攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
《召喚》から派生した三つのスキルを、さらに掛け合わせてのコンビネーション。精霊の力を我が身に宿し立ち回った後、それを外部へと顕現させる。
その上でさらにその顕現させた現象を対象にとっての、さらなる概念存在の召喚へとつなげたのだ……見事な、美しさすら感じるスマートなコンボ。
これが召喚系最上位に位置する探査者の力かと、率直に驚愕を禁じ得ないよ。自身の持つスキルの性質と仕様を、完全に理解していないとできない動きだからね。
おそらくは他にも、外部に公表していない召喚系スキルはまだあるんだろう。そしてそれらについてもまた、今のような組み合わせをいくつも編み出していることは容易に想像がつく。
まさしくS級たる実力を発揮する愛知さん。
コンボパーツの最後、《連鎖顕現》による召喚口上を彼女は冷静に、余裕をもってそして当たり前のように宣言していた。
「──条件は五つ。一つ、風吹き荒ぶ土地であること。二つ、日本国内であること。三つ、召喚者が日本ゆかりの者であること」
「……日本系の概念存在か。風に纏わるモノですね、やはり」
「四つ、血縁に神職がいること。五つ、他の能力者が半径50m以内にいないこと──後者二つを《連鎖顕現》による効果で無視する」
「ずいぶん、限定的な条件ですね。事実上まともに喚べない類の概念存在なのでは?」
シャルロットさんと二人、首を傾げる。ずいぶん厳しい召喚条件だ、そもそも喚ばれたくないタイプの概念存在なのかな?
血縁に神職がいることなんて、完全に召喚者を選別しに来ているし。まともに喚ぼうとしたらそれこそ、成長したアメさんでどうにかこうにかってところじゃないかこれ?
そんな厳しい条件を半分近く踏み倒して、愛知さんはそして概念存在を喚び出す。
風の壁が煌めき光る。それそのものをゲートとして、概念領域からナニモノカが来る!
「現れろ──風の神、風神! またの名を概念存在、シナツヒコ!!」
「シナツヒコ……? ええと、たぶん日本神話系だろうけど。シャルロットさんはご存知ですか?」
「い、いえ。申しわけありませんがダンジョン聖教以外の宗教については、あまり詳しくなく」
ですよねー! 愛知さんが呼びかけたそのモノの名、シナツヒコって名前の風の神らしい方について二人、シャルロットさんとハテナマークを頭に浮かべる。
いや、彼女のほうはともかく俺ちゃんは仮にも日本人なんだし、おそらく日本神話圏のモノのことくらい知っとけって言われるかも知れんけどごめん、俺ちゃん神話関係全然知らないんだわ。
なんならオーディン神だのアドラメレクだのだってゲームで見たことあるかも! くらいの浅さだもの。
日本神話についてだって、精々がアマテラスとかスサノオとかツクヨミとか、そのへんのメジャーどころしか知らんし。
こういう時、厨二全盛期の頃に神話方面に手を出さなかったことが悔やまれるよ。
どっちかと言えば非日常的シチュエーションで活躍する自分を妄想してたものな。学校にテロリスト相手に無双する俺とか、道端を歩いていたアイドルを暴漢から助ける自分とか。
あっ、黒歴史思い返して身悶えしそう。怖ぁ……
『────九葉。またか九葉。またそんなズルして吾を喚び出したのか九葉』
と、思わず瞑想しちゃった俺はともかく、《憑依顕現》によって発生した風の壁のなかから一際、強い暴風が巻き起こり、ソレは姿を現した。
なんかこう、弥生時代とか古墳時代にいそうな服装の男の人だ。若い顔立ちだけどヒゲを生やしていて、放つ力は紛れもなく権能の威容。
何より身体全体に風を纏い、中空を漂い傲然と佇む姿からも分かることだ……かなり上位の神だと。
そんな存在はソリッド狼人間達を睥睨しつつも、背にした愛知さんへと呼びかけていた。
ちょっと不機嫌というか、憮然とした声色と表情である。
『いつも言ってるだろう、自分で風を巻き起こしておいてそれを質にするなと。吾が好むのは風は風でも大自然の暴威暴風、であれば人による捏造の風など本来ならば応じるに値しないのだぞ。分かっているのか?』
「重々承知しています。そしてそれをも呑み込んで応じてくださる、その寛容な御心に心から感謝していますよ」
『ン……まあ、敬意あるならば良し。自分でも召喚条件を厳しくしすぎている自覚はあるゆえな、まともに喚ぶ能力者なぞ九葉を除いても何人いるやら。ま、何はともあれ概念存在シナツヒコ、ここに呼応して来てやったぞ。風を司るは吾、吾こそは風神よ』
言っていることこそ文句タラタラって感じだけど、肩をすくめつつ名乗る姿はまさしく"まんざらでもなさそう"って姿だ。
風の神、シナツヒコ。どうやら召喚条件を厳しいものにした自覚はあるらしい神様が、そのまま名乗りとともに右腕を雑にモンスターへと翳した。
瞬間、ソリッド狼人間の二匹が素早く身を翻してその場を離れる。残り一匹も……いや、そちらは反応さえできずに爆散した。
風が巻き起こったのだ。鋭い刃のような殺傷力を伴う、いわゆる鎌鼬を敵の周囲に激しく吹き荒ばせたんだ。
動作も発動も早いし威力もあるな。しかし当のシナツヒコ自身は、何やら手応えに眉を顰めているけど。
なんだ?
『……この感じ、B級だな九葉? さすがにこのクラスになると吾ではちと手間を掛けるぞ。迅速に勝つならば最高神あたりが妥当ではないのか』
「さすがにB級モンスター相手に最高神の召喚条件は満たしていられませんよ。それに、御身のお力ならばこの程度、鎧袖一触と信じています」
『煽てるな、そう言われると風もやる気の一つくらいは出る。めったに喚ばれぬゆえ、元より働く気はあるがな』
なるほど、B級モンスターのソリッド狼人間相手だと、若干手に余る懸念を抱いたのか。
正しい懸念だ。正直なところ、こと戦闘能力についてだけを語れば概念存在ってのは基本、モンスターよりは低めの傾向にあるからね。
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第二部・第二次モンスターハザード前編─北欧戦線1957─
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