攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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騒ぎは続くよどこまでも

 さすがリムジンってやつはとにかく中身が豪華で、しかも快適だ。

 ていうかね、進行方向に対して座席が横向いてたりするのって新鮮すぎて、もうそれだけで面白い。本当にホテルのリビングがそのまま、道路を走っているかのようにすら思えた。

 冷蔵庫に空調、テレビまで完備だもの。すごいね。

 

 軽やかに流れる景色を目で楽しみつつ、しかし俺は、ちょっとばかり呆れた目でリーベを見た。

 こいつ、出発してからずっと俺にぴったり引っ付いてやんの。

 

「……それで。いつまでしがみついてんの、お前」

「あわわわわ……おばーちゃんこっち見てますー……ガン見ですー……」

「いや、ガン見なんてしとらんさね、私ゃ」

 

 いつぞやの説教を受け、マリーさんに恐怖を覚えてしまったらしいリーベが、すっかり怯えているのだ。

 あんなキレ方されたら理由や是非はともかく、怖がるのも分からんでもないけど……率直に言って鬱陶しい。せめて密着を止めてほしい。

 

 マリーさんはマリーさんで、なんで初対面のはずの少女からここまでビビられているのか分からず、しきりに首を傾げている。

 普通にリーベの態度は失礼なので、むしろよく怒らないなーって思ってしまうくらいに穏やかだ。

 とはいえ、さすがにこのままが続くのも良くない。仕方なし、俺から事情を説明することにした。

 

「あー、マリーさん。こないだのドラゴン騒ぎの時に、システムさんに喝を入れてましたよね」

「え? ああ、ありゃ喝っていうか、まあ普通に怒ったってなもんだけど」

「あの時、システムさんの代わりに俺にあれこれ吹き込んでたのがこいつです!」

「公平さーん!?」

 

 下手な嘘をつくと悪手な気がするし、ここは思い切って洗い浚い白状した方が良い。そう思ってぶっちゃけたところ、半泣きのリーベに胸ぐらを掴まれる事態に陥ってしまった。怖ぁ。

 ていうかシステム側の存在なのに、そんな泣くほど怖かったのかよと思わなくもない。

 

 そんな俺とリーベを見ていたマリーさん。しばらく目を丸くして、特にリーベを興味深げに見ていたが、そのうちまた、穏やかな笑顔を浮かべていた。

 

「なるほどね……それで怯えてたわけかい。ファファファ、別にもう、怒っちゃいないさね」

「ふぇ?」

「公平ちゃんはもう、公平ちゃん自身の意志で動くようになってる。こないだのソフィアさんとヴァールさんの一件も聞いてるからこそ言うけども……大成したみたいだね」

 

 ひどく優しい眼差しで、彼女は俺を見た。もう、少しの心配もしていないような、深い信頼が篭った眼だ。

 システムさんやリーベに流され、アドミニストレータという立場に縛られかけていた。そんな俺に、俺の思うままの正義を貫けと言ってくださったこの人は、いつだって俺を優しく見守ってくれている。

 

「マリーさん……」

「あんたはもう、誰にも何にも操られやしないだろう。想い定めた堅固な意志で、正しいと思った道を突き進む。そう、その姿はまさに英雄か救世主だ。過去、そういう手合をよく見てきたよ。あんたほど極端なのは初めてだがね、ファファファ!」

「! マリーさん、ついに公平くんを救世主とお認めに!?」

 

 力強いエールを贈ってくれた、そんな彼女に反応したのはなぜか俺ではなく、香苗さんだった。その顔は赤らんでいる……シャンペンのボトルが一瓶、なくなりかけている!

 この人飲みすぎだろ、ベナウィさんかよ。

 

「WSO特別理事にしてS級探査者、ひいては探査者界隈そのものにおける長老とでも言うべきマリーさんが! ついに救世主の存在を肯定してくださった! こ、これは……!」

「酔っ払ってんのかい、御堂ちゃん」

「素面でも似たような感じだと思います」

「酔ってません! いえ、とにかく! これは早速SNSにて発信せねば!!」

 

 と言って、何やら猛烈な勢いでスマホを弄くりだす。オイオイオイ、マリーさんに迷惑だわこの人。

 さすがに止めようかと思い、スマホを取り上げようとするのだが。なんでか、他ならぬマリーさんがそれを止めて、俺に言ってきた。

 

「良いさね良いさね公平ちゃん。好きにさせときな」

「いやでも、このままだとマリーさんがカルト宗教の後見人に」

「構いやしないさね。名義貸しくらいならね」

「!?」

 

 なんてこと言うんだ、この人……立場のある方なのに、あやしい宗教団体に利用されるのを認めるなんて。

 どうかしたんだろうか? もしかして、まさかだけど、香苗さんの伝道行為にやられてしまったんだろうか。もしそうなら怖すぎて俺、最終決戦どころじゃないかもしれない。

 

 唖然とする俺に苦笑いして、マリーさんは続けた。

 

「ことここに至らば、あながち御堂ちゃんの盲信も見当外れってわけじゃなさそうだしね。あんたは今後、間違いなく界隈の大物になるんだからさ、繋がりは太い方が良いと思ったんさね」

「えぇ……?」

「か、かなり俗な理由ですねー……」

「ファファファ! 何しろ探査者やら探査業界でも名うての連中が、みんなしてあんたに注目してるからねえ。公平ちゃん、決戦が終わってものんびりできるなんて、甘いこと考えない方が良いよ?」

 

 ファファファ! ファファファファ! と、高笑いするマリーさん。向かい合って頬の赤い香苗さんが宗教的な表情でスマホを弄り倒しているのもあり、かなりアレな光景だ。

 しかし、そうか。俺、邪悪なる思念をどうにかしても落ち着けないのか。嘘だろ……

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