攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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やっぱり引きこもりなんだ、あの神様……

『やれやれ、外野がずいぶん知ったふうな口を利いているようだが……見かけ童のくせにずいぶん異質なのが腹立たしいやら恐ろしいやら。風よ、荒べ』

「んぐるるるるぁぁぁあっ?!」

「んぐわぁおおおおぉぉぉぉっ!!」

 

 私、いやさ俺の解説を遠くからでも耳にしていたようで、ソリッド狼人間二体を相手に鎌鼬で迎撃しながらも、シナツヒコは一人ぼやいてみせた。

 当たればB級モンスターでもダメージは免れない威力の刃の風を、先ほどから少しずつヒットさせてきたこともあってついに片方の一体を仕留めるに至ったね。

 

 しかしもう一体のほうは未だ健在、鎌鼬をかいくぐって斬撃を仕掛けてくる。

 それを巻き起こした風の壁で防ぎ吹き飛ばしつつ、かの風神は舌打ちを一つして、後方にて佇む愛知さんに語りかけた。

 偉ぶってはいるものの親しげな態度でだ。普段から親交を結んでいるのか、気さくな声色だな。

 

『……やはり吾ではちと荷が勝ち気味だぞ、九葉。そも戦神ではないということを忘れてもらっては困る。風はどこまでいっても風にすぎんのだぞ、九葉』

「承知しています、シナツヒコ。こちらも準備を整えていました、今から参じます──《二重召喚》発動。すでに召喚しているシナツヒコ神と召喚条件の一部を共有する概念存在を、その重複している条件分のコストを踏み倒して召喚する」

「《二重召喚》まで。さすがというべきか、召喚派生レアスキルのオンパレードですね」

 

 さらなる召喚派生スキルを発動させた愛知さんに、俺も思わず感嘆の声をあげる。現状における世界最高の召喚系オペレータというだけはある、見事なラインナップだよ。

 《二重召喚》……彼女自身の説明通り、前もって召喚しているモノと同一条件を持つ概念存在を、重複しているぶんだけコスト消費を軽減させて喚び出すスキルである。

 

 今回で言えばシナツヒコの条件、えーと風が吹く場所であることとか、日本国内であることとか。そういったものとまったく同じ条件づけをしている概念存在を、共通している分の条件にかかるコストを踏み倒せることになる。

 どういった同一条件を保持している存在を喚び出すのか。見学している側からも期待が高まるよ。

 

「今回、踏み倒す共通召喚条件は三つ。日本国内であること、召喚者が日本人であること。そして半径50m内に他の能力者がいないこと──ここに現れよ概念存在、アメノマヒトツ!」

『────ん、応。出番か、嬢ちゃん。剣ならあるぞ、好きに使ってけ』

 

 今回はそのモノの条件がまるまる、シナツヒコのそれに内包される形になっていたみたいだな。踏み倒した条件だけでそのモノを完全に喚び出せるようになった愛知さんが、たちまちもう一体の概念存在を喚び出した。

 瞬間、彼女の周囲の地面に突き刺さる何本かの剣。そして降臨するモノ。

 

 片目を瞑った中年男性の姿だ。いかにも職人気質って感じにしかめっ面をしているがその開けた目は思慮深さを感じ取れて、言葉少なにだが語りかけるその口調、声色はぶっきらぼうながら優しい。

 剣とともに現れた……察するに武器に纏わる神かな? シナツヒコも反応し、ソリッド狼人間と風を挟んでせめぎ合いながらも現れたそのモノ、アメノマヒトツに言葉を投げかける。

 

『ふん、鍛冶神か……その剣、現世には伝わるまいがなかなかの逸品と見る。ずいぶん九葉に肩入れするものだな?』

『……ん、まあ。嬢ちゃんにゃモンスターの素材、仕入れてもらっとるんで。見たことねぇもんばかりだ、鍛つのも楽しい。その手応えの礼でさ』

『何? ああ、さてはアマテラスが最近仕入れたモンスターの素材で出来た刀、アレはお前による鍛造か。引きこもりのくせにどこから手にしたのかと地味に気にしていたのだが、なるほど』

『ん……引きこもりなりに、割と現世をチラ見してるんでさ、あの方も』

 

 怖ぁ……神々の会話だ、地味に初めて見るよ。

 しかもさり気なくアマテラスなんて、俺でも聞いたことのあるすごい神の名前も出てきた。やっぱ引きこもりなんだ? 現世のイメージ、大体そっち方面多いものな。

 

 しかし概念存在側にもモンスターの素材を渡しているのか、愛知さん。別段禁止事項じゃないから特に構わないけど、彼女も大概、概念領域側に踏み込んでいるんだな。

 地面に突き刺された、そうしたモンスターの素材による御神剣の一本を愛知さんが手にとって抜き放つ。いわゆる蛇行剣、うねった刀身が特徴の、鏡のようにすべてを反射して映す美しさが目立つ一振りだ。

 

「感謝します、アメノマヒトツ神。御身の作ってくださった武器に恥じぬよう、努めます」

『ん、気張れ。現世もずいぶん変わったが、そんでも闘争の本質だけは変わらねえ。殺るか殺られるか、勝つか負けるか。儂は勝てるだけのモンを拵えた、あとはお前次第だ嬢ちゃん』

「はい……! シナツヒコ神、どうか支援を!」

『やっとか、任すぞ。風よ、いい感じに横殴れ』

「ぐるがぁぁっ!?」

 

 二つの神の助力を得、愛知さんはそして剣を手に持ち駆け出した。彼女が直接決めるのか、そのための武器神アメノマヒトツ召喚か!

 同時に呼びかけに応じてシナツヒコが、風の壁で遮っていたソリッド狼人間の横合いから突風を吹かせて飛ばす。思いがけないタイミングでの殴りつけるような勢いに、敵もなすすべがない。

 

 そして。飛ばされた先にいるのは駆け抜ける愛知さん。

 すでに与えられた蛇行剣を横に構え、切り払いの体勢へと移行している。なんらかの技を使うのか!

 

「《剣術》ッ! ────陰陽五行、ひのひとはらい!!」

「ぐるぇぇぇぇあっ!?」

 

 《剣術》まで体得していた彼女の、手に持つ刀身が炎に燃えた。スキルじゃない、別体系の能力による発火。察するに陰陽術的なやつか、地味にすごいことしたな、これ。

 ともかくそれによる強化をも得た剣が横一文字にソリッド狼人間を薙ぎ払い──そうして決着はついた。

 愛知さんの勝利だ。




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