攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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束の間の平穏

 かくして、俺が首都に訪れた理由が大体解消され、なんと残りの日、ほとんど自由時間をもらうことになった。

 

 というのも、元々ソフィアさんたちWSOの予定では初日にリンちゃんの継承を済ませたあと、リーベからことの経緯を明るみにして決戦の日取りを設定。

 残りの日は決戦の日までの調整とか、リンちゃんやベナウィさんとの親睦を深めるために使うつもりなんだそうで。

 

 そこまでは──端末と三界機構の襲来という想定外はあったものの──問題なく予定どおりに進んでいる。

 そして一夜明けて火曜日。ホテルを出て帰路につくのが日曜の予定なので、丸々五日間は自由に過ごしていいことになるのだ。

 夢のような話だ。いや夢なんじゃないか? 思わず頬を抓ると痛い。夢じゃなかった。

 

「何してるの?」

「えっ。いや、この素晴らしい世界への感謝を込めてウンタラカンタラをですね」

「ウンタラカンタラ? 曼荼羅?」

「なんで曼荼羅……」

「さあ……?」

 

 不思議なことを言って小首を傾げるリンちゃん。一昨日、昨日とは打って変わって色シャツの上からYシャツを羽織ったスカート姿と、ダンジョン探査を前提としていない、いわゆる私服だ。

 髪も団子状にまとめたものでなく、ストレートに流している。これはまた……イメージ変わるなあ。

 かわいさの中に美人さというか、ちょっと大人びた感じが出てきている。下手すると俺と同い年か、ちょっと上に見えるかもしれない。髪型一つでこんなに変わるもんなんだな。

 

 今、俺たちは朝から首都の街中、日本でも有数の繁華街の、これまた指折り数えて有名な公園の真ん中近くに立っている。平日だからそんなに人はいないけど、ここに来るまでに見た人の数はやはりとてつもなかった。首都、怖ぁ……

 リンちゃんもついさっきここに来たばかりで、あとは香苗さんとベナウィさんが来れば全員集合となる。待ち合わせ時刻まで、あと10分。

 

「香苗さん、一緒じゃない?」

「ん、ああ。そうなんだよ、あの人はちょっと、WSO日本支部に寄り道してる。ソフィアさんとヴァールに、確認したいことがあるんだってさ」

 

 そう、香苗さんはそんなことをSNSで告げてきて、俺よりずっと先にホテルを出ていった。ちょっと聞きたいことがあるって言ってたけど、何かあったのかな?

 たぶん、ひいおじいさんから託された最終決戦スキル《究極結界封印術》に関することなんだろうとは直感している。本人は確認次第、話せることは話したいと言っていたけど、協力できることはしたいもんだね。

 

 ちなみにリーベはそもそも待ち合わせていない。なんでも昨日、端末に追い詰められていた時に姿を見せてくれたわけだが、実は正規の手続きを取っていない顕現だったそうで。

 いや正規も非正規もあるのかよと思うんだけど、とにかく改めて顕現しないとまずいらしく、今日は一日かけて手続きを済ませるために出払っていた。

 各種部署にたらい回しされてきますー、と力なく姿を消したのが印象的だ。システム側も中々、お役所仕事なのかな?

 

 と、噂をすれば影がさす、だろうか。スキル保持者の気配が一つ、こちらに向かってきている。

 覚えのある気配、香苗さんだな。

 

「香苗さんは来たね。となると、あとはベナウィさんか」

「ね、ね。今日、どこ行く? 遊園地? 遊園地?!」

「え、初っ端そこ?」

 

 待ちかねるとばかりにワクワクしているリンちゃんが言う。いやまあ、たしかに今日一日は休息がてら、あちこち見回って遊ぼうってなことで集合したわけなんだけれども。

 いきなりテーマパーク的なところかぁ……うーん。俺的にはそこも行きたかったんだけど、まずはナントカタワーとか、ナントカツリーとか。そうでなくても下町の寺社とか良いな〜なんて、考えていたんだよなあ。

 

 そもそも、たぶんだけどリンちゃんが言ってる遊園地って、たしか首都圏は首都圏だけど、地理の上では隣県じゃなかったっけか。

 首都を観光しよう! ってツアーの第一歩からよその県に行くのは、さすがにちょーっとロックすぎる気がする。

 しかし、リンちゃんの輝いた瞳も曇らせたくないし。

 うーん。

 

「──お待たせしましたね。私が最後、ではありませんか」

「あ、お疲れ様です。ベナウィさんがまだですね」

「ん、お疲れ様……です」

 

 と、香苗さんが到着した。彼女も、いつものリクルートスーツでない、私服だ。

 青緑のサマーニットに、純白のカーディガンを羽織っている。下はブラウンのロングスカートと、全体的に清楚めな装い。

 いつものクールな感じではない、ご令嬢って印象を受ける。たしかにこの人、大きなお家の娘さんだもんな。このくらいの服装の方が、むしろしっくり来るのかもしれない。

 リンちゃんが、これまた目を輝かせて香苗さんを見る。

 

「きれい……! 香苗さん、美人!」

「ふふ、どうも。フェイリンさんも可愛らしいですよ。髪を下ろすとイメージが変わりますね」

「え? そ、そうかな。えへ、えへへへ!」

 

 やはり女の子同士、見目麗しさにはお互い、気を遣うんだろう。

 褒め合って笑い合う、なんだか尊い空気が流れていた。

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