攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

1992 / 2047
救世主神話伝説・慰撫編

 俺達三人に背中を押される形になって、不安は据え置きだろうけれどそれでも勇気を胸に一歩、踏み出す決意をしたおかし三人娘。

 彼女らはそうしてパンとドリンクでお腹も満たして気力も充実してから、意気揚々と俺達と分かれてさっそく、クラン創設を行うべく再度、全探組施設へと向かっていったのだ。

 

「なんといいますか、とてもフレッシュで素敵なトリオでしたね……うふふ。若いというのはいつの時代も、素晴らしいことなのだと感じさせられた思いです」

「いろいろあっておかし三人娘は、それなりにシステム側も注目しているオペレータです。特にシャーリヒッタが気に入っているようで、インターフェイサーの協力者としてスカウトするつもりでいるほどなんですよ。そちらはクランとは別の動きになるでしょうけどね」

「インターフェイサーの協力者、ですか。ヴァールからも仔細は聞いていますが、委員会の件もあってシステム領域もいよいよ本腰を入れ始めたということなのですね。大ダンジョン時代のひずみ、私の力不足が御方々をしてついに動かざるを得ないところにまで来させてしまった、と」

 

 去っていく三人を見送りながら、喫茶店を出てすぐ。

 商店街近くの歩道を歩きながら軽く話すなかで、不意にソフィアさんの表情が翳った。おかし三人娘を巡っての、システム領域の思惑を聞いての反応だ。

 

 インターフェイサーについてヴァールから聞かされていたようで、それが精霊知能による現世におけるシステムの悪用事案に対してのトラブルシューティングチームだというのを把握してのことだろう。

 つまりシステム領域まで現世に対して、介入的な動きを見せることになった昨今の流れに統括理事として後悔しているのかもしれない。

 

 自分がもっとしっかりしていれば、とか。あるいは、大ダンジョン時代をより良く牽引できていれば、とか。

 もちろんそんなことはない。俺と、そして俺の隣の香苗さんはソフィアさんに揃って応えた。

 

「インターフェイサーの結成および活動については、決してあなたやヴァールが力不足だったがゆえのことではありません。むしろ、あなた達は私の想定さえ超えて身を尽くしてこれまで頑張ってくださいました。心の底から尊敬しています」

「私はシステム側ではありませんが、それでもS級探査者としてWSO統括理事のこれまでの功績を知っています。それは他の探査者も、探査者でないすべての人々も同様です。あなたが力不足と仰るならば、それは大ダンジョン時代に生きたすべての探査者達の力不足です。どうか、背負いすぎないでください」

「山形様、香苗さん……すみません、みっともないことを言ってしまいました。どうにも私自身、引退を機に一段落つきそうだからでしょうか、最近少しナーバス気味かもしれなくて。お恥ずかしい限りです」

 

 立場は違えどそれぞれシステム領域と現世から、ソフィア・チェーホワと精霊知能ヴァールの壮絶な覚悟を伴う100年の奮闘を知る俺達だ。だからこそ力強い言葉で想いを込めて告げれば、彼女も微笑み、多少なりとも気を持ち直してくれたみたいだ。

 彼女の引退は近い。東クォーツ宣言から少し経った今、引き継ぎ業務にも取りかかり始めているということもあって精神的に多少、落ち着くと同時に疲れが出始めている頃合いなのかもしれない。

 

 100年の、いやアドミニストレータだった頃も含めれば150年以上の疲労の蓄積。そう仕向けてしまったのは他ならぬ私達システム領域だ。

 それを、こんなことでは少しの償いにもならないのは百も承知だけれど。俺は立ち止まる彼女の隣に立ち、その手をそっと握りしめておもむろに光った。

 

 シャイニング山形のシャイニングリラクゼーションだ。

 普段はぶっちゃけネタでしかないこんな称号効果だけど、本来はこうして疲れ切った人の、心を癒せる力ではある。

 それをもってわずかでも良い、この人の疲れを取ってあげたかったんだ。

 

「こ、公平くん!?」

「うおっまぶし!? ……救世主の光か! さっきから統括理事や御堂さんとなんかいるなあと思ったら!」

「えっ何々真冬の薄暗い真昼の空に救世主という名の太陽が!?」

「ふーん、おもむろに光り出す姿も良いじゃん」

 

 商店街付近の午後、それなりに人も行き交う場所でいきなり光りだした俺に周囲の目は嫌でも向いてくる。香苗さんも驚きの声をあげるくらいには唐突なシャイニングだもんな、仕方ないよな。

 ああ、注目浴びまくりだよ怖ぁ……でも今ばかりはしっかりやるぞ、他の目なんて気にしないぞ。だってそんなことより目の前の、疲れ切った人を少しでも慰められるほうがずっと大切なんだから。

 

 急な輝きに目を丸くするソフィアさんが、しかしリラックス効果で精神をたしかに癒された様子を見せながらも小さく呻いた。

 

「あ────山形、様。こんな往来でそのようになさっては、その、目立ってしまいますよ?」

「構いません、ソフィアさん。あなたのこれまでを少しでも慰め癒せるなら、そんなことはなんの問題でもありませんよ」

「それ、は」

「……引退した後、俺のそばにいてくださるんでしょう? ヴァールに対してもそうですが、"私達"はあなた方の奮闘に少しずつでも報いていきます。だからというわけではありませんが、あともう少しです。すべてが終わった暁には、きっとただの友人としてお互い、この日のこんなことも笑い合いましょう」

 

 こんなにも頑張った、こんなにも立派な人に何をどう伝えたら良いものか。正直分かりかねるところはあったけど、そこはもうフィーリングのままに伝えることにした。

 彼女は引退後、スイスから俺の家の近くに越してくる予定だってこないだ聞いたしね。そしたらそれから先はお互い、統括理事だのコマンドプロンプトだの置いといても友人関係としてやっていけるはずだ。

 

 それまでのあともう少し。もう少しだけ、もうひと踏ん張りだけ。そう言うことさえ残酷な気がしてならないけれど、それでも。

 申しわけなさも含めた労りが、伝わるようにと手に手を重ねれば……ソフィアさんは目を潤ませながらも、たしかに満面の笑みを浮かべてくれたんだ。




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