攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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メタモルフォーゼ!ロナルド・エミール

「さてさて、俺もちょっとは働こうかねっと……山形くんと御堂さんはこのまま休んでてよ、さっきまでは二人に任せてたからね」

「分かりました、ロナルドさん」

「ご武運を」

 

 サウダーデさんとリンちゃんが最前線で暴れ倒すなか、後方で俺や香苗さんと話し込んでいたロナルドさんも一歩前に踏み出した。

 見ればリッチナイトの取り巻き、いくらかが難を逃れてこちらを見ている。あのお二人とやり合ったら確定で負けるから、今度はこちらに目をつけたのかな。

 

 ここに至るまでの100部屋、そのいずれもで戦闘はあったけどその都度、俺達はいろんな組み合わせで戦ってきた。

 みんなで、一人で、複数人で……普段にはないメンバーでの探査だからこそ、お互いに学び高め合うために様々なパターンでのバトルを試していたんだね。

 

 今回も例に漏れずそうで、直前の戦いでは主に俺と香苗さんがコンビでサクッと敵を倒していた。

 だからこそ今度は前に出ているお二人、そしてロナルドさんが受け持つというのだ。涼やかな顔で、彼が語る。

 

「いやはや、知ってはいたけど世界は広い。俺のスキルばかりかこの"能力"をもってしてもまだまだ、届きそうにないような化物新人がいてくれるなんてさ。励みというか、慰みというか」

「いえ、そんなこと……ロナルドさんにそう言われると、どう反応して良いのか」

「ごめんごめん。困らせるつもりはないんだけど、本音なんだよなこれが。俺もこんなんでもまだまだ、世のなかじゃ知れたもんだって示してくれる若い世代ってやつがさ、いてくれるんだぜってガキの頃の俺に教えてやりたいくらいなんだ」

 

 淡く、それでいて心底から嬉しそうに笑うロナルドさんの、全身から噴き出す力の奔流。

 それはスキルのエネルギーではない……もっと異質で、もっとおぞましく、もっと哀しいもの。本来の人間には決して備わっていてはいけない、あってはならない力。

 

 この私、コマンドプロンプトをもってしても想定を越えてしまっているモノ。因果から完全に切り離された彼の力が今、発動する。

 25年前の第七次モンスターハザードにおける大英雄ロナルド・エミールの、AMWと並ぶもう一つの武器。

 

 "改造兵器人間"。

 人間の身体にモンスターの因子を組み込んだ狂気の実験の成功例たる彼の、異能だ。

 

「────メタモルフォーゼ」

 

 瞬間、ロナルドさんはまさしく変身した。その身に宿したモンスターの因子が、覚醒したのだ。

 両腕が隆起し、それまでの倍近くの太さと長さになる。爪も大きく鋭く伸び、地面をも溶かす毒液を先端から滴らせている。

 背中からは翼が生えた。漆黒の、烏を思わせる濡れた色のそれが大きく羽ばたく。腕と背中の変異に耐えきれず、上半身の服が弾け飛んだ。

 

 そして……その顔も、また。

 額の両端から禍々しい、ヘラジカのように分岐する角が二本飛び出た。そして眉間からは三つ目の眼球がぞるりと浮き出る。顎も肥大化し、左右二つに裂けて開く。

 まるで、まるで人間にモンスターの要素を混ぜ込んだような姿。いや、まさにそうなのだ。実際に混ぜ合わせた結果がこの、ロナルドさんの姿なのだ。

 

 顔と、上半身を紛うことなきモンスターのソレへと変質させて。

 彼は、こともなげに俺達へと丸太よりも太く長く変貌した右腕を軽々と挙げてみせた。姿形は変わっても、先ほどと変わらない気さくなお兄さんのままの心と笑顔と言葉で。

 

「よーし、じゃあ行ってくるね、っと。おいおい、ハンマーナックル」

「ごぎぇ!?」

「挨拶する間くらい寄越せっての、半分同胞。ショベルクロー」

「ぴぎゃがーっ!?」

 

 ──その間にも迫ってきたモンスターに、彼は即応して動いた。振り向いては巨木めいた右腕の、巨岩めいた拳で一体の顔面を横殴りに粉砕し。

 左手の、腕ほどに伸びた毒爪でさらにもう一体を引き裂いたのだ。

 

 どちらも目を見張るほどのスピードとパワーだ。重厚なフォルムからは想像できないほどに、変身したロナルドさんの動きは軽やかかつ力強い。

 このダンジョンで初めて、彼の改造兵器人間としてのお力を拝見したわけだけど……見た目の惨憺さはともかくとして、完全にそれを制御しきっている彼の強さはすさまじいものだ。

 

 近接戦闘という括りにおいてはさすがに、サウダーデさんには譲るだろうけど。それでも今のリンちゃん相手にも打ち勝ってしまいかねないほどの肉体を誇っている。

 しかもそこに《氷魔法》まで加わるからね。モンスターの力を引き出しながらでも、彼はスキルを使えるんだ。

 

「《氷魔法》、ポンゴラ・アイスエイジ。サウダーデさんとフェイリンさんのサポートもこなすぜ……凍れ、同胞よ」

「ぐぎょあああああ、ああああ、あああ、ああ……あ……?」

「もけけけけ! もけ、け……もけ」

「……《氷魔法》で、モンスターだけを的確に狙ってその動きから熱を奪い取る。とんでもない制御力です。魔法シリーズのスキルで出来得る限界に、ロナルドさんは至っている」

「あの制御の精度、そして深度……勉強になります」

 

 彼が能力を発動した途端、室内のモンスターの動きが目に見えて悪くなっていき、ついには停止した。

 《氷魔法》の熟達の極地。彼は今、モンスターにのみ的を絞ってその動きの熱量を奪い取ったのだ。だから敵は動けない、動くために必要な箇所を、凍らされているから。

 

 とてつもない技量だ。特に制御力については、システム側が想定している範囲ギリギリまで至っている。

 香苗さんも見習うべきと具に観察しているほどだ。豪快かつ異質なモンスターの能力と、精緻かつ正道を極めたオペレーターの能力と。

 この二つの柱が、ロナルド・エミールという探査者の強みなんだね。




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