攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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空間転移系こそ大ダンジョン時代一番のチート、かも?

 その後もダンジョンを快調に探査していって、最奥の一つ手前、141部屋をも踏破した。時刻も14時過ぎと予定していたよりいくらか早い。

 そもそも一般的にはこの規模のダンジョンを6時間7時間ほどで踏破するなんて通常、考えられないことだからね。普通はさすがにキャンプ道具持ち込んで二、三日はかけるくらいが平均値だ。

 何しろ帰りもあるからね。俺はそのへん、空間転移で完全オミットできるけど。

 

「素晴らしいスピードだな……ギネス級と言ってもいいのかもしれん。ああいや、実際にはまだまだ速度的には上がいるが」

「はい! ダンジョンRTA勢ならもっと早い人もいると思います、あのリアリスティー・トップスピードなんてA級ダンジョン75階層453部屋を11時間13分で踏破してみせた記録があります! アレこそまさしくギネス! です!!」

「く、詳しいですね……そして何をしているのですか、彼女は……」

 

 怖ぁ……探査速度についての話になった途端、やはりというべきか話題に上がるトップランナー、リアリスティー・トップスピードことリスティ・セーデルグレンさんについてリンちゃんが早口だ。

 この子とシャルロットさん、セーデルグレンさんガチ勢なんだもんなあどうも。記録を暗誦してみせたあたりからもそれは伺えるね。

 

 しかしとんでもないな、453部屋を11時間ちょっとで踏破とは。ざっと一部屋1分半くらいのペースを、ずっと維持し続けてやっとこそんなもんだぞ。

 前からあの人とお知り合いな香苗さんまでご存知なかったのか、唖然として呆れた様子だ。同じくS級探査者であるサウダーデさんやロナルドさんも、具体的に示された記録に愕然としつつも感心している。

 

「ううむ、世界は広い……! ダンジョン踏破の最速記録を追求する彼らRTA勢は、実のところ技術的や実力的にも相当高度なプロフェッショナル集団でもある。俺も最近では時折動画など見て、学ぶべきものを学ばせてもらっているよ」

「フェイリンさんみたいなガチさでもないし、サウダーデさんほど研究熱心でもないけど俺もたまに見るなあ、RTA。主にネタ動画とかばかりだけど」

「ネタ動画」

「基本的にはみんな速度最優先なんだけどさ。なかにはやっぱりうっかりミスとか突然のランダム要素によるアクシデントとかあったりして、それがなんでか大体ネタ的に面白かったりするんだよ」

「忘れ物とか、前準備とか打ち合わせと突然違う行動を取ったりとか、なんならモンスターの弱点を土壇場で忘れて阿鼻叫喚とか。あ、そもそも入るダンジョンを間違えて絶叫とかもある! そういうのも私、好き!」

「えぇ……?」

 

 なんてこった、RTAに笑いの神が降臨している、のか?

 洒落にならないミスによる、いわゆる走者のリアクションがネタ扱いされているようでロナルドさんもだけど、リンちゃんもそういうの好きらしい。

 

 普通に命懸けの状況でそんなうっかりすることある? みたいな話だけど、そもそもダンジョンでタイムアタック競技をしていること自体が危険極まりないと言えちゃうので、そこはそういうものなんだろうとするしかない。

 いや、それにしたって入るダンジョン間違えてるのはだいぶヤバいけど。ベナウィさんでもそんなことしないと思うよ、さすがに。

 

 RTAもいろいろ歴史の変遷がー、みたいなマニアックな講釈をリンちゃんがテンション高めにしてくるのを、みんなで微笑ましく思いつつも最奥へ。

 これだけの規模のダンジョンでも、変わらずど真ん中に立つ柱とそこに埋め込まれたコアは変わらない。近寄っていってそれを手に取りもぎ取る。

 

 これで後は、ダンジョンから出たら探査完了だ。長丁場と言えば長丁場だったけど、朝から昼過ぎまでなのでまあまあ適度な運動くらいのものだったろう。

 空間転移して帰ろうかね。ワームホールを展開する。

 

「開け扉──と。じゃあここ潜ったら1階層一部屋目に辿り着きます。みなさんお疲れ様でしたー」

「……ううむ。相変わらずこれが一番の規格外だな、公平殿は。どれだけ深いダンジョンの奥底からでも、ものの一秒とてかけずに初期地点に戻れるとは」

「ヴァールさんの空間転移と同じやつだけど、ダンジョンで使うと改めてヤバさが分かるなあ。正直太平洋ダンジョンの探査でこの能力を持つ探査者がいたら、その人を巡ってあらゆるクランによる争奪戦が起こりかねないよ」

「そんなにですか!?」

「何しろ底がないダンジョンだからね。しかもモンスターのリポップも早くて、行き来の度にそれを屠っていかないといけない。やり方もいろいろ編み出してるけど、この能力があるならそのへん全部クリアできるんだからすごいよ」

「聞きしに勝る魔境ですね……」

 

 太平洋ダンジョンの現実から、そこで探査を行っている人達からするとこの空間転移、まさしく垂涎ものの力のようだ。

 サウダーデさんも特に否定しないあたり、ロナルドさんの仰ることは冗談でないのはもちろんのこと、決して誇張とかでもないんだろう。

 

 まあ帰りに便利なのは間違いないからね、これ。ワームホールがなければ俺だってそもそも今回みたいな長丁場の探査はまだしてないだろうしさ。

 改めて空間転移ってのがある意味、探査者界隈における一番のバランスブレイカーなのかもしれない……そんな実感を抱きつつ俺達は、そうしてダンジョンから帰還するのだった。




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