攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

2018 / 2046
失われてもなお後に残るもの。そこには必ず価値がある

『概念存在の暴虐ばかりを贔屓して愛していたわけでは当然ない。それに抗いあらゆる人道倫理常識道徳を踏破していく人間の姿もまた、我は愛していた』

「えぇ……?」

『もっと言えば精霊知能達もだ。我が世界があの子供に侵略されて発生したわけだが、すぐさま事情を把握して現世や概念領域への攻撃、ならびに共食いを始めた。"向こうがすべてを食らうならばこちらが先にすべてを食らい、一つとなって抗うべき"として暴走を始めたのだ。あれもまた胸のすく想いであった……』

「どういうんだ、一体」

 

 タコ足をプルプル震わせて恍惚の声で語るサメ頭のぬいぐるみ。何やら感じ入っているようだけれど、やはりというべきか聞いてる側は全員ドン引きだ。

 聖剣に代表される人間側のあがき。断片的に示唆されていることからどうも大勢の人間をアレやコレやしたみたいなので深掘りは控えたいけど、そういう狂気的な姿もまた、災海にとっては素晴らしいものだったという。

 

 なんなら精霊知能達の判断だという、邪悪なる思念に喰らわれる前にこちらがお互い喰らいあっちゃえば良いじゃん! というわけのわからん理屈も評価しているらしい。

 これにはヴァールも無表情のなかに苦虫を噛み潰したような色を浮かべているよ。無理もない……大ダンジョン時代を牽引した彼女からすれば、他ならぬ自分自身のイフの姿を提示されたようなものだしな。

 

 まあ、災海世界はこの世界とは異なる世界だからね。考え方や法則、システムが多少は違うってのもあるだろう。だからドン引きとか言ったとて、それそのものを否定する気はない。

 ただシンプルにうちとは違うなーって感じるばかりだよ。

 

『概念存在、人間、精霊知能。さらには元より生息していたモンスターも絡んでの上に下に、右に左にの大殺戮。誰も彼もが生きるため喰らい合う姿は、おお、これぞまさに我が望んだ理想世界であった! ──断獄世界とは少し似通うところであろうがな、結局のところ我は生命ある者達すべてが、あらゆる力を使い尽くしてなお生きるために足掻く姿を愛していたのだよ』

『一緒にすんな、いやマジで。俺は巣立ちって前提あっての世界構築だったが災海よ、お前さんにゃそれすらないだろ? ぶっちゃけ巣立ちなんざどうでも良かったはずだ、違うか?』

『うむ、まあな。巣立ちなぞ知るか、そんなこと。超越などくだらん、我の生み出したるモノ達は永遠に我の世界のなかで正気と狂気、明るい暗闇、暗い光明へと身を委ね続ければ良かったのだ。それは汝らからすれば不幸な地獄やもしれんが、我が混沌世界においてはそれこそが至上の天国であったのだから』

「怖ぁ……」

 

 言い切っちゃった、巣立ちなんてどうでも良いって。超越へと至る存在をくだらんの一言で切って捨てた災海は、紛れもなくワールドプロセッサとして狂気に染まっている。

 その人格が現れた理由も結局、邪悪なる思念にあると言えばあるんだけれど……さすがにやつもこれは想定外だったのはアルマの反応からしても明らかだ。

 

 そもそも邪悪なる思念による侵略が行われる以前から、災海世界は概念存在と現世人類が果てしない戦いを繰り広げていたっぽいし。それを踏まえるとそもそも邪悪なる思念抜きにしてもヤベーやつなんじゃないのかな、この元ワールドプロセッサ。

 

 

『ほら、さすがに聞いたら分かったろ? 僕は僕で完璧な存在に焦がれて狂気に堕ちたかもしれないが、こいつはこいつでそれとは関係なしにイカれてたんだよ、魂なきワールドプロセッサだった頃から。巣立ちすら蔑ろにしてるんだ、いわゆる不良品だよ』

 

 

 アルマがどこか、うんざりした様子で告げてくる脳内。こいつに何か発言権があるはずもないんだけど、さすがにこのくらいはかつてワールドプロセッサだったモノとしては思っても良いだろう。

 まさか巣立ち度外視とはなぁ……こう言っちゃなんだけどマジで論外というか、想定もできないよそんなケース。

 

『ま、災海についてはこのくらいにしときなさいな。どちらにせよすでに今は亡く、ゆえに話の種くらいにしかならない類のものなのだから』

「参考とするにはさすがに難しいですね。しかし貴重な話であることには変わりありません……魔天や断獄同様、災海世界の記録もこの世界のログに残しておきましょう。遠く離れた異なる世界の、断片ながらもレガシーを」

『助かるぞ、この世界のワールドプロセッサ。我のようなモノからしても、お前達の在り方は面白い。今後はミュトスや魔天、断獄とともに行く末を見守りながらも微力ながら力添えしていこうではないか』

 

 魔天の言うように、災海についてはこのへんで良いだろう。断片的ではあったが十分以上になんだか濃かったよ、聖剣の正体も多少なりとも知れたし。

 うちのワールドプロセッサも、三界機構の三体に対して敬意とともにその記録を遺すことを告げているからね。今となってはなくなった世界だけれど、それを伝えてくれたからにはそうするのが受け取った側の礼儀というものだろうさ。




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