攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

1974 / 2053
いくらなんでもオーバーキルでは?ゴールデンアーマーは訝しんだ

 三界機構の力を引き出し、過剰なまでの戦闘力でもってニトロスパイダーとアイアンベアを文字通り瞬殺してみせたミュトス。

 残る一体、ゴールデンアーマー相手にも油断なく断獄状態の姿で構え、戦闘姿勢は崩さない……その威容と先ほどまでの圧倒ぶりに、相手のモンスターのほうが気圧されているほどだった。

 

「────」

「さーて残るはあなただけ! 金ピカ鎧とはいかにも強そうですが、仮にも三界機構さん達から力をお借りしている身の上で情けない戦いぶりなんてできませんので! 全力全身全霊でどんな敵でもぶっ飛ばします!!」

「あれだけの頻度で三界機構の力を使い、しかしまるで消耗していないのだな。やはり戦闘力という点ではミュトスは、あなたやシャーリヒッタにも近しい位置にいるようだ。桁が違う」

「そうだな……しかも取り戻した権能を補助的に使っているあたり、ますます隙がない立ち回りができるようになった。あらゆる状況に対応できるバリエーションの豊富さは、どんな場面でもシンプル・イズ・ベストなシャーリヒッタとは対比的だな」

 

 気合十分な様子で叫ぶミュトスの姿を、遠目から見てヴァールと俺とで評する。概ね、見解は一致しているところだ……シャーリヒッタにも匹敵する実力を、如何なく発揮できていると。

 魔天、断獄、災海の力を状況ごとに切り替え、かつ防御や支援面にはミュトス自身の、かつて水の女神だったモノとしての権能を駆使する。

 控えめに言って手札の数と質が規格外だ。

 

 このへん、《異分子処断権限》や《処刑人》などの超強力スキルでストレートにどんな時でも一定して強いシャーリヒッタと比べ、ムラはあり振れ幅は大きいものの、上振れた時には彼女をも超えるという明確な差異が見られるね。

 総合すると二人ともトントンってところだろうけれど、細かいところでそれぞれ長所と短所はちゃんとある、そんなバランスかな。

 つまり二人揃って肩を並べれば、最強無敵の構図なわけだね。

 

「しかもミュトスのほうにはもう一枚だけ、真に奥義と呼べるスキルがある。さすがにそっちは時間制限付きでしかも使用後、しばらく行動不能になるけれど──」

「よーし! せっかくなのでこの場で改めて切り札の確認までしちゃうでガンス!! なぜならノリの良い魔天さん断獄さん災海さんが、コマンドプロンプト様に良いとこ見せちゃれミュ・ト・ス! と応援してくださっているからでゴンスー!」

「────どうやら今から拝めるみたいだ。三界機構も無駄にノリが良いな。この世界そのものに向けてのアピールなのか、はてさて」

 

 何やら一人で盛り上がり始めたミュトスから、徐々にエネルギーが迸っていく。今まで以上の強さと深さ、これは……どうやら切り札を切るようだ。ある種のテストとデモンストレーションを兼ねているな。

 どうも彼女に宿る三界機構達の意思が、やたらめったらとせっついているみたいだね。彼らからしてみれば宿主に等しいミュトスの力を示し、それを通して自分達がこの世界にとって利益をもたらす存在なのだとアピールしたいのかもしれない。

 

 あるいはもっとシンプルに、宿主ミュトスを応援したいだけかもかな?

 そこは本人達に聞かなきゃ分からないだろう。そのうちシステム領域にも一時帰省するつもりだし、その時にいくらか魂だけの彼らとも語り合う機会を設けたいもんだよ。

 

 さておき、ミュトスの奥義は発動する。

 合いの手と言うか囃子というか、香苗さんがメモを取りつつも興奮した様子で叫んでいた。怖ぁ……

 

「使徒ミュトスの奥義! 三界機構を束ねる、超必殺形態ですね!!」

「いかにもですとも伝道師香苗! それではみなさん御覧じろ、これがミュトスの最終最高最新最強最善スキル────《トリニタス・ヴェリタス・ウニヴェルシタス》ッ!!」

 

 発動し、それと同時に莫大なエネルギーの奔流がミュトスを包む。その存在そのものに組み込まれた、三界機構すべての力が顕現するのだ。

 一体ずつの力を借りる《イミタティオ・トリニタス・コスモス》を超えるスキル。《トリニタス・ヴェリタス・ウニヴェルシタス》──その効果こそは三つの世界の力を一つに束ねる絶対的超存在の降臨を意味する。

 

 魔天の頭部と翼。

 断獄の両腕脚。

 災海の胴体。

 それぞれの形態で纏っていた鎧を一度に同時顕現させた、白銀のフルアーマーをミュトスが装着する。

 

 三つの世界が辿り得た可能性の具現。いつかあり得たかもしれない夢想を、今一時とはいえこの世に顕現せしめる夢想。

 その本質はどこまでも優しいものだ……ミュトスと俺達の世界からの、三界機構とその世界への慰労と救済。

 

 すべて奪われ滅び去ってもなお、たしかに残り続いたものはあったのだと示すためのスキル。

 その結果としてすべてを手にしたミュトスが今、高らかに名乗りをあげる!

 

「顕現ッ!! ミュトス・トリニティ!!」

「────────ッ!?」

「あ、相変わらずのすげえエネルギーだ……! あれがミュトスさんの、全力!」

「余裕もないので一気に決めます! ここに、三界機構を束ねしミュトス・トリニティが救済を叫ぶ……! ウルティマ・ミュトス・マキシマムッ!!」

 

 ダンジョンそのものをも揺るがすような莫大な力の余波。神奈川さんが思わず後退るほどに、その力と存在感は絶大だ。

 まあ、絶大ゆえに時間制限付きなんだけどね。あの形態は消耗が激しすぎて、発動し顕現した傍からそれが解除されていくという超超短期決戦仕様なのだ。

 

 だからミュトスは若干急ぎ気味に奥義を放った。事実上唯一撃てる技にして、この私コマンドプロンプトの防御でさえも貫く可能性を秘めた超火力。

 魔天のスピードで距離を詰め、災海の触手を纏わせた断獄の両拳をもってゴールデンアーマーの胴体を強打する。

 そして。

 

「チャイルドフッド・エェェェェェェンドッ!!」

 

 トドメに胴体から極光の熱光線を放ち。

 それをもって奥義、ウルティマ・ミュトス・マキシマムの完成を見たのだ!




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