攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

1923 / 2050
移りゆく季節を目一杯楽しんで

 その後もゲーセンを中心に遊んで回り、時折プラモ屋さんとかゲーム屋さんとか、あるいは雑貨屋さんとかも覗いたりして俺達はショッピングモールでのひとときを過ごした。

 いやはや、今回初めてここに来たんだけどやっぱり広くていろいろあって楽しいもんだよ。それが家族や親戚と一緒なんだからなおのことだ。

 

 当初の目的たるリューさんのストレス発散というか、気分転換もそれなりに成功しているみたいだ。誰よりもはしゃいで遊び回る彼の姿はとてもじゃないけど、受験勉強中の学生さんには見えないもの。

 これでも家に帰ったらまた、大学受験に向けてどっぷり勉強漬けなんだろうから大変だ。せめて今日一日くらいは楽しんでもらえるなら、こちらとしてもとても嬉しい限りだね。

 

「いやー、なんやかや午前中は遊び回ったなあ! 午後から何して遊ぼうか、映画でも見に行くかあ!?」

「ああ、上階にあるもんね、映画館」

 

 というわけで12時前、少し早めながら昼ごはん食べるべとフードコートに陣取り6人、思い思いの店で注文した料理をいただく。

 俺と優子はハンバーガーセット、リーベとシャーリヒッタはラーメンだ。そしてリューさんと春香はなんとステーキを頼んだりしている。

 

 さすがにちょっとリッチすぎん? 食費がこの二人だけお高めなんだけど、せっかくだし俺が出そうか? と思うも、どうやらそのへんは抜かりないらしい。

 兄妹の父、俺にとっておじさんにあたる洋介さんが奮発してお小遣いをくれたらしいのだ。リューさんがしみじみと語ってくれた。

 

「"たまの気分転換だ、パーッとやっちまえ"ってさ……! うちの親父、気前いいよなあ」

「母さんが受験絡みで割と兄貴にあたりキツいから、たぶんそのバランス取ってるんだと思うよ。あと公平のこともありそうだし」

「俺? なんで?」

「あんた探査者やってて金持ちだし、こういう時になると自分から奢るよーとか言いそうじゃん? でもさすがにそれは悪いってこと。父さん、あんたのことも心配してるからね。いくら実入りが良くても毎度モンスター相手に殴り合いなんてーって」

「あー……そう、なんだ。それはなんか、ご心配おかけしちゃって」

 

 まさかの俺にまで気遣いしてくれているらしい、洋介さんに頭が上がらない。たしかに今、あれだったら俺が食費出すけどって言いかけたもの。

 ただでさえそんなに使う機会のないお金だし、まあ良いよねーって。そこが大人として洋介さんには気になるんだな。

 

 そこはうちの父ちゃん母ちゃんもしっかりしていて、やはり家族だなあって感じだ。

 俺がお金持ちになったとて変わらず自分達の稼ぎをメインに日々のやりくりをしてくれているし……急に裕福になると身を持ち崩すってことも探査者に限らず人間にはよくあることだから、そのあたりを警戒しているところがあるんだ。

 

 加えてやはり、探査業という名のモンスターとの殺し合いで得た俺の金を、自分達の都合で使わせることに抵抗があるんだろう。その感覚は、正直なところ尊敬できるものだ。

 地に足がついてるっていうのかな。変な魅力に惑わされずに日々を送ることができるのは、立派で素晴らしい強さだ。ともすればスキルやレベルでバトルする強さよりも、よほどすごいと思えるほどに。

 

「日々を恙無く生きる、当たり前の日常を当たり前に送る……意外とこれって難しいことなんですよねー。私達も永らくエマージェンシーモードが続いていましたから、今さらそれに想いを馳せますー」

「当たり前、なんてのはちょっとなんかあるとすぐに崩れるっつーからなァ。壊したり創ったりすんのも大変だけど、維持するってのも当然大変なこった。新生活を始めたばっかりのオレ達みんなも、見習いてェところだぜ」

「ふ、二人が言うとなんかリアルな気もするね……でも、うん。当たり前が一番当たり前じゃない、ってのはこの半年で私も思ったかも。何かあったらすぐ、いろんなことが変わるから」

 

 リーベやシャーリヒッタ、優子ちゃんも各々感じ入ったようにつぶやく。私達が創り、俺達が護る日常──その尊さと、維持することの至難さに。

 こればっかりは個人の意志では難しいところだからね。変化は時に凪のように訪れず、けれど時に嵐のように訪れる。抗うことはなかなか難しい、これもまた世の理。因果の業だ。

 

 そんな何が起こるかわからない未来を、それでも己の意志で歩むことはできる。

 そうしようと思う限りその方向に人は、知的生命体は向かっていける。辿り着けるかはともかくだ。

 どこまででも、歩みは続いていく。

 

 誰しもがそうやって歩んでいく、大きな流れのなか──その果てにいつか、"巣立ち"の時は訪れるのだろう。遠い時の果てに、すべての条件を達成した末に、次につながる新たなモノへと託して見送ることができる。

 それこそが世界の本質なんだ。例外なくすべてのものはみな、無意識にそうあれかしと進んでいる。

 

「っはー、食った食った! よーし、じゃあいっちょ映画館行ってみるか! たしか面白そうな作品やってた気がするんだよなあ」

「映画ですかー、スクリーンで観たことないからちょっと期待ですねー。ワクワク、ワクワク!」

 

 食事を終えたリューさんやリーベ達が、さっそく映画館に行こうと立ち上がっている。もちろん食べ終えた俺達も続き、片付けをしてから動き始める。

 今、こうして過ごすひとときもかけがえのない、そして大切な日々だ。どんなものにとってのどんなものも、他の何かにとって必ず何かの意味がある。価値がある。

 

 だから俺も、この当たり前の日々を目一杯楽しむことにしよう。それもまた、生きるということなんだから。

 秋が過ぎ行き、冬が訪れつつある11月。半年かけていろいろあった日々にもようやくの落ち着きを見せつつあるなかで、俺はそう考えていた────




これにて第三部後日談編完結!次回から年末編を開始しますー
そしてその後に最終部となりますのでよろしくお願いしますー

「大ダンジョン時代クロニクル」
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第二部・第二次モンスターハザード後編─犯した罪に、等しき罰を─
連載中!よろしくお願いしますー

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