攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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カリスマとか威厳とか風格とか、そういう空気感もある意味超能力だと思う

 突き立てた拳から伝わる感触、それはいつもの物理的な打撃でのものでない独特な感覚を伴っていた。

 モンスターが持つ特殊能力、その概念そのものへの攻撃というか干渉だから当然だ……硬いようで柔らかく、冷たいようで熱く、そして形あるようで形ないナニカに触れる感覚。

 

 同時に甲高い弦を弾くような、地面に金属を落としたような音が俺のなかにたしかに響く。その感覚に俺は手応えを感じ、ひとりつぶやいた。

 

「よし、成功。独特な感覚があるんだよなあ、これ」

「っ──見るからに分かる。その赤いスライムから、何かの力が明確に今、損なわれた!」

「特殊能力に関係している部分に攻撃して麻痺させたんです。これで今ならこの赤いの、何でも攻撃がとおりますよ。おっと、《動くな》よ青いの、緑の」

「むーん」

「ゆーんゆーん」

 

 特殊耐性を剥ぎ取ったのを、モンスターの空気感からでも感じ取ったみたいで神奈川さんが反応した。赤いのが放っていた無敵オーラが霧散したわけだから勘づく人はそりゃ、勘づくか。

 にしても良いセンスしてるなあと感心しつつも説明して、俺はにわかに騒ぎ出した他二体のスライムに魂の圧をかける。

 

 前からちょくちょく使ってるこれも、言ってしまうと魂の力を引き出しての圧力だ。

 初歩の初歩の初歩ってとこかな、難易度的には。だもんで、システム領域側だけじゃなくて概念存在も当然使えるしなんなら人間にもすでに使える人がそれなりにいるよ。

 

「圧か。考えるにアレを放てれば第一関門突破というくらいだろうな、本来の習得チャート的に言えば。魂が持つ力を、殺気や闘気、あるいはその他の威圧感として放つ──基本ながらとかく便利な技法だ。今、山形公平が放ったのはさすがに威力と質が桁違いすぎるが」

「今でもS級探査者からA級にかけては割と、無意識にでも使えてる人はいますねー。あとあらゆる分野でカリスマとか呼ばれてるそういう人達も、大小あれど放っているのはテレビで時折見ますー」

「てかまさしくオメーやソフィアが普段遣いしてるじゃねェか妹よう。スピーチの時、相手に話を聞かせるテクニックとしてよォ」

「政治家としての基本スキルだ。ワタシやソフィアに限らず名のある政治家は概ね似たような圧を放っていることが多い。これもまた、人間の強さや可能性の一つと言えるだろう。あとワタシは妹ではない、どちらかといえば姉だ」

 

 精霊知能三姉妹が良い感じに説明してくれている。神奈川さんだけでなく、隣で目を光らせながらメモを取っている香苗さんや新米精霊知能のミュトスへのレクチャーも兼ねてのことだろうね、助かる。

 まあ、まさにそのとおりでいわゆるカリスマって呼ばれる人達や、あるいは何かしらの道を究めたような達人さんならこの程度のことは割合、意識しないうちにできたりしているものなんだよ。

 

 さっきも述べたけど魂の力はスキルでも超能力でもない、それらの基となるリソースそのものだ。だからこそそこだけは特別な才能や素質、キャパシティがなくても誰にでも扱える余地があるのだ、その力の大小は別としてね。

 本来の世界の在り方でいうなら、そうだな……文明がこのまま発展していって、魂の領域にまで人々の理解が及ぶ頃には誰もがこの程度はできるようになってるだろう。それがどれほど先かは未知数だけどね。道はまだまだ長く続くのだ。

 

「さて。ごめんな、お待たせしちゃって」

「ぬーん……」

「……すぐに輪廻に還すよ。手伝ってもらってありがとう、どうか安らかに」

 

 ともあれ、そんな魂の圧で青いのと緑のを止めつつ赤いのに向き直る。

 三体とも揃ってのんびりした声を上げているが、赤いのだけはちょっと元気なさげだ。自分の耐性がなくなったことを肌で感じているのかな? 早く終わらせてあげよう。

 

 そう考えて、感謝とともにパンチを放つ。斬撃以外無効のはずの肉体は打撃をあっさりと通して、即座に光の粒子へと還っていく。

 これが特殊能力無効化の真髄だ。あらゆる攻撃を無条件で通すようにする、この技法を身につければ理屈の上では概念存在や特殊能力を持つモンスターとも最低限、同じ土俵で戦えるようになるはずだ。

 

 もっとも、相手の魂が自分と同等、もしくは上回る場合はレジストされるから注意が必要だけどね。

 わかりやすく言うと、神奈川さんが俺に対して同じことをしたとてそれは通じない。コマンドプロンプトの魂なんて冗談抜きでこの世界での最高位だからね、精霊知能レベルでは貫けないのだ。

 

「なので相手の魂の格とかもよく見てから干渉しましょうね──ってことで、神奈川さん。次はこの青いの相手に、実際にあなたが同じことをしてみましょうか」

「ゆーん」

「い、いきなりですか! ……いえ、やり方自体はステラも知ってることなんですから当然か。ぜひやらせてください!」

「別に失敗したってなんとも言いませんよ。軽い気持ちでお試しです」

 

 いきなり無茶振りしちゃったかな? と、思いつつも動きを止めた青いのの首根っこをつかんで神奈川さんの前に立たせる。こういうのはとにかく習うのもだけど慣れるのも大事だからね、まずはやってみるのが肝要だ。

 幸いにしてステラと知識情報を共有している彼はすでに、そのやり方を身につけてはいる。だからあとは経験してみて、少しずつ実際の感覚を備えていくだけなんだ。

 

 神奈川さんも理解して、気合い十分な様子で聖剣を構えた。吹き上がる闘志、すでに魂の圧はわずかにでも放ててるね、さすが。

 さて、あとは特殊耐性への干渉だ……できるかな?




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