攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

2021 / 2050
適度な運動は気分転換に良いらしいよ

「そうだ、コマンドプロンプト。せっかくの都市観光を前になんですが、お会いいただきたい精霊知能がいましてな」

「うん?」

 

 リクライニングスペースでのちょっとした歓談のあと、じゃあちょっくらこの近未来都市でも拝見してから帰るべーってテンションになった俺ちゃんはじめ一同。

 そこに待った、とまではいかないものの制止の声をあげる者がいた。精霊知能統括担当アフツストその人だ。

 

 ダンディで紳士的なスーツ姿のおじいさん。そんな彼は穏やかに笑みながらも俺に会わせたい精霊知能がいると言う。

 なんじゃらほい? シリアスな感じではなさそうだけれど。

 

「というかシャーリヒッタ、お前が先にこれを言い出すべきだったと思うのだがな……バグフィックス担当、および現在はシャーリヒッタに代わりワールドプロセッサの補佐役を務めているヌツェン。彼女にもどうかお声がけしてやっていただきたく」

「あー、ヌツェンかァ。忘れちゃいなかったけどよォ、オレはてっきりワールドプロセッサんところで見かけるかとも思ってたんだぜ。あいつオフィスかァ?」

「いや、休みだな。現世地球の日本に合わせて週休二日にしているため、彼女も今日は休日だよ。そこを私が呼び出している。御方の補佐役に代行でも収まったのだから、コマンドプロンプトにご挨拶をせねばならんぞ、とな」

「えぇ……?」

 

 ヌツェン……元来の役割は世界においてバグが発生した時に対応するバグフィックス役の精霊知能だ。大ダンジョン時代発生以降に誕生したもんで、まだまだフレッシュさのある新人さんだね。

 そんな彼女は夏頃の倶楽部案件において、翠川の《座標変動》、青樹さんの《次元転移》、火野老人の《玄武結界》などのバグスキルの剥奪に大いに貢献してもらった。頼れる子だよ。

 

 なんだけども本人はすごく真面目で誠実な子で、それゆえにバグフィックスの結果生まれたスキルが俺達と相対したことをずいぶん気にしたみたいだった。

 それゆえ自発的に申し出て、現世に出向することになったシャーリヒッタの代行としてワールドプロセッサの補佐をも務めるようになっているのが今、というわけだね。

 

 俺としてもそのうち、機会があれば会って労いの言葉一つは掛けさせてもらえたらなーって思ってたけど、アフツストがその場をセッティングしてくれたのは助かる。

 ……休日に呼び出して、ってのが若干こう、ブラック感あるからそこは怖いんだけどね。いやまあ、システム領域に本来休みなんて概念はないから、休日たってどこまでも精霊知能達による"現世ごっこ"の一環でしかないから問題はないんだけども。

 

「実際、彼女はよくやってくれています。さすがにシャーリヒッタの実務能力とは比較するほうが酷という話ですが、ワールドプロセッサによる世界運営を補佐するという点では十分に働けている」

「ヌツェンちゃん真面目ですからねー」

「新世代の精霊知能についてはあまり知らんが、倶楽部の時に見かけた彼女はたしかに有能な気配があったな。さすがにコマンドプロンプトを前にしては狼狽しがちであったが」

「うむ。というわけでそんな彼女にぜひともコマンドプロンプトが直接お声がけくださればと思ったのだ。御方からの言葉があれば、ヌツェンもさらにモチベーションを高めてくれよう」

「そ、そうかなあ……いやまあそういうなら喜んでするけど」

 

 正直、俺が声かけたからってヌツェンに何が起こるとも思わない。あの子はそういうの関係なしに仕事をキッチリできる素晴らしい精霊知能なんだし。

 そもそも俺の言葉にそんな権威とか見出されても困る。ワールドプロセッサの対である自覚こそあるけど、根本的には俺もあいつも精霊知能も等しく単なるプログラムだ。

 

 本当は意志も人格も魂もないのが、邪悪なる思念の襲来という信じがたいトラブルによって発生しただけのものが俺達なんだ。

 だから本来、権威や立場の上下なんてないんだけどねこの領域には。これも現世の影響を受けたゆえの変化だろう、興味深くもあり、ちょっぴり怖ぁ……ってなったりしちゃうよね。

 

 まあ、とはいえせっかくのことだ。ヌツェンもすでに呼び出されているというなら彼女にとっての休日、無為に過ごさせるのも悪い。

 というわけで俺達は動き出した。さっそく彼女に会いに行くのである。

 

「で、ヌツェンはどこに? どっかで待ち合わせなんだろ?」

「ええ。このビルを出てすぐ近く、精霊知能が休日によく使うスポーツ施設に来てもらっています。彼女は休みとなるとよく、同僚や友人を伴いあそこで身体を動かしていますので」

「そ、そう……それも現世ナイズ的なアレ?」

「ですな。受肉していませんので当然汗の一つも肉体的損傷ないし疲労もありませんが、身体を動かす感覚や試合形式で競い合うというのは体験として悪くないと人気上々です。様々な種目があの施設で行われていますよ」

 

 陽キャかよ。休みの日にまで運動とかよくやるわ……という言葉が喉まで出かかったのをぐっと堪える。

 陰キャ山形くんとしての所感は今は置いといて。コマンドプロンプトとしてもそれなりに興味深い話を自分のなかで噛み砕く。

 

 まあ、精霊知能もいろいろいるから。現世に影響を受けてデータ上だけでもヒトの形を得たからには、体を動かしたくなるものなのだろう。

 しかしシステム領域、どこへ向かっているんだろう。悪い方向でないのは分かりきっているけれど、これもこれで未知なる未来を突き進んでるなあって気持ちになっちゃうよね。




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