攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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大ダンジョン時代物語1丁目2番地3号

「おかえりなさーい公平さーん!」

 

 みんなと別れて家に着き、玄関を開けるとそこには天使がいた。まあリーベなんだけどね。

 こいつ、見た目だけはマジで半端なく美しいんだよなあ……中身をよく知っている俺ですら時折、目を奪われる時があって悔しい。

 

 今だって正直、夫の帰りを待ち侘びていた新妻感を醸す姿に、ちょっとクラっと来ちゃったりしてるし。

 っていうかストライプシャツにジーンズとか、この家にそんな服あったっけ?

 

「た、ただいま……お前その服、どうしたの」

「お母様と二人で今日、商店街に行ってきたんですよー。そしたらお母様が、いつまでも自分や優子ちゃんのお下がりじゃ良くないって言ってくださってー」

「そりゃそうだ」

「すぐさま服屋さんに行って、かわいいかわいいリーベちゃんにとーっても似合う服、たっくさん買ってもらっちゃいましたー! えへへー、似合いますぅー?」

 

 いたずらっぽく笑う。たしかにかわいい、すごくかわいい。認めたくなさがすごいけど、認めざるを得ないレベルでかわいい。

 ちくしょう、商店街の服屋ったらどうせ総合スーパーの2階のとこだろ。一年くらい前に新装開店してから評判いいもんな、あそこ!

 

 言葉にするのも悔しいから、無言でリーベの頭に手を置き、優しく撫でる。伝われ、このなんとも言えない想い。

 にへへと笑う声がした。きっと伝わったんだろう、さすがは俺の相棒だ。

 

「かわいすぎてもはや、言葉もないなんてそんなー! きゃー! 公平さんたらもー、うふーえへー!」

「伝われこの想いぃーっ!!」

「ンギャー! 髪がくちゃくちゃになっちゃいますー!?」

 

 訂正、全然伝わってなかった。さすがは俺の相棒だ、悪い意味で。

 まったく、優しかった山形くんハンドも思わず乱雑になっちゃったよ。

 

 居間に戻ると母ちゃんと優子ちゃんがいて、何やらゲームしていた。パズルゲームか……母ちゃんやたら強いんだよな。今も優子ちゃん、ボロ負けしてる。

 

「くぬぬぬぅ……あ、おかえり兄ちゃん」

「おかえりー」

「ただいまー」

 

 出迎えられつつ、鞄を置いて一旦、落ち着く。その間にもゲームは続くがこれはひどい、ワンサイドゲームじゃないか。

 いわゆる落ちゲーってやつで、連鎖させれば相手にダメージを与えられるタイプのシステムなんだけど、さっきから母ちゃんが最大連鎖ばかりしている。ああ優子ちゃんが半泣きだ。

 加減しろや!

 

「さっすが、お母様お強いですねー!」

「学生時代、暇に飽かしてこればっかやってたからね。年季が違うのよ、年季が」

「ぐぬぬぬぬぬ! ……だああっ、負けたあっ!」

 

 リーベの声にも余裕で反応しつつ、片手間のようにユー・ウィン。敗北者妹ちゃんの断末魔が響いた。

 母ちゃん、古参プレイヤーかよ怖ぁ……本当に年季が違うじゃん。勝てるわけなかったんだな、優子ちゃん。南無〜。

 あ、優子ちゃんがリーベに縋り付いた。

 

「うううー! リーベ姉ちゃん仇を取って!」

「よーし分かりました! リーベちゃんにお任せあれ! ですよー」

「ほほう、この私に向かってくるのか愚かな居候め」

「ふふーん、年季を言うならこのリーベちゃんだって負けませんよー? 赤子の手をひねるようで心が痛みますが、優子ちゃんの仇ですー! かくごー!」

 

 今度はリーベが母ちゃんと対戦するみたいだ。リーベ、お前の言う年季って人生経験的なアレのことか? たしかに500歳からしてみれば母ちゃんも赤ん坊みたいなもんだろうけど、落ちゲー関係ないよね。

 なんか負けそうな気がする。言ってる間にもなんか、追い詰められていってるし。

 

「あ、え、うそ……あれ? なんで、そんな!?」

「ほらほらどうしたの? 赤子の手がなんですって?」

「え、ちょっ、まっ!? え、ええええええええっ!?」

 

 はい母ちゃんの勝ちー。りーべちゃんストレート負けー。

 ……実際、びっくりするくらい速攻で負けたな。優子ちゃんまでドン引きしてるくらいすぐさま負けてる。漫画だったら2コマだわこれ。

 その場で後ろに倒れるリーベ。慌てて優子ちゃんが抱きとめ、なんだかよくわからない茶番が始まった。

 

「リーベ姉ちゃん、目を開けて!? 大丈夫? 秒で負けた姉ちゃん!」

「ぐふっ……さりげなく追い討ちとは、やりますね、優子ちゃんー」

「なんでその体たらくで仇を取るとか言えたの? 赤子の手をひねるとか言っといてこれとか、心痛くない?」

「い、今、まさに言葉の暴力で痛いですねー……」

 

 むごい。

 雉も鳴かずば撃たれまい。いらんこと言って煽った挙げ句のこの顛末だから、優子ちゃんも嬉々として煽りに行っている。そしてその度にびくんびくんとダメージを受けて跳ねるんだから、リアクションが余計に面白がられて追撃されるんだよなぁ。

 ご愁傷様ですー。

 

「ほら公平、次はあんたの番よ、せっかくだから」

「えっ、俺!?」

「ううう、仇を取ってくださぁい公平さんー」

「兄ちゃん、あとは任せた!」

 

 なし崩しで居合わせた俺にまで被害が! しかもリーベも優子ちゃんまで、敗北仲間を作ろうとしている!

 ええいやってやる、やってやるぞー!

 

 ……と! 意気込んでやってみましたがやはりお母様には敵いませんでした。

 ものの10分でマットに沈んだ俺ちゃんは、肩を落としてすごすご、自室に引っ込んだのでした。

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