攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
体育祭から数日が経ち、11月も中旬頃の土曜。今日も今日とてダンジョン探査だ、俺はまたぞろモンスターとの戦いに繰り出していた。
涼しさを通り越して肌寒い秋の深まる頃の朝、早速現地に急行していた。依頼受諾は前日の夕方、済ませるだけ済ませておいたのでこのへんの動きはスムーズだ。
本日のダンジョンはごくごくオーソドックスな感じで空き地に発生しているもので、もともとこの土地を所有している不動産会社さんが発見して全探組へと探査依頼を出した経緯がある。
なんでもすでに売却が決定していて家を建てる段取りも決まっている土地らしいんだな、これが。
ダンジョンのすぐそばにぽつねんと立てられた看板にも、"売約済"なる文言が書いてある。
つまり今まさにこの土地に用のあるどなたかがいて、それなのにダンジョンが邪魔をしているんだ。
そういう背景を知ると、なんとか早期に片付けたいって気持ちになるよね。気合が入るよ。
難度もA級、18階層63部屋とまあまあの規模ではあるものの周辺環境の読み取りなどもない、普通の構造となっている。
一人でもサクッと数時間で終わらせられる規模だね。でも今日に限ってはもっと早く済ませられることだろう。
何しろ強力な助っ人がいるからな……そう、今回はソロではないのだ。
前から機会があれば探査したいですねと話していた何人かの方々と都合をつけられたので、せっかくなのでとお呼びしたのである。
快く応じてくださったその方々へ、俺は軽く会釈して謝意を示す。
「改めてですけど、今日は一緒に探査してくださって助かります。よろしくお願いします愛知さん、シャルロットさん」
「いや、こちらこそありがとう山形さん。あなたとはこうして、ともに探査をしてみたいと前から思っていたんだ。もちろんシャルロットとも」
「最近では聖女としての業務ばかりしていて、正直なところ少しばかり運動不足が気になっていたところです。探査者としての最低限度のノルマを果たす頃合いでもあったので、今回の提案はまさに一石二鳥の渡りに船というものでしょう。七代目聖女として恥じない戦い方に努めますので、よろしくお願いします」
赤色の髪をポニーテールにまとめた、ライダースーツの美人さん。史上最年少S級、愛知九葉さん。
長い銀髪を風に靡かせ悠然と佇むローブにマント姿。ダンジョン聖教七代目聖女、シャルロット・モリガナさん。
とんでもないビッグネームのお二人を、今回お呼びさせてもらったわけだね。
いやはや、このお二人とも普段から、グルチャでやり取りしてるんだけど……時折一緒に探査したいですねー、ねー。みたいな話をしていたもんで、そのうち予定合わせて組みたいなと思っていたのだ。
それがついに叶ったもんで、こちらとしても感慨深いよ。愛知さんもお忙しければ、シャルロットさんだって本業たる聖女としての公務やら何やらで大変御多忙なんだもの。
特に気晴らしも兼ねているらしいシャルロットさんが、軽く伸びをしてつぶやく。
「今回ばかりは伴の騎士達もなしです。彼らにも休日を与えなければ、ダンジョン聖教はブラック企業さながらだなどと言われては堪りませんからね」
「そ、そうですか……あのー、シャルロットさんはその、最近の調子はどうですか? 身体のほうも、精神的な面でのほうも」
「おかげさまで快調です。身体はもちろん全快していますし、精神面も……聖女としての公務で疲れることはありますが、それさえ含めて清々しい心地で生きています」
ここに至るまでに、アレクサンドラによって凄絶な半生を余儀なくされていたのがシャルロットさんだ。
一時は余命宣告までされるほどに痛めつけられていた身体を俺とリーベ、ヴァールで治療して以降はずいぶん健康に過ごされているようだけど、やはり少しばかり心配ではあったのだ。
けれどそれも今、穏やかな笑顔で答える彼女を見て杞憂だったと確信したよ。同時に強く安堵する。
アレクサンドラやそれに纏わるシャルロットさん自身の言動のことで、ダンジョン聖教はその組織としての信頼性を著しく損ねてしまった。それを挽回すべく奔走しているのが今のこの方なんだけれど、それだって無理しない範囲で、靭やかな強さでもって取り組んでいらっしゃる様子。
これなら心配はいらない。今のシャルロットさんは、多少堕ちた信頼だってすぐに取り戻してさらに先に進めるくらい、本当に立派で尊敬すべき聖女なんだもの。
愛知さんも同様に考えているようだった。どうしたことか、ある時を境に急に対応を柔らかくした少女の肩に手をやり、クールに微笑む。
「立派だとは思うが、やはり心配にもなる……君は無理をしすぎるからな、シャルロット。時折私や神谷さん、統括理事やエリスさんも気にかけているのだから、どうか自分を大事にしつつ活動してくれよ」
「ええ、まあ。あなたも含め御方々には、さすがに過保護に扱われている気がしなくもありませんが。それでも私を想ってのこと、感謝しています」
「今までの君がまるで保護されていなかったからそう感じるだけさ。本当に……よく、あんな輩にあんな目に遭わされてなお、生き抜いたよ」
「愛知さん……?」
滲むようにじわりと、どこか哀しげに微笑む愛知さんにシャルロットさんともども訝しむ。
今やシャルロットさん過保護勢は俺の仲間内ばかりかダンジョン聖教騎士達にも結構な数、いるようだけど。そのなかでも愛知さんの想いの強さは群を抜いている気がしてならない。
ほとんど涙目なんだもの。同情とか憐憫だけでは説明がつけられない入れ込みようだ。
愛知さんも何やら事情をお持ちの方みたいだからなあ……
そのへん、今回の探査でいくらかでも情報を得られたらいいんだけど。とはいえインターフェイサーの勧誘についてはまた別の機会に、そこはリーベとシャーリヒッタも交えて行いたいね。
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