攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ガチャ運マウントは絶対に許さない。絶対にだ

 いろいろあった一日も終えて、山形家に帰宅してしばしの休息。学校でも会った家族達からも改めて労われつつ、俺はいつものようにアイを伴いお風呂に入った。

 身体をしっかり清めてから湯船に浸かれば、アイも湯桶に張ったお湯にどっぷり浸かって気持ちよさそうにきゅうきゅう鳴いている。

 

 余談だけどこの子とお風呂に入る権利は基本的に輪番制で、特に俺と優子ちゃん、母ちゃんが頻度高めにご一緒している。

 父ちゃんやリーベ、シャーリヒッタはたまにって感じだね。もちろんみんなアイのことはかわいい家族として接してるんだけど、とりわけ優子ちゃんと母ちゃんが猫可愛がりしているがゆえの偏り方と言えるだろう。

 俺についてはアイのほうがねだってくるので、その都合だね……お陰で妹様と母様からの妬みを買いがちなのもまあ、御愛嬌ってやつかね。

 

「きゅう……きゅう……」

「今日は織田さんのお宅でお世話になってたけど、良い子にしてたみたいだな。特に織田とオノスケリスがべた褒めしてたぞ、うちの神話圏にも欲しいレベルってさ」

「きゅ? きゅう〜!」

 

 そんなアイちゃんだけど今日、文化祭の都合で家族みんなが出払ったため、ひとまず織田に預かってもらっていたりした。

 WSO公式マスコットとして概ね世間にその存在を周知され、割と好意的に受け入れられつつあるわけだけど、さすがに自由外出はまだ時期尚早だからね。

 あらかじめアポイントメントを取った上で、ワームホールを介して北欧神話圏の方にお世話いただいたのだ。

 

 その結果特に問題なく、アイも良い子にして過ごしていたみたいだ。こちらにこの子を返してもらう時、織田とその場に居合わせていたオノスケリスがかなりべた褒めしていたのが地味に嬉しい。

 愛らしく、素直でしかも賢い。そんなミニチュア・ドラゴンに最高神も悪魔も首ったけだったんだね。

 

 

『見た目はともかく私的には、言葉を解し意思疎通が可能なモンスターというところが実に気に入りました。餞別がてら、いくらかルーンで祝福をも施しておいたくらいにはね』

『オノスケリスちゃん的にもこんなかわいいぬいぐるみみたいな子、普通に大好きなんですけど! なんなら契約してなんかしてあげたいくらいなんですけど、でもさすがにそれするとこの子に良くないと思うからしないんですけど……八つ当たりがてらシャイニング山形に新規SSR見せつけるんですけど! おりゃっ喰らえガチャ運クソ雑魚ナメクジ!!』

『止めろや!!』

 

 

 ルーン魔術ってやつかな? なんか祝福を施したらしくて権能による防壁が、たしかに今現在もアイを守っていたりするのは確認できる。

 まったく害のない、むしろ幸運と好意を引き寄せやすくなる類のものだ……ありがたい話だよ、北欧大神オーディンによるガチな加護を授かったんだ、この子は。

 

 あとオノスケリスもなんかしてあげたがっていたけど、悪魔の加護は強力ながらリスクも伴いがちだもんで自重してくれていた。

 そのへん、生意気な割には分別あるのがさすが太古からの悪魔って感じだよね。でも八つ当たりとして俺にソシャゲで今やってるイベントのSSRを見せつけてきたのは許さない。絶対に許さない。

 

「ま、何はどうあれアイ」

「きゅう?」

「……お前はたくさんの人に愛されて生きていけるよ。最初は正直、ちょっと不安だったけど今なら確信できる。だからお前も周囲の人達を愛して、大事にしてあげてほしい。想うことと想われることは、きっとどちらも同じくらい大切だからさ」

「……きゅっ!」

 

 アイを迎えた当時は不安だった。この子がいつか独り立ちする時、世界から爪弾きにされたままだとしたら不幸な末路を迎えるのではないかと。

 たとえ無害でも優しくても可愛くても、それでもこの子は結局モンスターだからね。世間がそれを理由にアイを迫害するのではないかという思いから、せめて俺が生きている間はどうにか基盤を整えられないかと考えていたりもした。

 

 だけど、この様子ならきっと心配いらない。世界は俺が思うよりずっと優しくて温かで、最高神直々にも祝福を授けてさえくれているんだ。

 WSO公式マスコットとしての地位も確立しつつあるそんなこの子が、早々悪意ばかりに晒されることもきっとないと……そう思えてきたんだよ。

 

 もちろん、アイのほうからも世界を愛し想うことだって大事だし、そこはしっかり伝えておくけどね。

 愛情や優しさは、受け取るばかりではそれも良くない。受け取ったならば受け取ったなりに、こちらからもお返しするのはそれこそ世の道理だ。

 大丈夫、アイならできる。たくさんの人に愛されて、たくさんの人を愛して生きていける。

 

「すくすくと育つんだぞ、アイ。健やかに、優しく逞しく」

「きゅう! きゅう〜」

 

 俺の言葉と眼差しに、アイは真面目な様子で強くうなずき答えた。やはり賢い子だ、俺の想いを受け取って、それに真摯に応えようとしてくれている。

 そろそろ身体もしっかり温まった、アイを伴い風呂から出る。今はまだ小さいこの子の、全身潤った水気をタオルでしっかりと拭き取る。

 

 誰もが成長するし、アイももちろん成長する。

 遠い未来、きっとこの子も大人というか成体になる日だって来るだろう。その時のためにも、今はこうして俺達みんなで見守っていってあげたいな。




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