攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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強さにもいろいろあるんだけど、それはそれとして戦闘力はパッとしない人

 今回のダンジョンはA級規模で、21階層68部屋とまあそこそこの規模だ。1階層あたり概ね3部屋ってことになるかな。

 朝9時過ぎからのアタックにつき、まあ昼過ぎくらいには終わるだろう。平均的な探査者よりかは明らかにペースが早いけど、この面子なら仕方ないところではあった。

 

 俺と香苗さんを抜きにしても、S級最強クラスのエリスさんとA級トップランカー付近のアンジェさんとランレイさんがいるのだ。

 加えて同じくA級の葵さんもいる……んだけど、彼女もそこを気にしているみたいだった。何やら微妙にやりにくそうに、ダンジョンに潜ってすぐの土塊の道を歩きながら心情をうっすら吐露している。

 自分が明らかにこのなかで実力的に落ちることに、不安があるみたいだった。

 

「いやーはっはっはー! こういうの隠しててもろくなことにならなさそうなんで先に言っちゃいますけど、私が足引っ張っちゃいそうで不安ですよはっはっはー!」

「ハッハッハー、いや正直で偉い! エリスさん的にはそれだけでも100万点エリスさんポイント付与しちゃうよー」

「はっはっはー! 嬉しいような複雑なような! でもわーい嬉しー!」

「た、楽しそう……ぴややや眩しい……!」

「えぇ……?」

 

 自らがこのなかで一段落ちる実力である、ということを朗らかに笑って認める葵さんは俺から見ても緊張してるし空元気そのものだ。

 A級として、能力者犯罪捜査官として申し分ない実力を備えていることに疑いはない彼女だけれど、さすがにトップランカーとまではいってないのもまた事実だからね。

 

 それでもそれを、認めたということそのものに師匠たるエリスさんは評価していた。悔しいだろうに自分が足を引っ張る側だと認識した弟子に抱きついて、彼女をあやすようにその頭を撫でたのだ。

 仲睦まじい、それこそ師弟というより姉妹のような関係。そこに何やら眩しさを覚えたらしいランレイさんが一人勝手にダメージを受けているところまで含めて、俺はそれをアンジェさん、香苗さんと三人で横目にしていた。

 

「ふむ。アンジェリーナとしてはどうですか? 葵さんは御自身を大分、低く見積もっているように見受けられますが。同じ能力者犯罪捜査官として、彼女をどう見ます?」

「そもそも私は人を評価できるほどの人間じゃない、ってのは前提として聞いときなさいよ? ……まあ、こないだの首都圏での戦いぶりを見る限り純粋な戦闘面ではもうちょい鍛えたほうが良いってところでしょ。AMWなんてとんでもないモノ持ってる割に、トップランカー候補にもなってないってのはちょっと残念ではあるわよね」

「フーロイータ。スキルブーストジェネレータによるサポートを受けているならば、たしかにトップランカーに躍り出ていてもおかしくはない話ですからね。そこは同意します」

「この際、手厳しい意見になるけど……トンデモ武器に見合った実力には及んでないかしら。ああ、A級探査者としてはもちろん相応だってのは念頭に置いときなさいな、念のためね」

「なるほど……」

 

 本当に手厳しい意見だ。葵さんを忖度抜きで語るアンジェさんは、探査者のプロ中のプロ、A級トップランカー候補としての矜持すら感じさせる眼差しで葵さんを見ている。

 フーロイータに実力が見合っていない……客観的に見た時、それは否めない一面だ。

 

 これまで多くの場面で彼女が戦うところを見てきたけれど、AMWを駆使してなお他の仲間達を差し置いた華やかな活躍を見せるところまでいっていないのが雄弁に語っているだろう。

 無論、A級として申し分ないラインには到達している。それは倶楽部幹部だった翠川を圧倒してみせたところからも伺えるし、その後もバグモンスター火野やウーロゴスなど相手にちょくちょく、光るものを感じさせる姿を見せていたのは絶対に否定できない。

 

 とはいえアンジェさんからすると、今ひとつ物足りなさを覚えているというのは間違いなくあるみたいだった。

 率直な意見に、当の葵さん本人も汗を一筋垂らして空元気の笑い声を飛ばした。

 

「はっはっはー! 忌憚ない意見がグッサリ! ぶっちゃけ自分でも自覚がありますねさすがに……」

「あー……まあ、まあ。トップランカーから見るとそういう評価になるのも仕方ないネー。あそこらへんになるとS級一歩手前ってことで、もう本当に個人の実力がものを言うわけだし。葵のスタイルとはちょっと合わないところはあるよハッハッハー」

「おばあちゃん以上の実力者なエリスさんの前で、その弟子の葵をこうまで言うのは気が引けるわねーやっぱり。でも実力面だけを見ると私からは以上よ……あ、見えてきたわよ、モンスター」

「キシャアアアアアアッ!! キシェエエエエエエッ!!」

 

 ここまで言われたら葵さんもさすがに凹むよなあ。エリスさんもまあまあと慰めつつもアンジェさんの言い分に理解を示しているあたり、こればっかりは贔屓目込みでもってとこなんだろう。

 アンジェさんは同時に、見えてきた一部屋目のなか、俺達に気づいて叫ぶモンスターを指差す。

 

 とはいえだ。今しがたのアンジェさんの評価は適切なものとしつつも、けれど俺は言いたい。葵さんは、単なる戦闘力だけで判断できる探査者ではないと。

 A級トップランカーばかりかS級にさえ持ち得ないものを、早瀬葵という一人の人間は持ち備えているのだ。そしてそれを、エリスさんはもちろん香苗さんも、あるいはランレイさんやアンジェさんだって理解している。

 今から見ることになるだろうさ。このバトルのなかで、きっとね。




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