攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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※先に言っておくと「ふーん」はいません

 さておき、見えてきた次の部屋に入る。今回は神奈川さんへのレクチャーもあるため、俺が出てサクッと片付けさせてもらうことにするよ。

 そんでもって部屋が空けたらひとまずそこで修行の時間だ。概念存在はじめ精神体への干渉方法……今後神奈川さんの役割を十全に果たしてもらうために必要な技法を、さわりだけでも説明するのだ。

 

 部屋のなかにはモンスターは三体いて、いずれもスライム系統のファミリースライムだ。

 これはC級モンスターにいるカップルスライムの上位系統に属しているものと見られる種で、あっちが赤と緑の2色だったのに対してこっちは赤、緑に加えて青色のスライムがいる。

 それぞれ人型で、ゆらゆら蠢きながらなんか唸ってるね。

 

「ぬーん」

「むーん」

「ゆーん」

 

 気の抜けるような声だけど、カップルスライム同様にこいつら割と探査者キラー的な、質の悪い特殊能力を持っているそうで。

 赤いのが斬撃以外無効、緑のが打撃以外無効というのはカップルからの据え置きとして──青いのがそれらを上回る耐性を持ってるみたいなんだよね。

 

 前にもカップルスライムについて教えていただいた香苗さんに向け、俺は知っていることをたしかめるように確認してみた。

 自分でも時間があればモンスターについて調べていたりするんだけど、そのへんの知識の豊富さはさすがS級だけあって博士さながらだもんな、この人。

 

「カップルスライムに青いのがくっついた、B級モンスター・ファミリースライム──赤と緑はカップルから変わりませんけど、青いのはたしか、魔導系か魔法系以外の攻撃をすべて無効化するんでしたね」

「さすがです公平くん、いかにもそのとおりですよ。魔導あるいは魔法系のスキルによる攻撃でのみ、倒すことのできる体質。あの青いスライムは赤や緑のソレとはさらに隔絶した超耐性を持っています」

「特定スキル以外、全攻撃を無効化!? なんだそれ、事実上ほぼ無敵じゃないか!」

 

 あっさり詳らかにされた青いのの正体。それは特定スキル──よりにもよってレアスキルに分類される魔導系や魔法系スキルでもってのみ、倒すことができるという極めて異例の特殊耐性だ。

 斬撃でのみ倒せる赤いのや、打撃でのみ倒せる緑のなんかも大概めちゃくちゃなんだけどね。青いのだけは一線を越えちゃってるんだよ、何しろ事前用意のしようがないからね、スキルだけは。

 

 斬撃については剣なりナイフなり備えておけば良いし、打撃に至っては最悪殴る蹴るの単純暴力で賄えるけども。

 魔導スキルや魔法スキルなんて習得しようと思ってできるもんじゃないんだよ、習得条件が完全にランダムというか、オペレータの魂が適合してるかどうかだけだし。

 

 神奈川さんも絶句してるけど、気持ちはよく分かるよ。

 俺も初めて知った時には愕然としたものな、そんなのまでいるのかよモンスターってさ。

 

「カップルスライムからしてレアモンスターと呼ばれるくらい出現頻度は低いのですが、ファミリースライムはそれに輪をかけて滅多に見ない類ですよ」

「魔導系か魔法系以外無効化……え、それって勝ち目がない時はとことん勝ち目がないんじゃ。神奈川さんも言ってますけど、マジで無敵なやつ……?」

「ええ。C級のカップルスライムは事前準備も楽な部類ですし対処は簡単でした。刃物なども最悪、手持ちの金属などを無理やり加工してでも現地調達できなくはないですからね。ですがスキルについてはそのようなこともできません」

「幸い、カップルスライム同様に殺傷力は低いため見つけたとて対処不能ならば容易に回避可能ですが……どうしましょうか公平くん、今回は私の《光魔導》で仕留めましょうか?」

 

 尋ねてくる香苗さん。そう、ひとしきりその耐性のすさまじさを語ったわけだけれどあの青いの、逆に言うなら魔導系か魔法系スキルを持ってるオペレータなら瞬殺できる類ではあるんだよね。

 そもそもカップルスライムも含めて殺傷力は極めて低く、やり過ごすだけならデビューしたての探査者でもできなくはないってレベルだ。そのへん、チート耐性を得たがゆえの弊害なのかね?

 

 見れば相変わらず赤いの緑の青いのは、それぞれぬーんだむーんだゆーんだ言ってるけれども。

 そんな姿を見つつ俺は、香苗さんの問いかけに首を振って否やを返した。問題ない……いやむしろ、これは逆に都合がいいぞ。

 

「せっかくなので俺がやりますよ。神奈川さんへのレクチャーも兼ねます」

「え? というと、精神体への干渉方法について、ですか?」

「はい。こういう特殊能力持ちのモンスターの性質を貫通する方法ってやつも、やってること自体は同じですから」

「……あー。モンスターじゃなく特殊能力という概念そのもの、権能とそれに絡む因果自体に干渉するんですねー」

「そういうこと。俺の場合は素の権能である因果操作があるからめったに使うもんじゃないし、神奈川さんもオーソリティ・キャンセラーで十二分に対応できるだろうけど……サブ的な手段として覚えておいても損はないはずだよ」

 

 戸惑う神奈川さんに微笑む。リーベはじめ精霊知能にとってもあるいは裏技というか小ネタめいたやり方なんだけどね。

 モンスターの特殊能力も分類的には極小規模の権能なため、概念存在や精神体への干渉方法を応用すれば割と無効化ないし突破できたりするよ。

 

 これはモンスターにも因果が一応でも存在するからこそできる芸当だ。

 なのでバグモンスターやウーロゴスやら偽りの神の器やら、はたまたプレーローマ・アンドヴァリみたいな因果を持たない、あるいは少ないような輩には効果が薄いのでそこは注意が必要ではある。

 

 そもそも俺にはより因果操作なり山形くんビームなりがあるから無用の長物に近いやり方なんだけどもね。

 同様に、概念存在完全否定機構たる聖剣を備えた神奈川さんにとっても、このやり方は精神体への干渉方法以外で普段遣いしないかもだけど……

 それでも覚えておけば身につければ転ばぬ先の杖ってやつだろうし、損はないだろうさ。




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