攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

2002 / 2046
部屋から出ただけで世界に激震が走るタイプの引きこもり

 精霊知能達にとって、あるいは神奈川さんとステラって組み合わせは新たな可能性の具現そのものと言える。

 現世にて巡り合った最愛と、心ばかりか肉体までもか、魂さえも融合してともに生きていく二人で一つとなる。間違いなくこれまでのシステム領域にはあり得なかったものだ。

 

 ましてや魂を得て心を手にした精霊知能達はここまで、現世の知識や文化を各々取り入れて個性を明確化させてきたところがあるからね。

 そんな彼ら彼女らからしてみれば、まるで物語のような馴れ初めを経てここに至った最新の後輩が初めてこの地を訪れるとなればもう、一目見ずにはいられなかったんだろうさ。

 

「神奈川千尋、そしてステラ……二つで一つの、精霊知能……!」

「ステラだけどステラじゃないの、なんか不思議だね。神奈川千尋の魂もたしかに混じり合っていて、なるほどなるほど」

「最初見た時は正直、大丈夫だろうかと危惧したが……これも新しい形と考えれば、我々にもこのような選択肢はあっても良いかもしれん」

「勿論、よく熟考した上でだけれど。さすがに不可逆な変化を勢いでは選べないわねえ」

 

 噂の二人を見て、精霊知能達が口々に語り合っている。概ね好意的な反応なのはやはり、瀬川と神奈川さんの決戦を見ていたからだろう。

 信じ合い、愛し合う彼と彼女が選んだ永遠にともにあらんとする選択、決断。言うまでもなく強い意志と勇気と希望の込められたその行為は、システム領域をもたしかに揺るがせたのだ。

 

 ある種のパイオニアとなった形になる神奈川さんだけど、こちらはこちらで無数の視線に晒されて緊張しちゃってるよ。こういうところ、アニメチックなイケメンだけど初々しいなー。

 リーベやシャーリヒッタ、ヴァールからも温かな目で見られながらも彼は、今や半透明のステラと並んでアフツストに応えた。

 

「み……みなさんに歓迎していただいていること、とても光栄に思います。ありがとうございます」

「うむ。これからはともに世界のために機能するモノ同士だ。少しずつでもこの領域に慣れ、現世での活動を終えた際にはスムーズに移行できるよう努めてほしい。やることは文字通り無数にあるのだ、なかなか飽きることはないだろう」

「はい、まずはシステム領域というものを直に体験し、接するなかで身をもって勉強したく思います。ステラの知識に依らない、俺としての経験を身に着けたいですから」

『私も事実上、400年ぶりの帰還です。なので千尋と同じでほとんどゼロからの経験になります……必ず千尋と二人、立派な精霊知能になってみせますので、どうかご指導よろしくお願いします』

 

 なんともはや生真面目な挨拶だ。ステラと二人で所信表明めいた思いを語る神奈川さんに、アフツストも微笑み絶やさずその肩を叩いている。

 うわぁ、なんだろうこの、会社の会長さんと新人社員のやり取りみたいな感じ。見た目完全にそうだもの、神奈川さんがちょっと奇抜な見た目してはいるけども。

 

 まあ実際、新入社員的と言えば新入社員的ではあるしね。

 ともあれそんなアフツスト会長先生は、苦笑いとともに彼らに告げる。

 

「システム領域にいる間は受け答えするがね。基本的にはやはり現世の精霊知能、インターフェイサーのモノ達に教わるのが良いだろう。リーベ、シャーリヒッタ、ヴァール。ミュトスにもだがきちんとしたことは教えてやるのだぞ、三姉妹」

「もっちろんですよー!」

「言われるまでもないんだぜ! 新人達へのしっかりした教育体制の確立もインターフェイサーの課題だしなァ!」

「お前まで三姉妹扱いするのか……ところでワタシが長女だろうな? なぜワタシの名前を最後に連ねた? アフツスト?」

「罷り間違ってもコマンドプロンプトのお手を煩わせるなよ、これこそ言うまでもないことだがな。精霊知能内のことで御方の御助力いただくなどあってはならんことだ」

 

 やはり新人さんへの主立った教育役というのは、近くにいる先輩がやるべきということだろう。リーベ、シャーリヒッタ、ヴァールにそのあたりの指示を出す精霊知能統括担当に、今や現世活動担当と言えよう三人は揃ってうなずいた。

 ……いやヴァールちゃんだけちょっとズレてるな? たしかにアフツストまで三姉妹呼びしてくるのかってちょっと俺にも驚きだったけど、まずそこをコメントするのな。

 時折出てくる天然ちゃんなところ、そういうとこがソフィアさん的には可愛いんだろうなって思っちゃうよ。

 

 しかもアフツストときたら、そんなヴァールの問いかけを華麗にスルーしてるやん。言外にお前は三女なんやで宣言してるようなもんでしょこれ、怖ぁ……

 紳士的な笑みを浮かべてガン無視かました面の皮の厚いダンディなおじさんは、そうしてひとしきり話して落ち着いたのか俺へと再度、向き直ってきた。

 

「それではコマンドプロンプト、まずはワールドプロセッサのところへ私がご案内いたします。ご用件はわかっておりますれば、まずは御身の成すべきことを成してくださいませ」

「ありがとう。ええと、アイツまだこないだと同じで引きこもってんの?」

「ええ、まるで変わらず。かのウーロゴスに関して現世に直接介入したこと、我ら精霊知能全体に激震が走ったほどですよ」

「やっぱり。アイツまたなんか腹黒いこと画策してやしないだろうな、ホント……」

 

 ひとまずは用件を済ませなきゃ、ということでアフツストの案内の下でエッホエッホとワールドプロセッサのとこまで行くよ。

 やはりと言うべきか、相変わらずの引きこもり生活してるみたいだけどアイツ……委員会についてまた、誰にも何も言わずめちゃくちゃなプランを練って裏で進行したりしてないだろうな?

 過去様々な例があるから、そこがなんだか心配だよ。




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