攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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体育祭見学者2名より愛を込めて

 ミュトスの家に初訪問して、インターフェイサーの話し合いなんかもした日曜日から一夜明けて月曜日。

 11月もいい加減上旬から中旬に差し掛かるもんで、この頃になるとすっかり秋めいた涼しさのなかにも、たしかに冬を予感させる寒さが混じった空気が漂うようになっている。

 

 そんななか、我らが母校たる東クォーツ高等学校においてはそれどころでないイベントが催されていた。

 体育会系の学生にとっては、文化祭にも勝るほどの大祭ともいえるだろう。しかして文化系からしてみればそこまで盛り上がる気にもなれないだろう──そうだね、体育祭である。

 

 大体毎年、11月の頭の土日で文化祭をやったあとの次の週頭あたりに体育祭を行うのがこの学校の恒例なんだとか。

 期末テストまではまだ半月ある頃合いで、三年生さんなんかは10月半ばに修学旅行もあったってんで空いてる時期がこのくらいしか無かったんだろうね。

 にしてもタイトなスケジュールな気もするけど、まあどこともこんなもんなんだろう、たぶん。

 

「うおおおっがんばれ13組負けるな13組! 走れ走れーっ!」

「ファイト~っ!」

「陽キャリア充はこんな時のためにいるんだから気張って走れよー」

「偏見に満ちた意見! 別に陽キャでも運動苦手なチャラ男だっているっつーの!」

 

 グラウンドを駆け抜ける体育服の学生達。今は1年のリレー競走中で、我らが13組の精鋭部隊がバトンをつなぎ合って全力疾走している。

 それをクラスごとに設置されたテントから応援するクラスメイトのみんな。基本、運動神経の良い面々ってのは大体陽気で楽しいパーリーピーポーリア充が多いこともあって一部俺と同類項の陰の者達がほそぼそつぶやきつつも、概ね声援している空気の良い瞬間だ。

 

 そんななか、俺ちゃんこと山形公平くんはテントの端でひっそりと体育座りをしてちょこんと座っていた。

 なんと今回は隣に同じように座る、関口くんも一緒だ……あの、関口くんも、一緒だ。

 

「暇だねえ」

「だなあ」

「がんばれー13組ー」

「負けんなよーみんなー」

 

 ぽつねんと二人、ちょっと距離を置いて座りどことなくぼーっとしたエールを送る。別に他意はない、これは本当だ。ただ、他の人達と異なり俺達は本当にやることがないもんでこうして、静かに佇むしかできないのだ。

 だって僕達、探査者だもの。

 

 そう、探査者だもの。

 スキルがあって称号があって何よりレベルがある、ステータスを授かったオペレータなんだもの。特にレベルが今回いけなかった。

 そもそも普段の教育現場にあっても探査者については、体育の授業に関しては免除扱いで見学または自習の時間として法で定められているんだ。

 

 何しろ1レベル上がるごとに大体素の身体能力の5%、身体強化が施されるわけだからね。レベル20にもなればざっくり常人の倍だし、レベル1000オーバーの俺ちゃんなんかもう50倍とかそんなんだもの。

 ましてやこんな体育祭なんて場所で、ステータスを持たない人達と混じって身体を動かすなんて許されているはずもないのである。

 いくら手加減するとか言ったって、罷り間違ったら普通に殺傷沙汰になりかねない。個々人の加減や意識に頼っていい話ではないわけだからね、安全関係については。

 

 そんなわけでこの学校における二人きりの探査者である俺と関口くんだけは、この体育祭にあたって完全に見学者としてみんなを後方から見守る形となっていたのである。

 ぶっちゃけ暇だよ! さっきまで結構声をあげて応援してたけど、それもちょっと疲れたし休憩中なわけ。

 ぼーっとしてるわけ。

 

「こういう時、探査者ってのもつらいよなあ。どうしたって扱われ方が違うから。まあ仕方ないというか、そうしなきゃいけない理由は嫌ってほど分かるけど」

「俺らが変に出張ると、こう、偉そうな話になりかねないけど種目によってはそれだけで13組がぶっちぎりで圧勝ってことになりかねないもんねえ」

「それこそマラソンとか徒競走とか、あと綱引きとかもな。こればっかりは区別せざるを得ないってのはダンジョン探査をしてても思うしさ」

「だねえ」

 

 しみじみ語り合う。能力の有無で人の価値が変わるなんてことはまったくないんだけども、少なくとも肉体能力関係では現実としてステータス持ちのほうが圧倒的なポテンシャルを秘めてしまうのは事実だし真実だ。

 モンスターと戦うんだもの、そうなればどうしてもそのくらいぶっ飛んだ力は必要だったんだ。スキルだけでなくレベルも、オペレータが持つスーパーパワーなわけだね。

 

 いや、むしろ……スキルも探査者によって異なるけれどレベルだけは完全に共通、能力者ならば誰もが持つものである以上。

 本当に突き詰めていけば、能力者の真なる底力ってのは、むしろレベルにこそあるのかもしれないな。そんなことさえ考えてしまえるよ。

 スキルをメインウェポンにせずとも、肉体能力のみで戦うタイプの探査者だって多いしね。

 

 たしか、レベル自体は断獄世界からの流用概念だったかな。

 あっちの世界じゃどういう形でレベル制度が用いられていたのか、また今度ミュトスとかにも聞いてみたいところだよなあ。

 そんなことを思いつつ、俺はやはり後方から13組のリレーチームへとエールを送っていた。




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