攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
俺、愛知さん、シャルロットさんというかなり特殊というか、滅多にないだろう変則的なパーティでのコンビネーション。
これが意外なまでに相性が良い……というよりは三人全員がそれぞれ、オールラウンダー的な動き方ができるためにどう動いても噛み合える汎用性があったりした。
手前味噌ながら割と何でもありな俺ちゃんはもちろんのこと、召喚スキルのみならず剣技や銃まで使いこなす愛知さん。そして進化した《光魔導》で攻防牽制を適宜行いつつ、近接戦でも聖女殺法だ聖王剣だで縦横無尽のシャルロットさん。
よほど性格面での相性が悪いとかでない限り、これでかみ合わないわけがないんだね。
特に、シャルロットさんの立ち回りの上手さと引き出しの多さは予想外だった。愛知さんもしきりに驚いているけど、正直俺も《光魔導》メインの方だと思ってたものな。
「正直、驚いた……シャルロットが思いの外、私と似たスタイルの探査者だなんて。その戦い方は、認定式の頃からもずっと?」
「いえ、山形さん達によって傷を治療してもらって以後、可能になったスタイルですね。それまでは《光魔導》一辺倒でした。なにしろ動くどころか息をする度、身体に激痛が走りましたので」
「ですが聖王剣の動きは滑らかで、慣れたものに感じました。つまり元から仕込まれていたものではあるんですね」
「はい。アレクサンドラからは虐待のなかでも一通り、聖女殺法自体はすべて引き継いでいましたので。傀儡にするにも最低限の仕込みはしておきたかったのでしょう」
そのへん、淡々とアレクサンドラからの修行……と、称した凄絶極まる虐待の日々を語るシャルロットさん。
思い出させてしまう形になり申しわけないけれど、なるほど。今の話から見えてきたものはたしかにある。
つまりアレクサンドラとしては、シャルロットさんを自らが裏で支配する傀儡に仕立てたかったんだけど、その過程でやはり聖女殺法など歴代の戦闘法も引き継がせる必要があったんだろう。
その上で身につけたそれら技術を、半ば封印するように虐待によった重大な後遺症を刻みつけた。もちろんメインは鬱憤晴らしや八つ当たりだったんだろうけれど、そういう方面での意図もあったのだと理解できる。
でなけりゃおかしな話なんだ。なぜ傀儡にするつもりだったシャルロットさんを、わざわざ残り10年未満しか生きられない程にまで痛めつけた?
彼女の聖女在任中にどうにかプレーローマ・アンドヴァリとして完成し、死後に再び聖女に戻るつもりだったにしても痛めつけ方が極端すぎる。
ストレス発散のためとしても、アレクサンドラの目的を考えればあまりに過剰かつ念入りだ。感情に依らない明確な理論、理由がなければ到底しないほどにまで、あの女はシャルロットさんを損傷させていた。
その真なる意図……そこに愛知さんも気づいたようだった。俺に目配せして、まさかという視線を投げてくる。
「山形さん……」
「まあ、でしょうね。たぶん、愛知さんの読み通りかと」
「…………黙っておくよ。これは、語るに余りある」
「? あの、急に何のお話なんですか、お二人とも」
言葉少なにやりとりを交わす俺と愛知さんに、シャルロットさんがにわかに首を傾げる。
それを微笑んで取り繕いながらも俺は、改めてアレクサンドラの悪辣さに胸の悪くなるものを覚えていた。
──結論から言うと、アレクサンドラはシャルロットさんを警戒していた。
万一にでも反旗を翻された際。そのシチュエーションを想定した場合、健在のままでは手に負えないレベルの実力を備える可能性があるとして、虐待による物理的封印に至ったのだろう。
すなわち、シャルロットさんの戦闘面での才能や素質が、アレクサンドラに危惧を抱かせるほどに莫大なものだった。
ゆえのリスクマネジメントとして彼女は、この娘を心ばかりか肉体まで過度に痛めつけたんだ。万一が起きた時、問題なく返り討ちにできるように。
アレクサンドラからすれば一石二鳥、いや三鳥ってところだろう。元より精神を破綻させるのとストレス発散のために甚振っていたところを、さらにシャルロットさんの実力を阻害さえしてしまえたのだから。
なんなら、その戦闘への才覚がモリガナの血筋に由来するものだと判断して……彼女の先祖であるエリスさんへの嫌がらせのつもりさえ、あったのかもしれない。
無論、すべては推測だ。実際にアレクサンドラがどういうつもりでシャルロットさんをあそこまで痛めつけたのか、その真相は彼女にしか分からない。
けれど、こうした推測が可能になってしまうほどにはシャルロットさんの今の実力、そして開花させた才能は凄まじいものなんだ。元々S級探査者でもあったあの女がそれを見抜くのも、不自然なことではないように思えるよ。
「……シャル。君は必ず幸せになるべきだ。私もそのためならば、私自身の事情さえ一旦後回しにしても良いと思える」
「なんですか九葉、急に。そもそもあなたの事情を知らないので、どうとも答えようがないのですが」
「いつか話す日も来るだろう。けれどやはり今は君自身のことだ。どんなことでも力になる。何かあればすぐに呼んでくれ、たとえ世界の裏側からでもすぐに駆けつけるから」
「はあ……」
いつ頃からかシャルロットさんに入れ込むようになった愛知さんも、同様の推測に至ったのだろう。ものすごく過保護な感じになっていらっしゃるよ。
当のシャルロットさんからすれば何が何やらって感じだけれど、言葉とは裏腹に表情はそう嫌がってるわけでなし、まあこれはこれでお二人ならではのコミュニケーションなんだろうね。
俺も思うよ、シャルロットさんは幸せになるべきだ。
そのためなら、俺も助力を惜しむつもりはないってね。
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