攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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なんだよ……結構青春してんじゃねえか……

「……文化祭の演劇の時にも言ったんだけどな。俺の探査者としての理想像は、今はお前なんだよ、山形」

「えっ」

「お前のように、俺も助けを求める人達へ当たり前に手を差し伸べられる探査者になりたい。それができるだけの優しさと強さを、手に入れたい。そう思ってるし、あー、最近だとお前の名前は伏せて割とみんなに言ったりしてる。憧れの探査者がいるってさ」

「えぇ……?」

 

 いきなり照れくさくなるような、面映ゆくなるようなことを言い出した関口くん。俺が理想とか憧れとか、さすがにちょっと畏れ多いよ。

 言わずと知れたリア充パリピ陽キャ世界代表狙える彼なら、もっと上の、それこそS級の誰かをそういう対象にしているほうが自然な気もするんだけどね。まあ、個人的な憧憬とか目標ってのは各個人の自由だから言及は差し控えるけど。

 

 文化祭の演劇の時。魔王ゼータ・サーマに聖剣オネスティキャリバーが通じない展開になった時に、アドリブで彼が示した探査者の心意気。

 たとえ特別な力がなくても。それでも、誰かを守れる自分になれるはずだ──そう信じて叫んだ彼のセリフには、たしかにその、どこぞの救世主とやらへのリスペクトが盛り込まれていた気はする。

 

 しかしてそれを、まさか日常でも周囲に漏らすほどだとは。

 綱引きと玉入れに明け暮れるうちのクラスの何人かと、それをテントの前のほうで応援するクラスメイトの何人かを真っ直ぐな目で見据えて、関口くんは続けて言った。

 

「俺が言うその探査者がお前のことだってのは、言外にでも伝わってるみたいでさ。だから一部の陰キャ嫌いっていうか、そういうのが憎まれ口を叩いてるところはあるんだ。不相応にも関口に憧れとか言われてる、生意気なやつめって感じでな……悪いな、本当。俺が余計なこと言っちまったばかりに」

「そうなんだ……いや、それは関口くんの責任じゃないよ。君は君の想いを語っただけで、しかも名前を伏せてくれてもいるんだし。それを受けて勝手に俺のことだと当て推量して、しかも嫌ってくるのはその人の勝手。君が気にすることじゃないよ、絶対に」

「……すまん。俺のほうからもどうにかしてみるから」

 

 自身の心情を語ったことで、思わぬヘイトが俺に向けられたことを申しわけなさそうに謝罪する関口くん。

 だけど、本当に気にすることじゃないだろう。自分のあこがれや理想を口にすることが悪いことなはずがない。ましてや特定個人の名前を挙げてすらないのに、それを勝手に俺だと決めつけて嫌ってくるのは一から十まで受け手側の解釈でしかないじゃないか。

 

 そして、そうした解釈や俺を嫌うことだって全然構いやしない。それだって当人の自由だ。

 罷り間違って危害を加えようとしてきたり、それこそいじめとかってことをし始めたら俺も、俺と俺の周囲を守るためにできることをするしかなくなるけど……人の好き嫌いにまで口出しするのは筋が通らないからね。

 

 思想は自由だ、誰にでも。行動に移せば話が変わるだけで想いを抱くこと、それそのものを否定することは誰にもできないと俺は信じている。

 だから構わないんだよ、関口くんも、俺のことが嫌いっていう陽キャさん方も。

 

「気にしなくて良いよ、関口くん。好き嫌いは誰にでもあるし、そこに口出しする権利は誰にもないし。まあ、実力行使で排除! みたいな動きは止めてほしいけど」

「そういうとこ、本当に救世主って感じだな……もちろん、実際に迷惑な真似をするようなら誰より先に俺が動くさ。それは、そいつらのためにならない。かつての俺みたいな馬鹿な真似、させるわけにもいかないしな」

「なんかことあるごとにイチャモンつけてきてたもんねえ、春先とかー」

「言うなよ……まあ言うよな。そういうことさ、間違えてしまった俺だからこそ、誰かが同じ間違いをしないように止めることができるって信じたいのさ」

 

 ちょっと冗談めかした俺のからかいにも、苦笑いしつつ答える関口くんの横顔は、以前にもまして大人びて見える。

 文化祭での演劇以降、また一段と雰囲気が変わった感じがするんだよね。言動にもどこか思慮深さとか、冷静さや渋さが含まれるようになってきたって小耳に挟むし、なんならそれをもってさらに人気が爆増しているらしい陽キャずるい。

 

 例のアドリブで、自分の心情に一区切りつけたりしたのかもしれない。さやかちゃん先生もこれにはニッコリってやつだろう、目の前で生徒が大きく成長したこと、本当に嬉しそうにしてたものな。

 俺も負けていられないよ。関口くんは俺を憧れとか理想とか言ってくれるけど、俺にとっても関口くんは、人として学ぶべきところの多い素晴らしいライバルなんだから。

 

「関口くん。探査者としても学生としても人間としても、これからもお互い頑張っていこう」

「ん……結構熱血なこと言うな、山形。もちろんだ。いつかお前に並び立てる俺になるんだからな、ライバル」

 

 俺と彼と、結構対照的な部分は多いと思うけど。だからこそ切磋琢磨していけると思う。

 クラスメイトとも友人とも違う、ライバル、好敵手。そういうものにお互いなれるのなら、それもまた素敵なことだろうと俺は思うのだった。




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