攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ソフィアが引退すればハオランが家から外に出される(諺風)

「とんでもないことになった……!! おいすぐに局に連絡して速報流せ!! WSO統括理事、引退宣言ってな!!」

「もうしてます! スクープどころの話じゃない、なんとしてでも一刻も早く世界に広めないと、俺達がテレビ屋やってる甲斐がなくなる!!」

「この場にいる大勢の客達もすぐにSNSで挙げるだろうが、ネットやらねえ連中にも伝えるとなるとやっぱり俺らが一等良いからな! マスメディアの社会的義務だ、ここで果たせにゃ今後一生報道に携わる資格はないぜ!! 行くぞッ!!」

「怖ぁ……」

 

 スピーチを終えて、戸惑いながらも万雷の拍手でソフィアさんの降壇を見送った直後。ざわめきのなかで一際大声で叫び機材を撤収するテレビ局の人達を見て、俺は呻いた。

 ものすごい形相してる。特ダネにありついたぜ! みたいな興奮ではなく、まるで死地に赴く戦士のような誇りと気高さ、それと裏腹の恐怖と緊張に彩られた顔だ。

 

 やりとりから察するに、彼女の突然の引退宣言を可及的速やかに世界に発信することは、自分達の権利や利益をも越えた社会的正義とか義務だと確信しているみたい。

 やりたいからやる、とかじゃなくてやらなければ終わる。そういう類の極めて重大なニュースだと判断したんだね。

 そしてたぶん、その判断は正しいものだろう。仲間達も語る。

 

「はっはっはー! テレビ屋さん達もてんやわんやですね、お気持ちお察ししまーす!」

「と、統括理事が引退宣言したんだもんなあ……全然関係ない俺だって動揺しちまった。もう知ってた話なんだけど、やっぱショックだわ」

「冗談抜きに、世界を動かしてきた人ですからね。学のない俺でも、今の引退宣言がしばらく世界を揺るがすってのは分かる話です」

 

 葵さんがテレビ局の人達を見て共感し、父ちゃんもしみじみと胸中を語り、神奈川さんもそれに同意する。

 共通するのはやはり、ソフィア・チェーホワという人物が世界にとって、社会にとって極めて強く存在感を放ち続けている巨人であるという意識だ。他の聴衆のみなさんも同じ思いだからこそ混乱しているわけであり、もはや社会通念レベルで浸透していると言えるのだろう。

 

 100年の節目に、とうとう時代が変革しようとしている。

 そのきっかけが東クォーツ高校での文化祭にて起こされたってのはなんていうか、ある種ソフィアさんらしい茶目っ気めいたものをも感じさせるけど……

 これは今後相当、各所が騒ぎ出すんだろうなあ。

 

「ソフィア様……シェン一族の始祖カーンとも盟約を交わされた方が、辞める。きっとシェンにも影響あるはず。兄ちゃんはまあ、気にしないけど」

「そ、そうなんですかリンリンー? お兄さんって夏頃に見かけた人ですよねー」

「うん、イケメンだけど中身は引きこもりのゲーマー。兄ちゃん、次の里長やることに決まってるからもうちょいちゃんとしてほしい……でも、異次元の天才だから仕方ないかも。アレはちょっと、ホントに突き抜けすぎてて理解できない」

 

 ソフィアさんともそれこそ、100年に亘る関係を持つシェン一族の末裔たるリンちゃんも静かにつぶやく。主に次期里長らしいお兄さん、ハオランさんについてだけど。

 反応したリーベが言うように、彼とは夏休み入ってすぐにお会いしてそのまま意気投合した。関口くんをも超える世界的イケメンなのを差し引いてもあまりにも陰キャオタク度が高すぎて、逆に仲良くなったのだ。

 

 お陰様で今でも全然頻繁に連絡取って、時折ゲームも一緒にする仲ですらあるハオランさんだけど。

 実はあの人、リンちゃんをして異次元とまで言わしめるほどの天才でかつ、次のシェン一族を背負い立つ次期里長なのだ。

 同じく夏頃に彼を見かけた、地味に人を見る目があるベナウィさんも所感を語る。

 

「ミス・フェイリンにそこまで言わせるとはすごいですね。たしかに以前お見かけした時には、甘いルックスの裏に底知れないものを感じられましたが」

「もはや星界拳士ですらない。むしろあの人こそ星界拳そのもの……って言っちゃうくらい、無茶苦茶。レベルの関係もあって私のほうが強いのは間違いないけど、それでも里長として一族を率いていけるのは、私じゃなくて兄ちゃん。一族の者、誰もがそれを知っている……兄ちゃん以外は」

「ふむ……フェイリン殿がそこまで言うとは興味深い。シェン・ハオラン殿、叶うことなら一度お会いして、ぜひともその功夫を見させていただきたいものだな。一武闘家として、そう思わずにはいられない」

「たぶんそのうち、業を煮やした父ちゃんから世界見てこいとかって言われて渋々日本とかに来るかも知れませんから、風間先生にはその時お伝えします! きっと兄ちゃんも先生の武に、いっぱい感銘受けるはず!」

「そ、そうか。それは楽しみだ、としておくべきか。はたまたハオラン殿の苦労を偲ぶべきか……」

 

 えぇ……? しれっとハオランさんに危機が訪れようとしている。家の外に出たくない人を無理矢理世界漫遊に出かけさせるの止めたげてよお!

 でも次の指導者になろうって人なら、どうしてもそういう経験も必要なのかもしれない。ハオランさんの才能を褒めちぎるリンちゃんに武術家としての興味を沸かせたサウダーデさんも、どう反応したものかと困ってらっしゃるよ。

 

 悲喜交交と言ったところか。あちらこちらでソフィアさん引退を受けていろんな言葉や感情が交わされている。

 東クォーツ高校文化祭一日目は、とんでもない喧騒とともにこうして幕を下ろすのだった。




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