攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
精霊。概念存在のカテゴリーの一種類にして、ここに至るまでの委員会絡みの一連の騒動においては妖精ともども、結局ノータッチっぽかった連中だ。
それもそのはずで、ソレらはそもそも神や悪魔とは立ち位置が違うのだ……風や火、水、土、あるいは光とか闇とか。
そういったこの世の現象そのものの化身としての役割が与えられているのだから。
「あるいは始原概念とは別の形で概念存在達の大元、と言えるカテゴリかもしれません。神や悪魔は人々が現象に信仰を見出したのが発生の発端ですが、精霊はその現象を発生させる要素、元素とかそういう部分に纏わる概念存在ですからね」
「ええと、つまり……まずは火や水、風や土といったごく普通の自然現象から精霊が発生し、それらが時として荒ぶる災害となったのを受けて人々が信仰を見出した。そこから神や悪魔といったモノが生まれたと。そういうことでしょうか?」
「話が早くて助かります。まあ、生まれたと言いますか役割を与えられたが正しいんですけどね。名も無い魂は元からあって、そこに後付けでイメージによる役割と同一化したのが概念存在の実際ですから」
シャルロットさんに教えつつ愛知さんを見る。《精霊憑依》……精霊の力を一時的に宿すその効果は、言い換えるならば自然現象そのものと自らを一体化させるのと同義。
極めてレアで、しかも操作難度の難しいスキルだ。今は風の力を得ているようで、まさしく風そのもののような速度でソリッド狼人間達の刃を掻い潜り距離をとった彼女の、額に汗が滲んでいるのを視認する。
シンプルに体力を消耗したんだな。S級のレベルをもってしてもソレとは、やはり《精霊憑依》は扱いが難しいな。
召喚系の本領は多数の派生スキルがあるところなんだけど、とりわけ概念存在の一部ないし力を身体に憑依させる系は、召喚系オペレータに不足しがちと思われるフィジカル面を補えるんだけど消耗が激しいんだ。
当たり前だよね、やってることは一時的かつ極小規模ながらプレーローマ・アンドヴァリと一緒だし。
別ルートのスキルにも精霊の力を借り受けるタイプのものはあるけど、やはり自分の身体に直接宿す系はどれも負担が大きめだ。
強力だけど反動もでかい。ピーキーなスキル群なわけだね。
さてそんなピーキースキルを使った愛知さんだが、疲れはともかく余裕はまったく崩れていない。ハンカチを手にして軽く汗を拭い、敵と距離を置いて向き合うほどのスマートささえ見せている。
さて、ここからどうするんだろう彼女。気にしつつシャルロットさんと見学していると、すぐに動きがあった。
向かってくるソリッド狼人間達を前に、彼女はさらなるスキル行使を始めたのだ。
「これは裏技めいた使い方だと思うんだけど、どうかな? ──《憑依顕現》。現れよ概念存在、風のエレメンタルッ!!」
「聞いたことのないスキルを、立て続けに二つ……!?」
「《憑依顕現》! 自身に宿した概念存在の力を、外部へと顕現させるさらなる派生スキルです!」
「さらに! 顕現せしエレメンタルを触媒に発動せよ、スキル《連鎖顕現》ッ!!」
「ぐるぉぉぉおああああっ!?」
彼女が発動した二つのスキル、《憑依顕現》と《連鎖顕現》。先んじて使用していた《精霊憑依》も併せての3連コンボの意味を即座に理解して、俺は言葉もなく目を見開いた。
たしかに可能だ、そのコンビネーション!
現象はすぐに視覚的に表現される。まずは《憑依顕現》の効果発動から。愛知さんに宿っていた風の力が外部へと抜け出て、ソリッド狼人間達の進撃を阻む風の壁として発現したのだ。
風のエレメンタル……精霊と妖精は自然現象の化身という側面が強いから、特定の個体名を持たない場合が多いからな。聞いたことのない名前だけれど、愛知さんによる仮称だろう。
そうして発生した風の壁を、対象としてさらに発動するスキル《連鎖顕現》。
こちらは彼女の証明書にも記載されていたものだ。効果はすでに召喚されている概念存在と、縁のある概念存在を通常よりコストを減らした状態で召喚する。
つまりは風の壁、風という現象そのものに縁のあるナニモノカが、ここに顕現することになる!
自らの身体強化と立ち回りの起点としての《精霊憑依》から、それを相手の妨害や攻撃等に利用するための《憑依顕現》。
そして仕上げにそうして喚んだ現象に縁のあるモノをローコストで、すなわち指定されている条件をある程度踏み倒して召喚する《連鎖顕現》。
総じて無駄がなく、流れるような連続スキル発動だ。
何が素晴らしいって、通常の召喚スキルで喚び出すよりもこちらの手順のほうが召喚コスト的にははるかに安上がりなのだ。
概念存在を召喚するにあたってのルール、指定された召喚条件をすべて満たさないといけない原則を、何割かカットできるんだね。
身体を経由する分、肉体的な消耗は大きいけど……それを補って余りある3連続の見事なスキル・コンビネーションと言えた。
「──条件は五つ」
そして。愛知さんが《連鎖顕現》による召喚手続きに移行する。
敵を足止めしつつの、余裕をもった冷静なスキル発動だった。
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「大ダンジョン時代クロニクル」
https://syosetu.org/novel/362785/
第二部・第二次モンスターハザード前編─北欧戦線1957─
完結しました!後編開始は2026/1/1の0時から!
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「大ダンジョン時代ヒストリア」100年史編完結!
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