攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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すべての酒飲みはマリアベールを反面教師とすべし(ヴァール談)

 ヴァールの護衛として同行してくれることになった、最新にして現状唯一無二の精霊知能、神奈川千尋さんとステラ。

 一応前もっての連絡は受けていたものの、二人だって新生活とかあるだろうにお付き合いいただいてありがたいったらない。

 

 何しろ神奈川さんはステラと融合したことで晴れて正式なオペレータとなり、スキル《星明りの聖剣》を取得したからね。

 それに伴い探査者登録を済ませ、今は新規探査者教育を受けている最中なんだとか。つまり普通にお忙しいわけ。

 そういうところもあって感謝の念を述べると、二人とも恐縮しきりに応えてくれた。

 

「山形さんやヴァールさんの力になれるなら、どこにいたってすっ飛んできますよもちろん。それがステラとともに生きていく俺の、新しい存在意義であり使命なんだと理解しています」

『もちろん私もです、山形様。千尋との新生活はまるで夢のようですけど、それに溺れて自分達の責務を放棄する気はありません。いつでもいかようにもお使いください、私と千尋は二人で一つ、ゆえにどんなことでも二人で挑み続けます』

「そ、そう気負わずに……少なくとも今日は気楽な訪問なんですから。な、ヴァール」

「うむ。意気込みや姿勢は素晴らしいが、肩の力の入れどころ抜きどころは考えていくべきだな。特に神奈川は、これから永い永い旅路になるのだから」

「肝に銘じます」

 

 うーん、真面目だあ。パッと見ヴィジュアル系イケメンっぽすぎて怖いくらいの神奈川さんだけど、その内面はどこまでも誠実かつ真摯な生真面目さんだ。

 偶然から手にした聖剣の力やステラの存在を、一切悪用せずむしろ責任感から一年もの間サークル相手に孤軍奮闘し続けた人だものな。言っちゃうと筋金入りってやつだ、この人ほど覚悟の決まってる人もそうそういないんじゃないかとさえ思う。

 

 そんな彼に寄り添うステラも、今や立派なヤンがデレっとなりかけてそうな神奈川さんガチ恋なんだけども。それはそれとして精霊知能としての在り方と使命には殉ずるつもりでいてくれるみたいなのであんまり心配はしていない。

 とはいえ、二人ともこの場この状況だと気負い過ぎだけどね。ミュトス宅にお邪魔するだけのことに使命も何もあったもんじゃないんだし。

 

 ヴァールともどもそこは言い含めておいて、とりあえず出発する。切符を買って改札を抜けてホームへ、ぼちぼち電車が来る頃合い──お、見えてきた。

 やって来る電車に乗って、いよいよ隣県へ。そしたら一旦土産物屋に行って、アレコレ買ったら今度はその駅からうちの県の別路線、県西方面へ向かう電車に乗るのだ。

 

 電車内は時間的に人も少なめで、たまたま四人がけシートが空いていたので座る。一人あぶれるから俺が立って神奈川さんに座ってもらおうとしたんだけど、そこは固辞されてしまった。

 ともあれ傍に立つ彼やステラにも含めてそのあたりの予定を話しつつ、補足説明する。

 

「ちなみに帰りは、ミュトスの家から最寄りのローカル線を使えば乗り継ぎせずに帰れるしそっちを使おう。今、隣県を経由しているのは結局のところ手土産を調達するためだしね」

「そうだな、それが良い。しかしミュトスの新居か……彼女を初めて案内する際に立ち寄っているがあれから半月ほどか? どのようになっているのやら、よもやゴミ屋敷にはなっていないと信じるが」

「あ、そこはご心配なくー。ミュトスちゃん普通に生活力高くって、何度か立ち寄ってますけどいわゆる家事関係は問題なくこなせてますねー」

「なんなら料理とかもうまくてビックリしたぜェ……なんでも元いたところでも、たまに人里に忍び込んでは酒場に行ったりしてるうちに自分でも作るようになったとかって話だぜ」

「えぇ……?」

 

 漏れ出るミュトスのライフスタイル、特に問題なくやれてそうなのは良いけど過去の異世界時代の話も耳にして戸惑う。

 彼女が元いた世界は魔天世界だったと記憶しているけれど、ずいぶんその、概念存在と現世領域の距離感が近い世界だったんだなあ。普通にお忍びで酒飲みに行って、しかもそこで料理まで覚えてくるなんてフットワークが軽いなんてもんじゃない。

 

 それもこれも彼女自身の性格というか明るさ、ポジティブさがあってのことだろう。底抜けに天真爛漫だもんな。

 そんな彼女が今や受肉して、文字通り新しい世界で生活を謳歌している。それは、俺からしても少しばかりの救いであるようには思えたよ。

 

「あ、でもお酒の量がやっぱり多めなのは気になりますねー。リーベちゃん、行く度に圧を強めにしてますからー」

「それは……いかんな。ワタシとしてもマリアベールという前例もあって、酒に溺れる生活などは認められん。適度な量なら構わないが、四六時中呑み続けるとか一度に樽をいくつも空けるような呑み方は断じて許すわけにはいかん。他ならぬ彼女のためにもな」

「つーわけで公平サンに神奈川、ステラもよォ。悪いんですけどアイツん家行った時、もしも酒飲んでたら一言言ってもらうように頼むぜェ……酒飲みだけあってか、飲むと決めたら朝も昼も夜も区別なさそうなんだよなァ、あいつ」

「怖ぁ……」

 

 そんなミュトスの懸念事項とはやはり酒か。リーベは元より過去のマリーさんのこともあってヴァールもそのへん神経を使っていそうだし、それを受けてシャーリヒッタも気にかけている。

 さすがに朝から、しかも今から精霊知能達が訪問してくるってのに呑んでるはずもないんだけれど……そうしててもおかしくないと思われてそうな時点でもうかなりアレだからね。

 

 ちょっと合間を見て、軽くお話するくらいはしようかな? と。

 神奈川さんやステラとも顔を見合わせて、俺達はうなずくのだった。




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