攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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【悲報】自称ジェントル山形くん、不審者脱却を果たすもののバス車内でなんかいちゃつく

 今日の授業も終わり、放課後を迎えた。テスト期間につき部活動もないもんで、クラスの体育会系やら文化系やら含め誰もが一斉に下校していく。

 そのなかを俺は、松田くんや梨沙さん達いつもの友人達と帰っていた。別に放課後遊び回るわけでないし、シンプルに一緒に帰るってだけだけどね。

 

 駅に向かうまでのバスに乗る。

 東クォーツ高校と駅前をダイレクトに行き来する定期バスってやつで、学生がわんさか乗るゆえに何回でも満員御礼で走らなきゃいけないから運転手さんも大変だよ。

 

 ぎゅうぎゅう詰めのなか、結構至近距離になっちゃった梨沙さんと目が合う。

 もちろん触れることはないように壁際に彼女を立たせ、気恥ずかしくも壁ドンみたいな体勢になってでも最低限の距離は保つよ。ジェントル山形くんと呼んでくれたまえ。

 

「な、なんか……照れるね。さすがにこの距離は」

「そ、そうだね。あー、その、大丈夫? 押されて痛いとかない?」

「うん、大丈夫。ていうかさ、公平くんが護ってくれてるじゃん。そっちこそ大丈夫? 痛くない、腕とか?」

「大丈夫大丈夫。何かあったら言ってね、梨沙さん」

 

 女の子とこの距離感はさすがに緊張する。梨沙さんも多少なりとも同じ想いのようで、端正な顔を仄かに赤らめながらこっちを見てきている。あわわ、あんま見ないで?

 リーベやらシャーリヒッタやらはたまた香苗さんとか、割とスキンシップ多めな美女美少女さんとふれあうことも多くなっていたからまだ良かったよ、多少の耐性がついていて。

 

 これが探査者になる前の俺だったら大変だったろう。汗が吹き出て目眩がしたろうし、息も荒くなっていたかもしれない。完全に不審者山形くんだ。

 いやそれ以前にこうして梨沙さんと親しくすることもなかったんだろうなーって思うと、なんていうか縁というかね、因果を感じる話だよ。

 

「……公平くん、どうしたの? なんか遠い目、してる?」

「え。あ、ああいや。その、なんだか感慨深い気持ちがあって。探査者になってなかったら、梨沙さんや松田くんとこんなふうにさ、グループで仲良くさせてもらうなんてなかったかもなーってふと考えちゃって」

「そう? 私は、そんなことないと思うけど。探査者じゃなくても公平くんは公平くんだし、クラスメイトならきっと仲良くなれてたよ」

 

 どこか現実逃避気味にイフのシチュエーションを想起していたら梨沙さんに気取られた。やはり目敏いなー、この子。

 特に隠す話でもないので駅までの道すがらの雑談ってことでうんたらかんたら説明すれば、彼女は首を軽く傾げて否定してきた。優しい子だから、どんなことであっても俺とは仲良くしていたはずって言ってくれてるね。

 

 しかし。しかしである。残念ながらたぶんそれはないのだ。

 なぜなら探査者になる前までの俺ちゃん、中学生山形くんの陰キャ力ときたら今と比べてもマジ半端ねーぶっちぎりっぷりだったんだよ。

 これ何回でも言ってるけどね。

 

 特に虐められてるとかでなく、存在感が取り立てて薄いとかってわけでもなかった。

 それなのになぜか、クラスメイトとかとも必要があれば話せるのになぜかいつもぽつねんと一人で過ごしていた……そんな人生だったのだ。

 

 まあ今にして思えば、おそらくこれはそもそも俺の魂が本質的に人間じゃないってことに由来してたのかもしれない。

 何しろ人間の規格に落とし込んだとはいえ元々がコマンドプロンプトだ。まるで別物だし、規格からはみ出た分も無理矢理内包させてたもんで結構無茶なことになってたしね。

 

 つまりは群体のなかに一つだけ、極めてよく擬態してるだけのまるで別物がいたようなもんだ。シンプルに異物でしかないんだよね。

 もちろん周囲の人達はそんな意識はなかったろうけど、"こいつは自分達とは違うな"というのを魂レベルで感じとって必要以上に近づかなかったって可能性はある。

 

 それが今になってそうでもなくなったのは、結局スキルに目覚めたのがトリガーだからだろう。アドミニストレータ用スキルで魂の容量をそれなりに費やした結果、それをもってようやく俺はギリギリ人間らしい魂に見えるようになったのだ。

 翻って言えば仮に今もまだ、俺がステータスに覚醒していなかった場合……やはり高校生活もそれまで同様、別に灰色とまではいかないけどまあまあぼっちなりにぼっちを楽しむ生活だったんだろうなあーとは思うよ。

 

 けれど、梨沙さんは当然そんな事情など知る由もないから言葉を続けて重ねてくれている。

 どんな俺であってもきっと、自分達は友達になれたし一緒にいることができていたと、そう微笑みながら囁いてくれているのだ。

 

「たしかに私は最初、公平くんのことはそんなになんとも思ってなかったよ。仲良くなったきっかけも、モンスターから助けてもらったことだった……だけどね。それでも」

「うん」

「それでも、そうじゃなくてもきっとこんなふうになれてたって信じてる。ううん絶対そうなってる。だって私は、私達は公平くんが探査者だから友達になったんじゃない、公平くんだから仲良くなれたんだもん。公平くんが公平くんでいてくれるなら、私はどんなことがあっても必ずそばにいるよ、絶対」

「……ありがとう、梨沙さん。俺もそう信じてるよ、絶対」

 

 探査者だから、アドミニストレータだから。コマンドプロンプトだから俺はこの人達と仲良くなれたわけではない。間違いなく、それは俺が山形公平だからこそ紡ぐことができた縁なんだ。

 だったら……そうだね。梨沙さんの言うようにきっと、どんな俺であっても俺達は出会えば仲良くなれた。こうして笑い合い日常を楽しくともに過ごせる、友達になることができた。

 そう、信じられるよ。

 

 駅前にバスが到着する。ドアが開き、少しずつ学生さん達が降りていく。俺達ももうすぐだ、ようやく満員から逃げられるぞ。

 だけど俺と梨沙さんの心の距離は、こころなしかさっきまでよりずっと、近いものになれている気がした。




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