優しくそして儚い。

 楽しいこともあったし、辛いこともあったろう。それは彼女がこうなる前、未だアドミニストレータだった頃からもそうだ。悲喜交交が生命で、その集合体が社会であって、それが連なって重なるのが世界であったり時代であるんだろう。




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