攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
────かくして俺達は、様々な連携やコンビネーションを編み出したり考えたりしつつもダンジョンを踏破しきった。およそ半日ほどかけて、みごと最奥の部屋に辿り着いてダンジョンコアをゲットしたのである。
いつも通りの結晶体を、手で弄びながらもはふうと息を吐く。毎度のことながら、この時にやっとこ一息つける感覚ってのはなんか好きだよ。
当然ながらパーティメンバーに負傷者はいない。ハッキリ言って世界最強クラスの面々が揃いも揃ってるんだから当然ではあるけれど、それでもみんな無事でいることが何より嬉しいよ。
何しろ俺の周りがつよつよ探査者ばかりだからなかなか遭遇しないことなんだけど、やっぱり通常のダンジョン探査ったら割と怪我人がいたりするものだからね。
命懸けの仕事ってのは比喩表現では決してないのだ。
「邪悪なる思念の軛から解き放たれたとはいえ、モンスターも縄張りを荒らしてくる者には普通に敵意を持って仕掛けてくるものなあ。そんなのと殺し合いだし、どうしたって負傷は出るもんな」
「たまに見かけますしねー全探組で、装備品が破壊されてる人とか頭に包帯巻いてる人とか。探査帰りで報告がてら応急処置を受けて、それから病院で手当てを受ける人もいるみたいですよー」
「昨今の探査における死傷者数は概して低下傾向にありますが、根絶されるようなことはそれこそモンスターがいなくならない限りはありえないでしょうからね」
探査者として全探組施設に向かうようになったリーベの実感や、データを踏まえて語る香苗さんの言葉は重い。
たしかに最近の世のなか、目に見えてダンジョン探査中にお亡くなりになるケースは減ってきているとは聞くけど……それでもさすがに世界全体で年間、それなりにあるとは聞くよ。
なんならうちの県の全探組でも怪我人の出入りは時折見かけるし。命に別条のない程度には動けるみたいなんだけど、それ以上の重傷ともなれば施設以前に即病院送りだ。
一応、全探組施設内にも応急手当室はあって、最新医療に加えて医療系スキル保持者も常駐していることから、ある程度の負傷まではそこでケアしきれるみたいだけどね。
ヴァールも難しい顔をして、昨今の探査者達の負傷加減についてWSO統括理事として言及する。
「当然ながら、WSOとしても負傷者数の低減化は大ダンジョン時代社会到来直後からの命題だ。50年前に探査者とダンジョン、モンスターの級区分制度による格付けと実力に見合った探査活動の一般化を推し進めた結果、ある程度以上は安全面での成果は見込めているが……それでもまだまだ、課題は多く残されているな」
「モンスターが殺意剥き出しにしてこなくなったってのも大きいからよォ、今後はさらに減っていく気はするぜ」
「そうなることを期待したいが、そのあたりのことはもはやワタシやソフィアの出る幕のない時代での話だろうからな。引き継ぎ業務も順調ゆえ、統括理事引退もこのままいけばあと2年、3年で行われるだろう」
「本当に引退されるんですね、ヴァールさんにソフィアさん。まだ、なんか実感が伴わないなあ」
100年間、この時代の今の社会を構築してきた彼女ならではの実感の篭った振り返り。そうなんだよなあ、今ある級区分制度とかをはじめ探査者にまつわる制度や法律の、ほぼすべてにこの子が深く関与してるんだものな。
まさしく時代を担ってきた人、それがヴァールとソフィアさんなんだ。まあ本人としては、探査者にとってより安全なダンジョン探査に関わる仕組みを構築をする余地があったのかもしれないと悩みどころみたいだけど。本当に真面目な子だよ。
そんな彼女をシャーリヒッタが労う傍ら、引退に向けて意気込む姿に神奈川さんがポツリとつぶやいた。
特に感慨があるわけでない様子だが、それでも雑然とした不安というか、現実味のなさを覚えている感じかな。先の東クォーツ宣言の時に居合わせた聴衆の人達も似たような様子だったし、よっぽど信じられない、というか想像がつかない状況なんだろう。
大半の人にとって、自分達が生まれる前からずーっと世界のトップで活躍し続けた歴史上の人物だしなあ。まさか生きてるうちにそれが取り払われるとも思っていなかった人は当然多いだろうし、実際、ネットとかでもよく見かけるしね。
ある意味、絶対的な安心感がある存在でもあったのだろう。文字通りの"永遠の探査者少女"だもんな。世の中も自分達もあらゆる物事が移り変わるなかでたった一人、たった一つ変わらないもの、統括理事。
そこに、ある種の安寧を感じるのは分からなくもない話だ。
「実感の有無は各個人に依るが、どうあれあと数年で大ダンジョン時代社会は新たなフェーズに移行する。それは悲しむべきでなく、むしろ喜ぶべきだと思うのは……システム領域からの視座ゆえだな。市民の不安も当然理解するゆえ、極度な変動が起きないようこちらもしっかり整えてから引退するさ」
「は、はい。最後の最後まで大変ですね……」
「現世に多大な影響をもたらしたモノとしての、当然の責務だ。気にするな」
淡々と、なんでもないように当然として大きすぎる責務を背負い続けるヴァール。ソフィアさんももちろんそうなんだろう、あまりに強く、そして大きな姿だ。
なんというか、彼女達が彼女達でいてくれて本当に助かったと思う。山形公平としてもコマンドプロンプトとしても、WSO統括理事でありかつてのアドミニストレータと補佐役だったお二人にはいつだって敬意を抱いているよ。
あと数年、彼女達の最後の仕事は続いていく。
それが終わったら俺の近所に引っ越してくるって話だし、それまではこちらからもできる限りのフォローやサポートはしていきたいものだ……
そう考えながらも、俺はダンジョンから帰還するためにワームホールを創り上げるのだった。
さあ、帰ろう!
「大ダンジョン時代クロニクル」
https://syosetu.org/novel/362785/
第二部・第二次モンスターハザード後編─犯した罪に、等しき罰を─
連載中!よろしくお願いしますー
「大ダンジョン時代ヒストリア」100年史編完結!
https://syosetu.org/novel/333780/
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