攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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シャーリヒッタvsシンセシスインセクター

 シャーリヒッタの身長はそう高くない。俺と同い年くらいの肉体を受肉したからだろう、大体150cmを少し上回る程度の背丈をしている。

 そんな小柄な少女が、2mもの大きさを誇るカマキリだかサソリだか例の黒いやつだかわけの分からんような化け物を前にして、不敵な笑みを浮かべて身の丈ほどの死神の鎌を振り回しているんだ。

 

 なんていうか、いろいろアンバランスさは感じる絵面だよね。

 服装も紫のプリントシャツにダメージジーンズとパンクな感じな上、赤い髪をぼさっと野性的に伸ばしているからそのあたりも少しばかり、浮き世離れして見えなくはない。

 

「へっへっへェ……! 姉貴に弟妹達に香苗、そして何より愛しの父様! 見といてくれよなシャーリヒッタ様の戦闘スタイルってやつをよォ!」

「当たり前ですけど器用に鎌を振り回してますねー自在、自在! 頑張ってくださーいシャーリヒッター!」

「精霊知能シャーリヒッタ……思えば今日に至るまで、彼女の戦いを具に見学したことはありませんでしたね。公平くんはありますか?」

「いえ、実は俺もないんですよ。探査においてはこっちが基本ソロ、向こうもデビューしたてですしサークル騒動の時もお互い別々のところで別々の相手を請け負ってましたからね。他のみんなもそれは同様だと思います。あ、最近たまに一緒に探査してるらしいリーベは別かな」

 

 俺達の眼前でその実力を披露できるってんで、明らかにテンションが上がりまくっている御様子のシャーリヒッタちゃんがご満悦げに鎌をブンブン振り回している。鋭い鎌の刃先が、空気を切り裂き音を奏でているね。

 リーベも言うように見事な扱いぶりだ。《鎌術》、俺もそのスキルについてはあまり詳しいところは知らないんだけど、少なくとも保持者だけあって手慣れた動きをしているよ。

 

 実際のところ香苗さんや俺ばかりでなく、他の精霊知能達もあの子の戦闘をそうしっかり観察していたわけでもないだろう。そもそも受肉してまだ間もないし、お互い戦闘時はそれぞれ忙しかったし。

 デビューしたて同士ってことで、リーベが時折一緒に探査してるそうだしそのくらいかな? しかして見れば、当の彼女も肯定とも否定ともつかない微妙な笑顔で首を傾げていた。

 あれぇ?

 

「うーん、たしかに最近ちょくちょく組んで探査はしてるんですけどー……その時は大体、《処刑人》の効果で一網打尽ですからー。ぶっちゃけ探査実績を稼げるだけのお散歩兼、インターフェイサー関係の話し合いとかのお時間でしかないんですよねー」

「すさまじい称号効果だな、改めて聞かされると……となれば後釜にとってもシャーリヒッタの戦闘をじっくり見るのはこれが初か。ワタシの《鎖法》同様に一点物であるスキル《鎌術》、ずいぶん熟れた様子で扱えているようだが」

 

 なるほど。普段の探査だと今は封印している《処刑人》の効果がフルで発動するから、事実上モンスターと遭遇することすらレアなダンジョン探査ならぬダンジョン散歩になるわけだ。

 そりゃリーベだって戦闘時のシャーリヒッタを拝む機会も早々ないだろう。以前はウーロゴス相手にヴァールも含め3人で戦ってたけど、あの時くらいなんだなまともに戦ってるところを見たのは。

 

 ともあれ、鎌を自在に操るシャーリヒッタの動きは、同じタイプのスキルを扱うヴァールからしても手慣れたものに映っているようだった。

 そもそも長物って扱いが難しいというか、慣れてないうちはすぐ体のどこか、周囲の何かにぶつけちゃうからね。子供の頃、なんか良い感じの棒を見つけて振り回す経験は割と多くの人にあると思うけど……その時に痛い目を見た人もそこそこいるはずだ。いるよね? いると信じたい、俺もそうだから。

 

 そういう拙さが見られない今のシャーリヒッタは、間違いなくある程度、《鎌術》の操作に熟知しているものと言える。

 振り回しながらも不敵に笑う彼女。対してシンセシスインセクターは黒光りする翅を振動させ、サソリの尾を威嚇するように向けてきながらもジリジリ距離を詰めてきている。

 

 そろそろ始まるか。緊張の一瞬。

 どちらが先に仕掛けるか────こういう時、シャーリヒッタは極めて超攻撃的だ!

 

「行くぜ行くぜ行くぜ! 必殺喰らえや、エレメンタルスライサー・デストロイパレード!!」

「────!!」

「んでもってその尾は斬るぜ、大斬撃だエクスターミネートォ!!」

 

 刹那に踏み出すシャーリヒッタ。同時に振り回していた鎌から、エネルギーを込めた斬撃を飛ばして放つ。

 いわゆるビームだ。鎌で斬撃を飛ばす技、以前も横目に見たことはあったけど改めて見ると意味不明だなこれ!

 

 それでもバグ判定されてる感じでもないあたり、《鎌術》で生み出した鎌の固有能力ってことで仕様に組み込んでいるのか。

 遠距離攻撃手段の一つもないではやりにくいだろうからね。妥当な判断だ。十重二十重に放たれた丸鋸状のビームが、次々にシンセシスインセクターに襲いかかる。

 

 だがそれだけじゃない。遠距離攻撃を放つと同時に、それ以上の勢いでシャーリヒッタは踏み込んだのだ。大きく鎌を振り翳して、最短距離で狙う──サソリの尾!

 見るからに毒を持ってそうなあの部位を、まずは取り除くべき脅威としたのか。そうして放つ大斬撃が、モンスターの凶悪な武器の一部を絶対的な威力で断絶させていた。




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