攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

2013 / 2046
誰にとっても臭いものなら、さっさと蓋して封印だ!

 いずれ大地より飛び立ち、空を駆け抜け星を飛び出し。宇宙を渡り概念へと至り真実をも受容する。

 そしてその果てにすべてを呑み込んでなお果てへと進まんとする意志と魂、心と身体を備えて波動の海へと漕ぎ出す存在。超越者。

 

 ソレを生み出すためのプロセスこそが巣立ちのざっくりとした概要であり、そこに組み込まれた試練の一つが委員会の正体である可能性がある。

 ……あくまで可能性だ。たとえ十中八九そうだとしてもこれだけは現時点において断言はしない、できない。

 ワールドプロセッサがその理由を、分かりきった言葉を一同に語る。

 

「可能性とは不確実性。本当にそうであるかいまだ定まっていない曖昧なる境界の事象。だからこそ我々は委員会が"そう"であることを肯定も否定もできないのです。なぜかはすでに分かっていますね、神奈川千尋」

「……もしもそれが確定すれば、俺達は委員会をそういう役割のモノだ、という認識で動くしかなくなるからですか」

「はい。システム領域にとっては本来、巣立ちにおける試練プログラムは見届けるべき対象であり干渉するべきでないモノ。今は可能性の段階だからこそ打つ手もありますが、確定してしまえばそれも叶わなくなりましょう……我々にもルールがあります。巣立ちには一切関与しない、ただ行く末を見守り言祝ぐのみという絶対究極の規則が」

 

 抽象的、概念的な話になっちゃって恐縮だけどもね。つらつら語る俺とワールドプロセッサに、神奈川さんは必死に頭を回転させた様子でけれど、はっきりと理解した感じで言ってくる。

 理解の早くて地頭が良い。ステラは本当に素晴らしいパートナーを得たもんだと感心するよ。

 

 彼の言うとおり、要は認識の話だ。

 上位存在にあたるシステム領域の俺達が、委員会に対して"このモノ達は巣立ちにおける試練である"と確定させてしまった場合、委員会の正体がどうであれ俺達は彼らをそういうものとして扱わざるを得なくなる。

 現世人類の"巣立ち"における試練が開始されたものとして、立ち回るしかできなくなるのだ。

 

 そうなるとシステム領域としてはもう見守るしかない。それが世界に定められた絶対原則だからだ……造物主たる世界維持機構および因果律管理機構、それぞれの機能の根底に刻まれた本能と言っていい。

 あるいは私達が発生した波動空間、ただ波が揺蕩うだけの空間におけるたった一つのルールかもしれない。

 

 

『巣立ちを経て、新たなる地平へ向かうナニカを生み出す。その発生へのプロセスを見守り、遥かな波動のさらなる向こうへ送り出す』

 

 

 ──畢竟、これこそが数多の世界さえ包括した波動空間という場所における、絶対にして究極の規則と言えるのだろう。

 意志も何もない揺蕩う波だけの場所でも、唯一これだけは明確にルールとして存在している実感がコマンドプロンプトやワールドプロセッサにはある。

 

 ま、そういうわけで俺達は委員会に対して現状、正体を確定させてはならないんだね。

 つらつらと述べる俺の言を、補足するように災海がタコ足をもにょもにょさせながら続けた。

 

『ちなみにここまでの話ならまだまだ大丈夫だな。本当のトリガーは"やつらがどの段階の試練であるか確定させてしまうこと"だ。正直なところコマプロ、お前はすでにそこまで至りつつあるだろう? 絶対に口に出してはならないぞ』

「もちろんだ、おくびにも出すもんか。ああ、それと概念存在のなかにも気付きつつあるモノはいるけど、そいつらが勝手に確定あるいは断定させたところで俺達には関係ありません。なんか勝手なこと言ってるけど信憑性ないですねアッハッハで済ませとけばスルーできますし、迂闊な反応をしなければ大丈夫です」

『まあ概念存在がどう判断しようが、そこは向こうの勝手だしね』

『その気付きつつあるってヤツもビビってるだろうし、なんも言わねえだろ。概念存在こそそのへん、気をつけてるところだろうしな』

 

 概念存在側の、それこそ先日話したアドラメレクを代表とする賢者達は薄々、委員会の正体を割り出しつつあるみたいだけれど。

 俺達と同様の理由で彼らもまた、そのへんは断定を避けることだろう。アドラメレク自身も明らかに言を濁していたし、何より概念存在こそ"巣立ち"に関わる事情に敏感だしな。

 

 何しろ巣立ちのプロセスにおける試練、そのうちのいくつかを担っているのが彼らなわけだし。格の高い神や悪魔が気にしないわけもない。

 魔天や断獄もそれぞれ翼をパタパタさせたり前脚をポフポフしながら言うように、当然ながら迂闊な行動は避けているだろうさ。

 

「────と、いうわけで。ざっくり事情周りを説明した上で俺達システム領域の方針を言いますが、基本は委員会の正体についての詮索は避ける。その上で現世人類に対して彼らがちょっかいをかけるようならば接触を図り、対処する」

「ええと、対処、と言いますと?」

「まあ封印措置ってところかな。データ領域内に専用隔離空間を形成し、来たるべき時が来るまで彼らを凍結封印する。できるな? ワールドプロセッサ」

「無論。元よりそうした結論に至るだろうと考え、すでに用意は済ませてあります」

「さ、さすがのツーカーですねー……」

 

 以上を踏まえての結論。委員会は今後、出会い次第に話を聞きつつ言質が取れたら封印する。巣立ちの試練として本来あるべき時を迎えるその日まで、眠っていてもらうのだ。

 排除ができない以上、システム領域にもできることはこのくらいしかないからね。

 

 ワールドプロセッサも当然すでにそこは理解していて、すでに準備を整えてくれている。

 さしものリーベも驚きの相互理解ぶりだ……当然だろう、これこそがコマンドプロンプトとワールドプロセッサなのだから。




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