攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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なんだかんだで強かな勝利

 男女分かれての騎馬戦もある程度趨勢が決まり、ハチマキを取られて敗れたクラスの騎馬が次々、グラウンドから退場していく。

 男子のほうは伊藤くん、結構良い線行ってたんだけど途中で敗退して、苦笑いしながら戻ってきたよ。当然拍手とともに健闘を称え出迎える俺達13組だ。

 

「よー! 頑張ったな伊藤ー!」

「お疲れ伊藤くん! かっこよかったよー」

「馬役の3人もおつかれ! ジュースあるよ、飲め飲めー」

「いやあ、やられちまったぜごめん! でも結構良いとこまで行けたぜ!」

 

 さすが関口くんと並んでうちのクラスの陽キャ代表、みんなに囲まれてるのが当然と言わんばかりの堂々とした態度での凱旋だ。

 陰キャ寄りグループの俺とか片岡くんも、率先して絡みに行くなんてとてもじゃないけどできないながらも、みんな同様拍手で彼らを労う。

 

 さて、もう一方の梨沙さん達女子組だな、あとは。

 見れば彼女は未だハチマキを死守してその場に残っている。連戦連勝で他クラスを撃破してるのもあるけど、それ以上に……何やら修羅場ってるよそのクラスの女子二人の争いを前に、他のクラスが大体割って入れないので長期化してるってのが実情のところだった。

 

「弟はッ!! 渡せなぁいっ!!」

「このッ!! ブラコンがっ!!」

「怖ぁ……」

「すごい形相だな……」

 

 ずっと取っ組み合いしてたんだろうけど、ひたすら弟とやらを巡っての争いしてるのがおっかない。

 関口くんもドン引きの様相だし他のみんなもそうだ、ひええーってなってる。先生達さえも。

 

 叫びながら争うその二人が戦場の主役みたいなことになってるから、梨沙さん達は周囲でわちゃわちゃ小競り合いするしかないわけなんだね。

 むしろそのなかでも結構ハチマキ取ってる梨沙さんはさすがと言うべきだろう。卒がないんだよな何ごとにつけても。

 

 しかして弟をめぐるキャットファイトにも終わりが見えてきたみたいだ。取っ組み合ってる二人の体力もかなり削られてるし、そもそも担ぎ役の女子達も大変疲れてきているのが目に見えて分かるし。

 これは決着も近いかな? 考えているのと同じくらいのタイミングで、お互い決着の一撃を放っていた。

 

「取った! 弟くんの仇ッ!!」

「弟離れっ! しなさぁいっ!!」

 

 お互いに左手で相手の体を掴み動きを阻害しつつ、右手で狙うはヘルメットの上から巻いたハチマキ!

 まったく同じタイミングだ! 体格もほぼ同じ、腕の長さももちろんそうだ、これはどうなる!?

 

 ────間一髪、紙一重の差だった。

 たぶん、件の弟さんの実のお姉さんだろうほうが伸ばした右手を、すんでのところで頭を屈めて回避して。

 弟さんの恋泥棒らしいお姉さんのほうが伸ばした右手が、見事に相手のハチマキを奪い取っていたのだ。

 わずかな、本当にわずかな差。どちらが勝っていてもおかしくない、あまりに際どいタイミングでの攻防だった。

 

「ああっ!? お、弟くん……!!」

「愛は勝つのよ……! 宣言通り弟くんはもらっていくわね、お義姉さんっ!!」

「あ、あなたに姉などと呼ばれる筋合いは……! な、ない……ガクッ」

 

 決着の末、実の姉のほうが倒れた。騎馬役の子達も限界を迎え、ゆっくりとだが崩れ落ちるようにその子を降ろしていく。

 激闘だった。見ていて惹かれるものさえ覚えるほどの。話の内容はひたすらに他所でやれとしか言えない痴話喧嘩だったものの、なんだか良いものを観たような気さえしてくるほどに鍔迫り合いの緊迫感が常にあったな。

 

 しかし勝者たるお姉さんのほうも、ダメージが否めないのか汗まみれで掴み取ったハチマキを手に、息を切らしている。

 隙だらけだ……ゆえにそこを狙い目とする第三者もまた、当然いるわけで。

 そしてそれこそは、何ごとにつけても卒がない、我らがクラスの才女でして。

 

 不意に訪れた沈黙のなか。

 うちのクラスの騎馬だけは静かに勝ったお姉さんに近づいて、彼女のハチマキを背後からするりと解き取ったのであった。

 

「えー……っと、ごめん、お疲れ様!」

「う……? あ、あなた、佐山さん……お、お見事!」

「もういい加減、体力が限界っしょ上も下も? ナイスファイト、でもこんな場所で叫び合う内容じゃなかったかなって思うよ? ほら、先生がカンカン」

「え、うそヤバっ……やらかしたぁ〜でも弟くんは私のものぉ〜……」

 

 さすがに激戦の後に横槍を入れる形で、梨沙さんも申しわけなさそうだけど。

 そもそも乱戦だっていうのに二人だけの世界になってたのは向こうの責任だし、あと体力的な意味でももう終わらせてあげないと、事故りかねない状態なのは遠目からにも明らかだし。

 

 誰が手を出してもおかしくない状態で、一番先に手を出したのがうちのクラスだったってだけだからね。仕方ないね。

 やられた側もそこは気にしてないってかお見事って言ってくれてるしね。私闘めいたことをしちゃって先生がカンカンなことのほうに意識を取られているみたいだ……後で敗者のほうともどもコッテリ絞られるだろう。

 

 でもナイスファイト!

 とても良い試合でした、弟くん争奪戦!




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