攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ご覧ください、こちらが脳筋代表ヴァールちゃんです

 はっきり言うと、現段階でここまで圧倒的な勝ちを収めるとは思っていなかった。

 神奈川さんが今しがた一蹴した派生形オーガ三体とて、B級なだけはあってそれ相応に探査者の脅威なのだ。

 

 無論、負けるとも思っていなかったものの……多少苦戦するなり、あるいはそれを受けてヴァールの支援があるかな? とも思っていたのだ。

 彼女、念のために《鎖法》を発動して備えてくれていたからね。

 

「ふむ。見事だ、神奈川。支援程度は要るかとも思っていたが不要だったな。見くびっていたようだ、すまない」

「い、いえ。実際割とギリギリではあります……パス・オブ・ヘヴンとその派生技を二発、そこまでは良いとしてステラ・オブ・ヘヴンはさすがに消耗がデカい。少し休めば回復しますけど、このペースで残る蛇を相手にするのはちょっと難しいですね」

「パス・オブ・ヘヴンの連射だけなら問題ない、って感じですねその様子だと。むしろ消費の激しさはステラ・オブ・ヘヴンが段違いと」

「ええ。あの技だけはまだ、十全に振るえるわけでもないです」

 

 軽く息を乱しながらも、ヴァールや俺の言葉に応える神奈川さん。実際言うとおり消耗しつつも戦意は絶やすことなく、残るサウザンドスネークへの鋭い目を向けている。

 オーガの派生形を倒したわけだけど、残る一体がまだいるからね。油断なく警戒している姿は、さすがに一年間サークル相手に戦ってきただけはある練度の高さだよ。

 

 さておき、今見た感じだとやはり、精霊知能となったことでそもそもの身体強度が段違いに強くなっているね、神奈川さん。ステラと交じり合う形でデータコンバートしてるわけなので、人間をはるかに超えた能力になっているのは当然のことだ。

 その上で探査者として地道な積み重ねも見て取れ、レベルも順調に上げてるんだろうなってのが分かる。

 

 だからこそ以前は一発撃てばその時点でエネルギー切れを起こしていた必殺剣パス・オブ・ヘヴンを、何度となく放ったとてまるで意にも介していないのだ。

 ただ、さらにその上の段階──ステラ・オブ・ヘヴンはやはり放つエネルギーが桁違いだからか、早々速射連射はできないみたいだ。

 

 それでも実力的にはすでに、かつての人間だった頃の姿とは別人なんだけどもね。

 ともに並び見学していた香苗さんも、S級探査者としての見地から今の神奈川さんの力について見解を述べていく。

 

「デビューしたての新人の戦力ではないですね、間違いなく……それこそB級探査者のなかでも総合力では中堅、威力だけなら上澄みにまで達しているでしょう」

「つまりA級はなかなか、まだ遠いと」

「技の構成は良いと思いますが、消耗の激しさがネックですからね。つまり体力面や技術面、基礎を固めつつ消耗を抑えるテクニックを身につけていくことが重要になるでしょう。下手にいろんなスキルの習得や必殺技の構築に手を伸ばすと、逆に可能性を狭めかねないかと」

 

 探査者としての経験や知識、見識の深さはやはりすごいんだよね、この人。普段伝道師やってるのが質の悪い夢みたいにしっかりしたレビューをする姿に、俺は深くうなずかずにはいられない。

 基礎固めと技術力の向上。つまり派手な技やスキルに頼る方向でなく、地道に己を高めていく修行こそが神奈川さんの今後に肝要──と、いうのはまさに俺の想いと一致しているからね。

 

 そう、ぶっちゃけ神奈川さんの戦闘スタイル自体はすでに確立されている。《星明かりの聖剣》を駆使し、それを用いた各種必殺技による制圧、殲滅。

 だけど現状だと技一つ放つにも消耗の激しさが気になるため、じゃあ地味ながらコツコツ体力や消耗を抑えるテクを身に着けましょうねって方向が一番に思えるのだ。

 大技を放ったとて次の瞬間、エネルギー切れで隙だらけですでは困るからね。そこは話を聞いていたヴァールほか、精霊知能達もなるほどとうなずいていた。

 

「さすがだな、御堂香苗。ワタシの見立てとしても同様だ──講義の途中だ、動くな。《鎖法》鉄鎖拘束!!」

「キシャキシャシャ!? キシャアアアアッ!?」

「というか、もうこの際だ仕留めさせてもらおうか。後詰めと言うやつだ、任せろ──ギルティチェイン!!」

「ッ────キシャガガガガガッ!?」

 

 同意を示しつつも、部屋の奥からいよいよ戦意と殺意を放ちつつ蠢き出したサウザンドスネークへと鎖を向ける。

 ヴァールの十八番たる鉄鎖はその意志のままに自在に放たれ、それこそ1000ほどもあるだろう蛇めいた部分を細かく絡め取り、拘束した。

 

 余談だけどこのサウザンドスネークや上位互換のミリオンスネーク、あるいは下位互換のハンドレッドスネークとかテンヘッズスネークなどは、実は蛇部分は尾であり本体というか頭部は背後にちょこんと飛び出た尻尾のような部分に該当するという。

 これもアンジェさんやランレイさんと探査した際に知ったことだ。

 

 もっともヴァールはそういう特殊な生態とかギミックなんて知ったこっちゃなし。ゴリ押しギルティチェインで今、無理くり蛇部分から岩みたいな胴体から尻尾みたいな頭部に至るまで、極太の鎖を猛烈な勢いで飛ばして貫いたんだけどね。

 怖ぁ……そうなんだよね。この子、実は戦闘においては基本力押し気味というか、ストレートな火力で圧倒する傾向にあるんだよねー。

 

 まさしく鎧袖一触というやつで、光の粒子に変じていくサウザンドスネーク。

 それを見て俺は、どことなく生暖かい目をヴァールちゃんへと向けるのだった。




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